《オーダーメイド体験》Red Houseにベースをオーダーする![記事公開日]2020年12月6日
[最終更新日]2020年12月6日

ベースオーダー

「自分だけの、理想の一本が欲しい!」ベーシストの夢です。しかし、ピックアップなど部品を交換することで理想に近づけることはできるにしても、弦振動など根本的な基本性能を底上げしたり方向づけたりするのは、不可能に近いほど困難です。あれこれ探し回るのもいいですが、いっそのこと作ってもらっちゃった方が近道かもしれません。そんなわけで今回は、オーダー主さんご了承のもと、理想の一本を求めてベースをオーダーする一部始終を密着取材しました!

今回の依頼先、信州塩尻市「Red House」とは

Red House 石橋良市(いしばし・りょういち)株式会社レッドハウスギター代表取締役社長
ギターメーカー勤務から26歳で独立。ヴィンテージギターのリペアやギターオーダー受注に加え、ハイエンドオーディオの販売実績もある、木工と電工のノウハウをバランスよく蓄積する名工。音や演奏性を狙ったオーソドックスな本体にちょっとした遊び心を込めるその作風は、プロアマ問わず多くのファンを虜にしている。奥様は40冊以上の著作を手掛けた菓子研究家、石橋かおりさん。

「レッドハウス(Red House)」は長野県塩尻市に拠点を構えるギター/ベースメーカーで、OEM生産のほかオーダーギターやオリジナルギターを作っています。近年ではレッドハウスのベースを手にしたアマチュアの青年がそのままプロになって、ベース専門誌の紙面を飾ったというドラマがありました。修理やオーダーの受付のため土日もオープンしていますが、予約が確実です。今回はここ、レッドハウスに依頼します。

「音を狙って作る」Red House訪問インタビュー – エレキギター博士

レッドハウスのベースとは?

レッドハウスでは2020年4月時点で

  • クラシックタイプPB:「General P(ジェネラルP)」
  • スモールタイプPB:「Piccola P(ピッコラP)」
  • クラシックタイプJB:「General J(ジェネラルJ)」
  • ディンキータイプJB:「Seeker J(シーカーJ)」
  • オリジナルモデル:「ESPERANZA(エスペランサ)」

というラインナップで製品展開しています。

レッドハウス石橋氏(以下、RH):PBとJBでは、伝統的なフルサイズのもの(クラシック)と、取り回しを良くした小ぶりなもの(シーカー、ピッコラ)が選べます。そして弊社オリジナルの「エスペランサ」という5つのボディ形状で、それぞれに4弦と5弦を用意しています。全く新しいボディ形状のオーダーもお受けしますが、弊社がいただくオーダーではJB、PBタイプが多い印象ですね。

JBではネックの幅と形状がほぼ決まっていますが、PBのヴィンテージ・スタイルでは幅広く太いネックもお選びいただけます。ギターの様に握り込む事が少ないので、ベースでグリップにうるさい人はそれほどはいない印象です。

オリジナルシェイプの「エスペランサ」は日本人に合わせたコンパクトなベースですが、密度の高い材料を使用して適切な重さになるようにウエイトコントロールしています。

Red House ESPERANZA

Red House「Esperanza 5-24 Wal」
アッシュ2Pボディの 表裏にウォルナットをあしらい、バック面はセンターにフレイムメイプルを配し楽器の剛性と共に見えないところのお洒落力も高めています。メイプルネック、パーフェロ指板、24フレット。塗装はオールシンラッカー艶消し。ピックアップはオリジナルのノイズレス仕様。

RH:まずは弾きやすさについてですが、ここは大切なポイントだと思います。ネックが反っていて弦高が高く弾きにくい、ローポジションでは問題が無いがハイフレットに行くと弦高が高く感じて弾きにくい、音詰まりやビリつきが気になるなど、弾きにくい楽器には手が伸びなくなってしまいますよね。

4弦ベースで弦張力はおおよそ80Kg以上、5弦ベースでは95Kg以上あります。これを考慮して製作するのが、弾き易い楽器を作る大切なポイントと言えます。当社ではギター/ベースともに、指板製作やフレットのスリ合わせの工程では、圧力をかけて弦張力がかかった状態を再現して作業しています。こうした工夫を通して、どのポジションでも均一なタッチで、ストレスなく演奏して頂けるように考えています。目指せ!「吸い付くような弾き心地」です(笑)。

