《高機能な個性派ヘッドレス》EGO Guitarsのベース徹底紹介[記事公開日]2023年2月25日
[最終更新日]2023年05月18日

EGO Guitarsのベース

「EGO(イーゴ)」は、イタリアのMarconiLAB社が2015年に発表した、全く新しい発想のヘッドレス・ベースです。インパクトのある外観には、軽量かつ良好なボディバランス、弦長32インチながら充分に確保される弦張力、明瞭かつ素直なサウンド、そして機能追加や部品交換がしやすいカスタマイズ性といった、楽器としての機能が多層的に凝縮されています。今回は、このEGO BASSに注目していきましょう。

EGOをプロデュースする「MarconiLAB」とは

MarconiLAB(マルコニラボ)は、トリノから北東へ約56マイル、Cureggio(クレッジョ)という小さな町を拠点とする楽器メーカーです。Guido Brancalion氏とDavide Torriani氏の二人で2002年に立ち上げ、楽器のリペアやカスタマイズ、また製造を手掛けています。

彼らは約20年間、一人ひとりに向き合ってあらゆる分野の要求に応えてきました。その経験を元に、独創的で革新的な楽器を目指し、遂に完成したのがEGOです。

Ego Bass:ネックサイド ネックサイドのデザインは、製造元マルコニラボのロゴに由来する。「Marconilab rompe le regole del custom(マルコニラボは、カスタムの常識を覆す)」と標榜する通り、常識を覆す楽器を完成させた。

EGO BASSの特徴

EGO BASS 独特のボディ形状、弱点の見つからない完成された設計、そして気合いの入った独特のカラーリング。もはや特徴しかないと云っても良い。

EGO BASSはまずヘッドレス仕様の恩恵として、座奏で両手を離しても安定する極めて良好なボディバランスが得られます。本体の重量も軽量化できますから、肉体への負荷はかなり軽減されます。特に5弦以上の多弦ベースはヘッドやネックが重たくなりがちなので、このメリットは強力です。

Ego Bass:5弦 こちらは5弦仕様。普通のベースではヘッドが重くなり、ストラップにこだわったり腕で支えたりするなどの対処が必要になる。しかしヘッドレス仕様はそんなわずらわしさを感じる必要がない。視界にヘッドが入ってこないことさえ受け入れられれば、あとはメリットしかない。

Ego Bass:指板 全てカスタムメイドなので、こんな指板インレイを入れることも。なお、指板材の標準はリッチライト。安定性に優れ、サウンドに輝きを加える。

Ego Bass:レフティ こちらは左仕様。ずっと見ていると、不思議とこのデザインが普通に思えてくる。日本では今のところこうしたスペシャルカラー仕様のみが流通している。塗装の技法については社外秘となっているが、さまざまなテクニックが使われており、また同じものは無いらしい。

Ego Bass:ソリッドカラー 海外ではソリッドカラーのモデルも流通している。

3分割できる本体

Ego Bass:分割ボディ ボディを3分割させることで、メンテナンス性やカスタマイズ性が飛躍的に向上する。

EGO BASSのボディは「モジュール(Modulus)」というコンセプトのもと、「CHASSIS(中心部)」「ARM(アームレスト)」「HEARTH(操作系)」の3つをネジで着脱できるようになっています。修理や改造をしやすくするほか、異なる木材や異なる色調など着せ替えが楽しめ、また材料となる木材の幅を節約できるメリットがあります。MarconiLAB社では個体ごとのデータを保存しおり、ソリッドカラーならばその色調まで、全く同じモジュールを再現できます。

Ego Bass:ボディ 3つのモジュールが一体となってボディを形成している。模様がつながっているのが嬉しい。

心臓部「HEARTH」

Ego Bass:モジュール 各モジュールやネックを固定するネジは、航空機にも使われる軽量かつ頑丈なアルミニウム製。しかもボディカラーに合うようカラーバリエーションを用意するというこだわりぶり。

