ヤマハの「SILENT Bass(サイレントベース)」は、人に迷惑をかけずに自分は良い音を聞きながら練習できることから「孤独を陶酔にする」というコンセプトで2000年に発表されました。しかし持ち出しの簡便さと音の良さ、そしてハウリング耐性などライブでの心強さが世界的に評価されていくにつれ、むしろ本番用のエレクトリック・アップライトベースとみなされ、今やプロの本番起用を想定した上位機種も登場しています。今回は、このヤマハ「サイレントベース」に注目していきましょう。
ヤマハサイレントベース SLB300 パート1(特長解説編)
旧モデルとの比較では、圧倒的に向上したアコースティック感が確認できます。外への持ち出しとライブ会場でのセッティングがラクチンで、かつ音も良い。これは最強と呼んでも良いのでは。
楽器練習の最大の課題は、音の問題です。そもそもサイレントベースは、これを解消すべく開発されました。ボディを極小化させることで、普通のウッドベースに比べて生音をおよそ90%も抑制しています。
しかしその音色は生のベースと聞き間違うほどのリアルさを帯びており、スピーカーから本格的なアコースティックサウンドを出すことができます。エレキの感覚での積極的な音作りにも対応しており、烈しいライブにも埋もれないカタい音も出すことができます。ハウリングに強く、平気で爆音が出せます。
「SLB300」「SLB300PRO」ではアウトプットジャックからオーディオインターフェイスやミキサーに接続して、「SLB100」ではアウトプットジャックから、ヘッドフォンでアコースティックなベースサウンドをモニタリングすることができます。誰にも迷惑をかけず、しかし自分は楽器の良い音を聞きながら、一晩中練習することができるわけです。
参考:夜にギターを練習するのにオススメのヘッドフォン – エレキギター博士
「300」シリーズは、ケース付属。
フレームを外してソフトケースに収めれば、ウッドベースの4分の1ほどにまでコンパクトになります。それなりにまあまあ重いので自転車は無理にしても、自動車や電車でなら余裕をもって運搬できます。作りが頑丈なので、高温多湿な会場でも屋外でも持ち出して、安心して演奏できます。
ウッドベースにピックアップを後付けする場合に、目的に沿ったピックアップの選定/ベストなセッティングの模索などいろいろ大変です。しかしサイレントベースは楽器本体に最初からピックアップシステムを搭載しており、その苦労がありません。またボディがとても小さいので音量を上げてもハウリングせず、ライブ会場でのセッティングはシールドを挿して音量を決めるだけで即座に完了できます。ライブの音がすぐに決まるので、会場のPAさんがすごく助かります。
サイレントベースはボディこそ極限まで小型化していますが、左右に張りだしたフレームのおかげで実際のコントラバスと変わらない演奏性があります。特に「SLB100」はフレームの形状をウッドベースの外周に近づけているため、弓で弾くベーシストに向いています。
またエンドピンの工夫により、楽器本体が回転しにくい重心設定を達成しています。このほか通常の弦を使用し、ブリッジ/指板/ネックなど各パーツは実際のウッドベースと同じ配置です。弦長も同じですから、本番でウッドベースを使用する人でも、サイレントベースでストレスなく夜通し練習することができます。またブリッジは高さ調節が可能で、好みの弦高に設定できます。
SLB300PROの各部。随所にあふれる「木のぬくもり」感。
楽器本体の振動から音程感をキャッチするようなベーシストでも、サイレントベースは問題なく演奏できます。極小化したとはいえボディは中空構造で、駒下のスリットがちょうどFホールの役目を担います。生音は小さいながらも左手に感じるバイブレーション感と右手に伝わるテンション感が生楽器に肉迫し、自然と楽器の振動を感じながら演奏することができます。ハイポジションでも楽にのびやかな音が得られ、ピチカートでも弓弾きでも和音でも、生楽器のような繊細なニュアンスが得られます。
またネック裏はマットな感触で弾き心地が良く、アンティーク風の色調が木が持つ個性を際立たせ、日常的にウッドベースを弾くようなプレイヤーに馴染みやすい仕上げです。
SLB300の操作盤。多機能なのに、非常にシンプルにまとまっている。
「300」シリーズの電気系は、単体で聴くといい音なのにアンサンブルで埋もれる、バンドで聞こえても自分の音としては心地よくない、という「ウッドベースあるある」に正面から挑んでいます。生楽器の豊かな響きを作り出す「SRTパワードシステム」、3つのマイクシミュレーターと2系統のEQを組み合わせることで細かな音作りができますから、PAに送るクオリティの音作りが本体だけで完結できます。エレベを意識した硬い音にもできるためエフェクターが使いやすく、ジャズやポップスなどでも心配ありません。