次にサウンドですが、どのタイプの楽器でもなるべく全帯域を含むよう心がける事で、ブースト/カットのしやすい音作りを目指しています。ギターではペラペラな薄い音からブーミーな音まで、音色の好みが幅広いですね。一方ベースで求められるものはそこまで広くない、逆にベースらしい立ち位置に留めたいとの意見が多いように感じています。セッティングの問題もあると思いますが、音色の幅に悩みを持っている人はあまりいない印象です。

よく相談されるベースサウンドのお悩みベスト3は、

  • ①音抜けが悪い
  • ②音の立ち上がりが悪く、輪郭が無い
  • ③音が広がってしまい音程感が感じられない

こうしたベーシックな、サウンドの真髄と呼べる部分です。弊社のお客様の場合、どんなジャンルのベーシストであっても、楽器として全体域がしっかり鳴る状態で、音抜けが良く、低音がタイトに締まってバランスが良いなど、基本的なクオリティが高いものをお求めです。

レッドハウスで作られるベースの特徴

《深いこだわり》ペグを重さで使い分ける

Red House ペグ 奥側左2つが重い(一個108g)、奥側右二つが軽い(一個62g)ペグ。右側には文字が刻まれるため、知っている人なら見分けが付く。手前は5弦に使用する小型のペグ。

RH:弊社の4弦は、低音側で重い、高音側で軽いペグを使っています。4つとも軽い方が重量バランスは良好なんですが、音も明るめで軽くなるように感じています。E弦とA弦は引き締まったどっしり感が特に欲しいので、同じ外観の重いペグにしているわけです。メーカーにあるものなら色は自由に選べます。

《ヘッドの工夫》独自構造「HVC」

ヘッド裏の強化材 ヘッド裏に強化材を仕込み、フレイムメイプルで塞ぐ、レッドハウスのオリジナル構造「HVC(ヘッドバイブレーションコントロール)」

ヘッド裏 外観とスペースの問題があるため、貼りつけるより埋めた方が良いと言う考え方。

RH:ヘッドの揺らぎをコントロールして立ち上がりのピッチをより早く安定させるため、ヘッド裏に強化材を埋めることがあります。ベースでは特に効果が高いと感じていて、「HVC(Head Vibration Controller)」と名付けて弊社の標準仕様にしたいと思っています。強化材は軽いので、サウンドキャラクターを変えてしまうほどの影響はありません。

いざ、オーダー打ち合わせ!

ではいよいよ打ち合わせです。どんなベースが欲しいのか、オーダー主さんの想いを、石橋さんがキャッチすることで、欲しいベースのイメージを共有させていきます。

オーダー主さんの要望は、

  • アルダーボディにローズ指板のPBで、カラーは黒、ピックガードは白。
  • ロックバンドでドロップDチューニングで、ピックで弾く。
  • タイトで引き締まった、パンチのある低音が欲しい。

というものです。主張を抑えたシンプルな外観と高い基本性能が欲しい、という内容ですが、ここからいろいろな話をしながら仕様を詰めていきます。

サンプルのベースをチェック

レッドハウスがPBを作ったらどうなるのか、あらためて確認します。自分のベースと弾き比べてみると面白いです。ボディバランスや弾き心地、アンプで鳴らした時の低域の引き締まり感や高域のコリコリ感など、出来上がりのイメージを明瞭にしていきます。

サンプルベース アルダーボディ、ローズ指板のPB。最初のイメージに近い仕様。

PBベース スプリットコイルに1V1T。まさに正統派のPBど真ん中。

ベース指板 うっとりするような指板材。「木材には絶対の自信がある」。その言葉に偽りなし。

ベースヘッド テレベ風のヘッド形状は、遊び心。ブランドロゴはヴィンテージ風の色調で、可愛いくもありクールでもある。

ベースネック ちょっと見えにくいが、ネックまでツバ出し。こういうところが、好きな人がニヤっとするポイント。

ベース指板 チラリと見えるホイールナット。ネックを外さず反り具合の調整ができる。

オーダー主の要望に対する、石橋さんの考え方

RH:オーダーをお受けする時には、まずボディの型、音のイメージからボディの材質を決めて、次に指板材やフレット数を決めて、というように絞り込んでいきます。スラップ用に20フレット仕様をお求めになるお客様もいらっしゃいます。弦長は34インチが標準ですが、少しだけ短い33インチもお選び頂けます。材木やパーツのセレクトで、オーソドックスなPBやJBを目的に合わせて前進させることができます。