「HEARTH(イタリア語で”ハート”)」は「コントロールボックス」や「カートリッジ」とも呼ばれる、EGO BASSの心臓部です。操作系を丸ごと交換できるほか、修理や調整のためにはココだけ送ればよいので、送料の大幅な節約が可能です。

個体ごとのデータが確認できるNFCチップ

NFCチップ ネックジョイント部に開口した丸い窓。この奥に収められているのがNFC(Near Field Communication)チップ。ジョイントネジがボディカラーにマッチしているのもポイント。

EGO BASSにはMarconiLAB社のサーバと通信できるNFCチップが埋め込まれており、スマホを通してオーナー情報や個体ごとの各種仕様をネジ一本に至るまで確認することができます。データの改ざんは不可能と言われており、盗難の防止や旧モデルのデータ保存など、さまざまなメリットが得られます。

絶妙な設計の32″ショートスケール・ネック

バーズアイメイプイル バーズアイメイプイルは、ただでさえカッチカチなメイプルの中でも特にカッチカチな硬さ。しかも内部の補強材は「超々ジュラルミン」の異名をとるAL7075。軽量かつアルミ合金中最高クラスの強度を持ち、航空機や人工衛星などエクストリームな用途に使用される。

EGO BASSのネックは、弦長32インチというショートスケールです。普通の設計なら弦張力が不足してサウンドやチューニングに影響するところですが、ナット部とブリッジに角度をつけることで弦長34インチと変わらないテンション感を獲得しています。

ロック系の強めのタッチでも平気で演奏でき、ダウンチューニングでも問題なく演奏できます。また各弦のテンション感が均一になるようにも設計されており、ローB弦も他の弦と同じように響きます。異弦同音の音質差は、ほとんど気になりません。

Ego Bass:ナット ナット部の設計は「シングルスロープサドル」と名づけられている。各弦を最適な角度でナットに接触させることで、弦張力を均一にしている。感覚的には、ファンフレットと同じくらい均一な感触。

Ego Bass:ヘッド角度 ゼロフレットを兼ねるチタン製ナットからヘッドピースまで、しっかり角度が付いている。しかし木部には干渉していない。誰が弦交換しても必ずこの角度になるのも、ヘッドレス仕様のメリット。

フレット処理 指板のエッジを残した溝に、両端をカットしたフレットを打ち込み、フレットエッジを滑らかに整える「ゴーストフレット」。速いフレーズがスイスイ弾けるスベッスベな感触だが、弦落ちはしにくい作り。

究極のメンテナンス性を目指したコンセプトから、トラスロッドの交換まで可能。ヘッドレスなら通常ヘッド側に開口するところ、小さな面に大きな張力のかかるネック先端に弱点を作りたくないというコンセプトから、ロッドはエンド側に開口。フタを取るとダブルアクション・トラスロッドの調整口が現れる。

Ego Bass:ネックジョイント 大きくカットした6点留め非対称ジョイントは、ハイポジションでの演奏性が非常に良好。航空機仕様のアルミニウムとチタンで作られた固定器を介し、同じく航空機仕様のアルミ製ボルトで締め付ける「メタル・オン・メタル」ジョイント。これによりセットネックを凌駕する安定性とサスティンが得られる。

ブリッジプレート ブリッジプレートはプリント基板になっており、後からでもピエゾピックアップを装備することができる。弦角度を確保するため、エンド側が沈むようにマウントされる。チューニングキーはベアリング内蔵で、固着しにくくチューニングしやすい。

ブリッジプレートはボディエンド側が沈み込み、弦角度が得られるようにマウントされている。これによりブリッジ側からも弦張力が得られている。

明瞭かつ素直な速い音

ピックアップはRace社製「 Alumitone」が標準仕様。パッシブでコイルを持たないのにしっかり機能する。クセのないフラットな特性を持ち、さまざまなシーンに順応できる。

硬質なネックと強固なネックジョイントもあり、EGO BASSはとても立ち上がりの速い音を持っています。素直に使うとハイファイな印象の素直なサウンドですが、操作系の効きが良く積極的な音作りが可能です。音の明瞭度も高くタッチがクリアに再現されるほか、和音が濁らず、歪ませても芯が残るので、バンドアンサンブルのほかソロ演奏にも良好です。