SRT(Studio Response Technology)パワードシステムは、サイレントベースのような共鳴胴のない硬質な音に、生楽器の豊かな胴共鳴をリアルタイムで付加するヤマハ独自のテクノロジーです。操作盤の「BLEND」ツマミでピエゾピックアップの硬い音とSRTのふくよかな音をブレンドすることで、生楽器そのものとしか思えない音からタイトでソリッドな音まで、自由に作ることができます。
バイパススイッチも備わっており、音量以外の回路を通過させずに使用することもできます。このとき電源スイッチは有効で、電源ONならアクティブで、OFFならパッシブで使用できます。
「BLEND」ツマミには押しボタン式スイッチが備わっており、これを操作することで3つの「マイクタイプ」を選択し、サウンドの方向付けをします。
さらに高域&低域の2系統のEQが備わっており、積極的なサウンドメイクが可能です。
左から、SLB300、SLB300PRO、SLB100。
では、サイレントベースのラインナップを見ていきましょう。現在リリースされているのは、デビューから20年の時を経て進化した第3世代「SLB300」、本体も電気系もグレードアップした「SLB300PRO」、そして初代の名機「SLB100」です。
2020年に発表された第3世代のサイレントベースは、通常の弦長を確保しながらもぎりぎりまで小型化させたコンパクトな本体に、ウッドベースの生感が伝わる本体と進歩した電気系による上質なサウンドが加えられています。このため、生の弾き心地が身体に染み込んでいる人でも、弦の張力や手に当たる感覚などで違和感を覚えずに演奏できます。本体のフレームは最小限ですが、別売のひざ当て(BKS2)と延長フレーム(BEF2)を利用することで、どんな構え方でもウッドベースと変わらず演奏できます。
ヘッドフォン端子もAUX端子も廃止されていますが、これははじめ練習用だったサイレントベースが、「練習でも本番でも使える楽器」としてのアイデンティティを確立した結果だと見ていいでしょう。特に現代のジャズやポップスのプレイヤーならば、プリアンプなりミキサーなりを経由させてヘッドフォンを使うのに違和感はありません。
また、電源には単三乾電池を使用します。入手のハードルが低いので、旅先でも安心です。
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「SLB300PRO」は、進化を遂げた第3世代「SLB300」に対し、ハイエンドなジャズシーンでの使用を想定したアップグレードを内面にも外面にも施した、サイレントベースのフラッグシップ機です。
楽器本体は木材構成が見直され、指板には黒檀を、ネックには上質なカーリーメイプルを採用することで、ナチュラルで立ち上がりの早い弦振動を達成しています。またブリッジのメイプル材を独自技術A.R.E.で熟成させたうえ、厚みを最適化、アジャスターには本機のために選定したアルミ合金を採用し、音のレスポンスと明瞭度を向上させています。加えて従来よりはるかに柔軟なテールワイヤーを採用し、柔らかく箱鳴り感ある手応えをさらに進化させています。さらに、進化した楽器本体に対してSRTパワードシステムを最適化させており、サイレントベース史上最高と言われるアコースティックベースサウンドを達成しています。
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初代サイレントベース「SLB100」は、いつも弓で弾く、そして本番では音響設備に頼らない、クラシック系のプレイヤーの練習用にうってつけのモデルです。フレーム形状は実物のコントラバスに近く、また全長も実物に近い設計で、弓弾きにおける音エネルギーを生のコントラバスと比べて約220分の1にまで、聞こえ方としては約15分の1程度にまで低減しています。
また、アウトプットジャックを兼ねるヘッドフォンジャックが備わっているため、特別な機材を経由させることなく直接ヘッドフォンを挿して使用できます。ピックアップはブリッジの高音側と低音側に1基ずつ備わっており、その音量バランスをとることで良好なモニタリングが可能です。またAUX端子も付いており、電子メトロノームや音楽を聞きながら練習することができます。
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以上、ヤマハの「SILENT Bass」に注目していきました。自宅練習用の楽器として開発されたサイレントベースですが、今やプロの要求に応えられるガチのエレクトリック・アップライトベースとして認知されています。ほかのアップライトではなかなか難しい、自宅での練習から大きなステージまで、様々なシーンで活用できる楽器です。ぜひ実際にチェックしてみてください。
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