今回の場合ご希望はアルダー材ですが、「タイトで引き締まった、パンチのある低音が欲しい」との要望もあります。ですからボディ材は、アッシュも考えられます。アッシュは中低域の立ち上がりが早く感じられ、ブライトな鳴りが魅力的です。しかし今回はピック弾きがメインで、近いサウンドキャラクターはアルダーでも出せますから、悩みどころですね。ロックバンドで使うならエアー感がそれほど必要とも考えにくいので、ホロウ化はしなくていいと思います。

演奏するジャンルや使い勝手を考える

RH:歌ものなのかメタルなのかみたいに、どんなジャンルで使うのかで欲しい音の方向性は変わります。今回はロックバンドで、低音が広がらない感じで、立ち上がりが早くて輪郭のある太い音をお望みです。ならば、ある程度はボディが重い方が理想で、あまり軽量なヴィンテージライクなものとは違うかな、と思います。

極端に重いボディは疲れますからほどほどの、このほどほどが難しいんですが(笑)そういう重さのボディ材に、しっかりとしたブリッジを載せる。あるいは逆に、もう一息重いボディ材を選んで軽いブリッジにする、というアプローチもあります。今回は、タイトに行きすぎると音の面白みが無くなると思います。この辺のバランスを考えている時が楽しい時です。

本体重量5kgを越えると、実用性より筋トレの領域です(笑)。今回は4.5kgくらいの完成重量を目指しましょうか。そうするとボディは2.0kgか2.2kgくらいになるでしょう。

また、スラップを考えずピックで弾く事を考えれば、そこまでブライトなトーンイメージは必要ないですから、サウンド的にはステンレスフレットじゃなくても良いですね。ただ耐久性の面では、ステンレスフレットは魅力的ですから検討の余地は有りますね。Freedom CGRさんのステンレスフレット「WARM」はお勧めです。

楽器製作に対する、レッドハウスの考え方

RH:弊社は、お客様からスペックの指示を受け「言われたとおりになっています」という作り方ではなく、お客様から「どんな楽器が欲しいか」「今の楽器のどこが不満か」といった思いを伺いながら、外せない仕様や欲しい音のイメージを共有してから作ります。オーダーくださる時は、難しいスペックでがんじがらめに考えすぎず、自分が欲しい「音」と「演奏性」を伝えて欲しいと思っています。

いままでどんなベースを使っていて、これに対してどんなベースが欲しいのか、これが分かるとどんなベースを作れば良いのかがこちらに伝わりやすいので、こちらとお客様共通の基準として、ご自分のベースを持ってきてもらうのが一番です。オーダーの前に自分のベースを見てほしいと、遠方から送ってきてくれた人もいらっしゃいます。どんな弦をお使いかも、覚えておいてください。

ベースを見せてもらって、弊社で手入れをして、それをチェックして頂き、もしそれで十分ならオーダーはキャンセルしてそのベースを使う、という可能性もあります。本当はそんな感じでオーダーを検討されるのが一番かと思っています。いきなり知らない工房さんに何十万円のオーダーを依頼するのも、抵抗がありますよね。リペアなどで関係を作ってからの方が、任せやすいのではないでしょうか。弊社は、リペアのお客様からオーダーを頂く事と当社の楽器をお使い頂いているお客様のご紹介が多いです。

「音楽的」であること。

RH:パーツでも電材でも木材でも、使うものによって特徴的な音の組み合わせは多くあります。よりタイトに振っていくならネックもボディも重めな木材にしてごつい金属部品を使って、とできるんですが、タイトなら良い訳では有りません。音を速くするとか耳に届きやすい派手な音にしていくとか、数値的な向上を目指すだけでは、音楽的だとは言えません。

「これは音楽的だろうか?」「お客様の要望を満たしているだろうか?」と考えるのが、レッドハウス流です。目立つ感じではないかもしれませんが、レッドハウスはただの音ではなく音楽的な音色(ねいろ)を持つ楽器を作りたいと考えています。

木材やパーツを選ぶ

打ち合わせの後、いろいろな材料を見せてもらいました。いろいろ見るうちに、新たなヒントが得られるかもしれません。

ネック材は、こんなのが選べる!