EGO BASのラインナップ

EGO BASSには4弦、5弦、6弦の3タイプがあり、全てカスタムモデルです。1本ずつ注文を受けて生産するため、木材構成や電気系、フレットサイズ、ポジションマークの有無など、さまざまなバリエーションがあります。またスペシャルカラーには一つとて同じものがありません。ここではその作例を見る感じで、だいたいどんなものがあるのかを見ていきましょう。

EGO BASS 4

EGO BASS 4 Earth Color
アルミトーンのPJ配列では、Pはスラントマウントされる。4弦のネックプロフィールはCシェイプのローポジションから平たい印象のハイポジションへと滑らかに変化し、ポジションごとの演奏性が良い。この紫がかったボディカラーは「Earth Color」と呼ばれる。

EGO BASS 4 Hellish
褐色系のボディカラーは「Hellish」と呼ばれる。4弦仕様はオーソドックスなJBタイプとほぼ同じ感覚で演奏できる。指板はリッチライトが標準だが、メイプルに変更するとカラっとしたイメージのサウンドになる。

EGO BASS 4 Infinity
こちらのカラーは「Infinity」。バーズアイメイプル指板には、「∞(Infinity)」をあしらったインレイがあしらわれている。搭載されているピックアップは、セイモア・ダンカンに加わる前のBASS LINE製。

EGO BASS 5

EGO BASS 5 Autumn Leaves
5弦ベースは、プリアンプに頼らずともエッジの効いた粒立ちの良い音が得られる。オールジャンル対応だが、特にコンテンポラリー・ジャズやフュージョン、またはプログレッシブ・メタルやDjentといったシーンで活躍できそう。この個体のボディカラーは「Autumn Leaves」。5弦のネックは解放弦から薄くフラットな印象。

EGO BASS 5 Earth Color
ピックアップはレース社のアルミトーンが標準だが、他のピックアップを装備することもある。この個体は見るからにインパクト絶大なDELANO社製「The Xtender」を2基マウント。弦振動と相互作用する内部構造により、電池不要で甘くファットな新しいサウンドが得られる。

EGO BASS 5 Earth Color(Lefty Model)
左用モデルももちろんある。ジョイント部のロゴが左用にデザインし直されているあたり、ルックスの良さにこだわるイタリア人のスピリットを感じさせる。

EGO BASS 6

EGO BASS 6 Earth Color
ヘッドレスの6弦ベースは、6基のペグをマウントしたヘッドストックの重量から解放されるメリットが非常に大きい。搭載されているDELANO社製「MC6 HE/S」ピックアップはパラレル接続のハムバッカー構造で、人間の耳でとらえられない高周波までアウトプットできる、クリアなサウンドを持っている。


以上、イタリア発の高機能ヘッドレス、EGO BASSに注目していきました。ボディバランス、プレイアビリティ、メンテナンス性など、およそ考えられるあらゆる分野に新しいアイディアを盛り込んだ、際立った機能と個性を持つベースです。ぜひチェックしてみてください。

ハードケース付属。コーナー部が金属で補強されている。いかつくてクールな印象。

大阪「逸品館」が取り扱い

EGO BASSは大阪の「逸品館」が輸入代理店を務めているのも興味深いところです。MarconiLABは日本人で最初にオファーしたという理由で逸品館をパートナーに選んだそうで、イタリア人の情に厚い一面を感じさせます。

動画配信の舞台として知られるオーディオルームには、総額で家を建てられるほどのAV機器がずらり。

逸品館は平成元年創業、年商24億円を誇る日本有数のオーディオショップです。「オーディオを通してミュージシャンとリスナーをつなぎたい」という理念の延長で近年MI事業部を立ち上げ、楽器の取り扱いにも積極的です。

「私たちがやってます!」逸品館MI事業部の福元隆文氏(左)と高木友樹氏(右)。

逸品館MI事業部 Official Youtube