フェンダーのジャズベースやプレシジョンベースが一般的なエレキベースの代表であれば、個性派エレキベースの代表と言えば何を思い浮かべますか?リッケンバッカーベースを思い浮かべる方が多いでしょう。長い歴史を持つエレキベースの中でも、特に個性的な構造、シェイプから、現在のベーシストの間でも非常に高い人気を集めています。どうしてリッケンバッカーベースは長年にわたって多くのベーシストを魅了し続けることができたのでしょう?その秘密に迫ってみたいと思います。
まずはリッケンバッカーとはどのようなメーカーなのか、そしてどうして個性的で魅力的なベースを生み出すことができたのかを考えてみましょう。
リッケンバッカーはその知名度の割に実はそれほど大きな楽器メーカーというわけではありません。しかし創業は1931年と非常に長い歴史を持っています。
そんなリッケンバッカーがエレクトリック楽器を初めて製造したのは1932年、ラップスチールギターやスパニッシュギターにピックアップを搭載した「フライングパン」というギターを発売。それから約20年後に登場したフェンダー・ブロードキャスターほどの成功を収めることはできませんでしたが、この「フライングパン」が世界で最初のエレキギターである、と言えるでしょう。
このように、リッケンバッカーはエレクトリック楽器の先駆者としてその歴史を歩みはじめます。
リッケンバッカーのエレキギターについて – エレキギター博士
1950年代に入ると大手販売代理店とのタッグによって、リッケンバッカーはその名を少しずつ全米に広げて行くようになります。フェンダーやギブソンのエレキギターの成功によって、リッケンバッカーのエレキギターも売上を伸ばし続けました。しかし、元々それほど大きなメーカーというわけではありませんので、フェンダー、ギブソンと比較するとそのシェアはわずかなものでした。
そんな状況の中、1960年代、一気にリッケンバッカーは世界中に知られるようになります。当時、大ブレイクしていたザ・ビートルズのメンバーがこぞってリッケンバッカーのエレキギターやエレキベースを愛用したのです。ビートルズの主要メンバーでありベーシストのポール・マッカートニーも、リッケンバッカーのエレキベース「4001」を当時から現代にいたるまでメインベースとして愛用しています。世界的人気バンドに愛用されたことによって、小さな楽器メーカーが世界を席巻することになったのです。
Rickenbacker 1981 4001
同社がはじめて製造したエレキベースは4000という1ピックアップのシンプルなモデルです。そこにもう1基ピックアップを追加することによって誕生した4001が、リッケンバッカーベースのスタンダードとなっています。
4000シリーズに共通するスペックとしてまず挙げられるのがメイプルボディ、そしてメイプルのスルーネック構造でしょう。現在でもボディ材にオールメイプルが使用されるのは非常に珍しく、これがリッケンバッカーならではの硬質で抜けの良いサウンドの決め手となっています。また、スルーネックを採用することによって、アタッキーなサウンドであるながら同時にロングサスティーンも実現しています。
4001 のトラスロッド
リッケンバッカーならではの特徴の1つとして、ネックに2本のトラスロッドが埋め込まれている、という点が挙げられます。通常は1本であるところを2本に増やすことによって、より強力にネックの反りやねじれを防ぐことができるようになっています。
また、ネック内における金属の占める割合が大きくなることからどこか金属質な鳴りを生み出しています。
ただし、トラスロッドが2本に増えたことによって、調整が非常に難しく、プレイヤーが自身で調整することは困難です。その代わりに、熟練したリペアマンなどの専門家が調整すれば、ネックアイロンなどを使うことなくネックのねじれの修正も可能になりました。
リッケンバッカーベースはそのシェイプがあまりにも個性的ですのでそこばかりが注目されてしまいがちです。しかし、使用材や構造など、そのすべてが他のエレキベースとはまったく違ったものとなっています。
だからこそ、個性派ベースの代表モデルとなることができたのではないでしょうか?
リッケンバッカーベースはどのようなアーティストに使用されているのでしょう?
ポールといえばホフナーのヴァイオリンベースをイメージされる方も多いかもしれませんが、ビートルズの後期からウィングス〜ソロにいたるまでメインベースとして使用されているのがリッケンバッカーの4001です。メロディアスなベースラインをしっかりと抜けの良いサウンドで支えてくれています。
https://www.youtube.com/watch?v=VnJ7hmhjPQA
モーターヘッドのレミー・キルミスターもリッケンバッカーベース愛用者の一人です。強烈に歪ませたサウンドはリッケンバッカーベースの新しい可能性を感じさせてくれます。
何よりも、リッケンバッカーベースをマシンガンのように構えるレミーの姿に憧れた!という方も多いのではないでしょうか?
レミー・キルミスター
イエスのクリス・スクワイアもリッケンバッカーベースの愛用者の代表です。テクニカルに弾きまくるスタイルは当時、多くのベーシストの憧れの的となりました。
リッケンバッカーならではの硬質なサウンドを十分に活かしたサウンドメイクも見ものです。
https://www.youtube.com/watch?v=aJXzBEmclwY
ディープパープル黄金期のボトムラインを支えたロジャー・グローヴァーもリッケンバッカー4001を愛用していました。
へヴィなドラムに大音量のギター&キーボード…その中でも抜け出し、しっかりとした存在感を放つサウンドはまさにリッケンバッカーならではのものでしょう。
それではリッケンバッカーベースのラインナップについてご紹介してみたいと思います。
リッケンバッカーベースの中でももっともスタンダードなモデルがこの4001です。ビートルズのポール・マッカートニーや、ディープパープルのロジャー・グローバーなどの愛機として非常に高い人気を集めています。
硬質で非常に抜けの良いサウンドは、多くの楽器の音の重なる近代的なへヴィロックといったジャンルにおいても強力な武器となってくれます。
フェンダーのジャズベース、プレシジョンベースと並ぶ、エレキベースのスタンダードと呼ぶべき一本です。
4001を…
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現在のリッケンバッカーのスタンダードモデルに位置付けられているのが4003です。基本的な仕様は4001に倣ってデザインされています。しかし、扱いが難しくトラブルも少なくなかったトラスロッドの改良や、ピックアップのハイゲイン化などの改良が施されており、4001とは異なったサウンドではありますが、よりモダンで扱いやすいベースとなっています。
4003SW5
4003を…
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4001、4003をよりモダンでシンプルなスタイルに進化させたモデルが4004です。シンプルな操作性とメリハリの効いたサウンドから、ハードロックやへヴィロック系のアーティストに好まれています。
デザインも、4000シリーズの流れを汲んではいますが、装飾を大幅に省略することによって、より引き締まったストイックな印象を与えてくれます。
4004を…
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リッケンバッカーベースは単なる変形ベースではありません。エレキベースとしての高い完成度から、多くのベーシストに愛される名器なのです。
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