Red Houseネック

レッドハウスのこだわりが詰まったネックについては、下記リンクを参照してください。

《愛機復活!!》レッドハウスにネック交換を依頼してみた! – エレキギター博士

ボディの材と形状は、こんなのが選べる!

アルダー材 アルダー材。レッドハウスのオリジナル「エスペランサ(左)」とPB(右)のボディが描かれている。

アッシュ材 アッシュ材といっても、タケノコのあるものと真っすぐなもの、これだけ表情が違う。

ボディ重量 それぞれに重量が記してある。

RH:ボディ材はアルダーが標準仕様で、アッシュはオプションです。たとえば同じアッシュであっても、重いホワイトアッシュと軽量なスワンプアッシュで全然違う音が出ます。ボディ材の重量からも、お客さんの好みにシフトして行けると考えています。

ボディ型 PBのクラシック(左)とディンキー(右)。

ボディ型裏 JBのクラシック(左)とディンキー(右)。

ボディシェイプ:PB 二つのボディシェイプを重ねてみた。全長は同じだが、ディンキーはわずかにスリムでカッタウェイが大きな印象。高音弦側のボディラインは、ピックガードのイメージ上ほぼ一緒。

ボディシェイプ:JB

JBで同じことを。こちらのディンキーも全長は同じだが、かなり思い切って小型化している。

ボディトップ材は、こんなのが選べる!

ボディトップ材 さまざまなトップ材。量が少ないから、運が良ければ出会えるかも。これこそ「一期一会」

RH:こういう特殊材を使ったベースも作っていますが、いつも「見かけだおし」じゃないものにしようとしています。トップ材を貼るには接着剤を広く塗りますから、使う接着剤や塗り方も考えます。

電気系は、こんなのが選べる!

ピックアップ

PBはヴィンテージ・スタイル/ポールピースの太いミドルパワーの2種類。JBピックアップはヴィンテージ・スタイルでロック志向/ノイズを落として大人向けにアレンジしたものの2種。JBタイプは5弦用も。ポールピースを3つだけ露出させているのは遊び心。当然ですが他メーカーのピックアップ、パーツをご指定でのオーダーも可能です。

配線材 標準の配線材は決まっているが、特別な要望にも応じる。

ヴィンテージ配線材 ヴィンテージの配線材も。実際に音が違うのかの検証をしたこともあるとか。

ポット ポットの抵抗値には個体差があるため、計測して実測値を記している。

コンデンサー さまざまなコンデンサー。こちらのオレンジドロップはN.O.S.(ニューオールドストック/新古品)で、現行品とは良い悪いではなくサウンドイメージに違いがある。

ステレオジャック RH:(右)のステレオジャックは接点が多くプラグの安定度が高いために今まではモノラルジャックで良いパッシブ・ベースにも積極的に採用してきましたが、近年注目の「ピュアトーン・ジャック」(左)を使う事も多くなりました。優れものです!

ハンダ ハンダもいろいろ。ヴィンテージもある。「電気系は拘り始めると沼です(笑)(石橋氏談)」

RH:新品と1年後では、楽器自体の鳴りも変わってきます。電気系も馴染んできて、できた時の印象と音が変わることがあります。楽器は「作って終わり」ではありません。こうしたちょっとした電材は、経年変化を受けた軌道修正にも利用できます。

ブリッジとノブは、こんなのが選べる!

ブリッジ 右下の黒い二つは同じメーカーの同じルックスだが、弦間ピッチと材質、重さが違う。

RH:ブリッジについては、トラッドかモダンか、また使う金属によって重いか軽いかが選べます。海外製も選べますが、供給が安定していることから、GOTOHを標準にしています。

ノブ

RH:ノブは普通のもので問題ありませんが、個性を出すなら遊び心で選んでも楽しいですね。ノブでも重量に違いがありますから、鋭い人はノブでも音が違う、なんて言うんですよ。

塗装は、こんなのが選べる!

