《質実剛健》Bacchus Guitars(バッカス)のベースについて[記事公開日]2018年3月19日
[最終更新日]2021年06月18日

バッカスのベース

Bacchus[名]:バッカス。ローマ神話における酒の神。ギリシャ神話におけるディオニソスに相当。

「Bacchus Guitars(以下、バッカス)」は、長野県松本市に拠点を構える株式会社ディバイザーが1994年よりプロデュースしているギター/ベースブランドです。「ギターを楽しむ全てのプレイヤーへ」というコンセプトを掲げ、海外生産の低価格モデルから国内ハンドメイドの高級品まで展開するラインナップは幅広く、作りが良いうえに価格が求めやすい範囲に抑えられていることから、多くの愛用者に支持されています。今回は、このバッカスに注目していきましょう。

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バッカスの特徴

クオリティと比べて価格が抑えられていることからコストパフォーマンスの高さが話題になりやすいバッカスですが、製品には実直さ、あるいは渋さといったイメージもあります。ここで、バッカスのベースにどんな特徴があるのかをざっと見ていきましょう。


BACCHUS TWENTYFOUR DX5/E(生産完了)デモンストレーション Danny M Stewart
鈍く光るオイルフィニッシュのボディとアクリルの透明ピックガードが織りなすコントラストが美しいですね。高音域の澄み渡る、くっきりとした音像です。

あらゆるシーンで活躍できる、オーソドックスなスタイル

バッカスはジャズベースプレシジョンベースといったフェンダーのスタイルを継承したベースを中心に生産しています。ヘッド形状やボディライン、カラーリングや装飾、また伝送系など随所にオリジナル要素が込められていますが、総じてオーソドックスなスタイルを貫いています。

オーソドックスなスタイルの楽器はスタンダードとなりえるだけのスタイルの良さがあり、どんなスタイルのベーシストにも、またどんなジャンルの音楽にも自然にフィットする柔軟性も持ち合わせています。しかしながら、他社にも近いモデルの多い「オーソドックスなスタイル」という市場で、ブランドとしてのアイデンティティを確立するのは難しいチャレンジです。バッカスはヘッド形状や意匠など外観だけでなく、サウンドの心臓部であるピックアップに全モデルバッカスオリジナルを採用することで、ブランドとしての主張にも余念がありません。

ポイントを絞りつつも幅の広いラインナップ

バッカスのベースは、定番機「WOODLINE」を基本としているモデルがラインナップの大多数を占めています。しかしそのWOODLINEのスタイル内で、

  • 弦の本数(4弦か5弦か)
  • 電機系(アクティブかパッシブか)
  • 弦長(33インチ、34インチ、35インチ)
  • カラーや木材、塗装のバリエーション

というようにさまざまな仕様が用意されており、楽器に対してこだわりの強いベーシストに対しても訴求できる幅広さ、また懐の深さのある製品群が形成されています。

代表機種「WOODLINE DX4」の特徴

WOODLINE DX4ボディ WOODLINE DX4(公式サイトより引用)

それではここでバッカスの代表機種、ハンドメイドシリーズから「WOODLINE(ウッドライン) DX4」をピックアップして、その特徴をチェックしていきましょう。


BACCHUS WOODLINE DX4/EデモンストレーションDanny M Stewart
ディバイザー本社のショウルームにてWOODLINEをバリバリ演奏するダニー・M・ステュアート氏の図。いい音、いい演奏、そして何より氏の笑顔がいいですね。

1) やや小ぶりなボディと、凛とした顔立ち

WOODLINEのボディは標準的なジャズベースよりも若干小さめなサイズになっており抱えやすくなっていますが、ヘッドとの関係などトータル的なバランスがとられているので、一般的なジャズベースと見比べても違和感のないデザインにまとまっています。ボディが小さめの楽器をよく「ディンキー」と呼びます。これは平均身長がアメリカ人より5%ほど低いという日本人の体格に合わせるためのサイズだと言われることが多いようですが、アメリカ人にとっても弾きやすく感じるのだそうです。

「小さめ」というキーワードにはかわいらしさを感じさせますが、

  • 指板のブロックインレイとパールのバインディング
  • アッシュの木目を隠さないアクリルのピックガード
  • ヘッドとボディの色調を合わせた「マッチングヘッド」

といった意匠は、キリっとした精悍さを感じさせますね。

2) お家芸の「オイルフィニッシュ」

ウレタンやラッカーの代わりに専用のオイルを塗り込んで仕上げる「オイルフィニッシュ」は、バッカスのお家芸とも呼ぶべき塗装法です。これは塗装に手間がかかり、またやり直しが効かないことから、他のメーカーがなかなか手を出せない仕様でもあります。テカりすぎずマットすぎない絶妙な鈍い輝きに個体差なく仕上げるには相当の修練が必要だと言われていますが、飛鳥ファクトリーは製品に対して積極的にオイルフィニッシュを実施しており、この分野で国内随一という評価を得ています。

オイルフィニッシュの特徴はそのマットな外観だけでなく、「厚みが無いに等しい」と言われるほどに薄い塗装膜により、「木材の振動を邪魔しない」という音響上のメリットにこそあります。「オープンな鳴り」と表現される独特の鳴り方は、木材の特性をしっかりと活かした音抜けの良いサウンドを引き出します。

ただしデメリットというより仕様上の宿命として、オイルフィニッシュは弾いているうちにどんどん色が落ちていきます。塗装の色落ちは楽器の「育ち」と表現されることもあり、それこそ楽器の「勲章」と呼んでもいいものですが、この色落ちを遅らせる「オイルワックス」がディバイザーからリリースされています。表面をケアしながらじわじわと色落ちさせていくことで、より深みのある雰囲気を帯びた楽器へと育ちやすいのだと言われています。

3) ターボスイッチと2モードプリアンプ

WOODLINEの電機系には2種類あり、品番に「AC」が付けられるものが電池を必要とするアクティブサーキット(Active Circuit)、つけられないものが電池を必要としないパッシブサーキット仕様となっています。いずれもバッカスオリジナルのJB-ALVピックアップを搭載していますが、

  • パッシブ:伝統的な2ボリューム1トーン仕様で、トーンポットが「ターボスイッチ」になっている
  • アクティブ:ボリューム、バランサー、トレブル、ベースという操作系に、プリアンプのON/OFFスイッチが付けられ、パッシブとしても使える

というように、それぞれにひと工夫加えられています。

パッシブサーキットにつけられる「ターボスイッチ」は、並列でつながれている二つのピックアップを直列につなぐことで、擬似的にハムバッカーピックアップを作ることができるスイッチです。出力が上がり、音が太くなります。
アクティブとパッシブってどう違うの?

4) 信頼のGOTOH製金属パーツ

HANDMADEシリーズのペグ&ブリッジには、世界的に信頼の厚いGOTOH製が採用されています。ブリッジに採用されている「404SJ」はシンプルで頑丈な作りながら、ブリッジプレートで弦を固定する伝統的な方法とボディの裏から弦を通す「裏通し」を弦ごとに選択でき、各弦のテンションバランスを好みに合わせて設定することができます。

バッカスのラインナップ

「酒の神」の名を冠するバッカスは、これから始める初心者からバリバリのプロフェッショナルに至るまで、あらゆるベーシストに向けて製品をリリースしています。大人っぽい、キリっとした顔つきのベースが多いですが、ここからはそのバッカスのラインナップをチェックしていきましょう。