ボディ塗装 アッシュ独特の木目が引き立つ「グレイン塗装」。

ボディ塗装裏 見る角度で色調が変化する。

アッシュボディ 青を除去して銀と黒にした状態。派手な木目なら銀色がグっと主張する、大人しい木目なら黒っぽくなる。グレーを足すともっとシックになる。超クール。

エスペランサ・ボディ レッドハウスオリジナル「エスペランサ」のボディ。立体感のある複雑なイメージ。

結晶塗装 こんな塗装、見たことない。これぞ「結晶塗装」。

RH:この模様は車やバイクで使われる「結晶塗装」です。温度と湿度の変化でこのような模様になるんですが、温度と湿度の調整で模様の大きさもコントロールできます。

ピックガードにも塗装できますよ。これをさらに、見る角度によって青から緑に変化する特殊なカラーリングを施しています。安くできるものではありませんが、感動には代えられません。弊社ではキルトメイプル等の高額特殊材に頼らない塗装をいつも探しています

メタリックレッド 大小2種類の金属粉を使用した、メタリックレッド。何とも言えない立体的なメタリック感。

ラップ塗装 複雑な文様の「ラップ塗装」には、うっすらと紫が。

RH:オーソドックスな塗装はウレタンでもラッカーでも大丈夫ですし、レリック塗装もやります。このラップ塗装のように夢のある塗装もやっていますよ。「グレイン塗装」はアルダーでもできますが、模様のハッキリしたアッシュのほうがより映えますね。当社の塗装チームにお任せください!!

その他選び放題。キリがないけど、どうしたら…?

いろいろ見せてもらって、オーダー主さんは想定外の新しい選択肢が得られたようです。しかし、細かいところの判断まではなかなかできません。どうしたら良いんでしょうか。

RH:スペックの選択は「沼」です。ハマると抜けられず、なかなか決められなくなってしまいます。その結果あれもいいこれもいい、とスペックを詰め込み過ぎて主題が薄れてしまってはいけません。値段も上がってしまいますし、気にしないところを無理に掘る必要もありません。

こだわりのないところや分からないところは、弊社の判断にお任せください。今までの経験からお客様の欲しい音や使い方に寄り添ったチョイスができるかと思います。お気軽にご相談ください。

求めるサウンドは「材質より質量」で方向づける

RH:弊社では、樹種や金属の種類などの「材質」より、質量すなわち「重さ」の方が、サウンドへの影響が大きいと考えています。ベースは重い物が好き、という人も多いですよね。重さがあると、音はタイトに締まった方向に変化しますし、その重さが無いと出ないサウンドイメージは確かにあると思います。

たとえば、

  • 1:重い鉄板をトップ板に見立て、支柱を立てて弦を張った状態
  • 2:軽いベニヤ板をトップ板に見立てて、支柱を立てて弦を張った状態

この二つを考えてみてください。

1:は鉄板よりも弦が鳴り、サスティーンが長くなります(弦が鳴る状態です)。2:は弦よりもベニヤ板が鳴りサスティーンは短くなります(ボディが鳴る状態です)。弦の振動エネルギーをどう生かすかの違いで、どちらかが優れている訳ではありません

輪郭をガツンとしたかったら、ボディもネックも重くします。重くすると、弦が鳴る傾向にシフトします。また鉄ブロックなどの重いブリッジに交換して弦の鳴りを増してサスティンを伸ばしたり、ジュラルミンやアルミの軽いブリッジに換装してボディがより響くような感じに振る、といった方向付けもできます。

重いボディ材をホロウ化した場合、弦がしっかり鳴るのを基本に、ホロウボディのエアー感が加わります。軽い木材をホロウ化するのとはイメージが変わってきます。

こういうバランスを弊社の判断に任せて頂ければ、イメージに近い音を作るお手伝いができるかと思います。

仕様決定と見積もり

欲しいところを確認し、細かいところはお任せして、オーダーシート(仕様書)を埋めて仕様を確定します。確定した仕様の見積りを確認し、前金の支払いがあってからの作業開始です。レッドハウスの場合、だいたい納期は3~4カ月とのことです。

はじめ「黒いボディに白いピックガード」と考えていたオーダー主さんでしたが、工房を拝見することで「黒と銀のボディに透明ピックガード」という仕様に着地しました。実際に工房に足を運んで相談/検討するだいご味は、こういうところにもあります。