「ATELIER Z(アトリエ・ズィー)」は1989年の立ち上げ以来、高品位な国産のベースを作っているブランドです。70年代式ジャズベースを出発点としたアクティブベース「M#」シリーズで名高く、特にファンク系やロック系のベーシストに支持されます。現在ではベースのラインナップが増え、ギターやプリアンプなども手掛け、多角的に製品を展開しています。今回は、このアトリエZに注目していきましょう。
TUBE『あー夏休み@横浜スタジアム(2012年)LIVE』
TUBEのベーシスト、角野秀行氏は20年以上にわたってアトリエZのベースを使用しています。それにもかかわらず今だに同社を「アトリエ・ゼット」と呼ぶことがあり、頑固な一面を伺わせます。氏のベースは60年代風のパッシブで、指板にハカランダが使用されています。
アトリエZを語る上で、まず達人ベーシスト青木智仁(あおき・ともひと)氏を知る必要があります。青木氏は朗らかな人柄と正確無比な演奏が持ち味で、角松敏生(かどまつ・としき)氏や渡辺貞夫(わたなべ・さだお)氏ら有力なミュージシャンと活動を展開し、自身のアルバムもリリースするなど、2006年に急逝するまで音楽の第一線で活躍しました。
アトリエZのスタート地点は、青木氏のために作られた5弦ベース「M#265」です。開発においては、毎日弾いても疲れないこと、外国人ベーシストにパワーで負けないこと、この二つを目指しました。その結果達成した、低弦高で弾きやすく、ポジションを問わず均一な音圧が得られ、プリアンプでアタックを持ちあげることができるという高い性能、これがアトリエZの基本コンセプトになっています。
ではさっそく、アトリエZの象徴的なモデル「M#265」をピックアップし、その特徴を追ってみましょう。
ATELIER Z M#245, M#265 デモ演奏/吉池千秋
プロが弾く代表機種。2フィンガーもスラップも、コレぞアトリエZ、という音ですね。
M#265はアッシュ2Pボディ、バインディングを施したメイプル指板、ブロックポジションという仕様からも類推できるように、70年代式のフェンダー・ジャズベースを出発点に開発されています。ボディ材にはしっかり重量感のあるアッシュ材が使われているため、本体重量はだいたい4キロ中盤ほどあります。硬くて重いボディ材は、高域と低域がしっかり前に出る、力強いサウンドを生む傾向にあります。また、ネックは握りやすいスリムさがありながら、温度や湿度に左右されにくい頑強さを持っています。
M#265では、厚さ3mmというアクリル製ピックガードが使われます。3mmという厚みは、弦の下に指が入り込むのを妨げ、良好なスラップができます。またアクリルはとても硬いので、ボディ鳴りを吸収してしまうことがありません。ピックガードのエッジ(外周)部分には研磨が施され、ツヤッツヤです。
アトリエZでは、リアピックアップの位置を60年代式と、ややブリッジ寄りの70年代式から選択できます。M#265は「埋もれることなく、かつ主張しすぎない」サウンドを目指すという観点から、60年代式の位置にリアピックアップが配置されています。
「Zチューニングシステム(Z-TUNING SYSTEM)」は、弦高と弦のテンション感を整えることで、最も弾きやすい状態にする調整法です。どんな調整をするのかについては一般に明らかにされてはいませんが、ピアノの調律から着想したという「マス・マジック・チューニング」をアトリエZの出荷基準に応用したものと言われています。これを施したベースは、手に吸いつくかのような馴染みやすい演奏性が得られるほか、ステンレス製ペグの頑強さと相まって、極めて正確なピッチが得られます。
「スペクトラム・ブースト」は、バルトリーニ社製プリアンプ「XTCT」の音圧をアップさせるカスタマイズです。コンデンサや抵抗を追加するといった比較的シンプルな配線ですが、音量と音圧が共に持ちあがり、アタック感が増し、太いサウンドが得られます。
ブリッジは自社製で、ほとんどの部品がブラスの削り出しです。削り出しのブラスは振動伝達に優れ、弦振動を効果的に受け止めることができます。また、5弦用のブリッジは19mm、18mm、17mmの中から弦間ピッチを選ぶことができます。
フロントピックアップを覆うピックアップ・フェンスは、ピックアップ付近の「美味しいところ」でピッキング出来るよう、ブリッジ側をカットしています。スラップ時の演奏性は変化させず、2フィンガー時のサウンドをしっかり確保する、こだわりの設計です。
アトリエZはピックアップ・フェンスになみなみならぬこだわりがあり、各色各サイズのピックアップ・フェンスをリリースしていいます。このほか全面にスワロフスキーを敷き詰めた「クリスタル仕様」もラインナップされています。
BABYMETAL – Distortion (LIVE AT DOWNLOAD FESTIVAL 2018)
ベースの神として参加しているBOH氏。氏のシグネイチャーモデルはド派手なカラーリング、6弦PHという個性的なピックアップ配列、ハイポジションのスキャロップ加工が特徴です。ピックアップフェンスも備わっており、なんでも出来る反面、演奏者を選ぶ尖ったベースだと言われています。
ではここから、アトリエZのラインナップを見ていきましょう。アトリエZのベースは、一本ずつ作っていく「オーダーメイド・ベース」、ロット生産により比較的求めやすい価格を達成した「レギュラー・ベース」、限定生産の「リミテッド・ベース」、そして「ミュージシャンズ・モデル」という4つの部門で展開しています。またいろいろな仕様の組み合わせから選択できるカスタムオーダーも受けています。
M#245
M#245/70’
「マグニチュード(Magnitude)」を意味する「M#」シリーズは、アッシュ2Pボディ、メイプルネック&指板、という木材構成に、スペクトラム・ブーストを施したバルトリーニ社製プリアンプ「XTC」を備えた高性能モデルです。4弦20フレットの「M#245」、5弦21フレットの「M#265」、6弦24フレットの「M#285」に加え、ヴィンテージ・スタイルに設計を寄せた「M#245/70’」があります。
M#245を…
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「ベータ(Beta)」は、M#のサウンドで24フレットまでしっかり使えるベースを目指したモデルです。木材構成やパーツ類はM#に準拠し、カッタウェイを大きくとったやや小ぶりなボディに24フレットのネックを挿しています。アタックの立つシャープなサウンドキャラクターを持ちつつ、中域も十分に得られるのでバンドサウンドのボトムをしっかり支えることができます。
Betaを…
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「レギュラー・ベース」は、アトリエZの基本コンセプトをそのままに価格を抑えたラインナップです。チタンロッドで補強された頑丈なネック、自社製プリアンプ、そして各モデルの尖った仕様が特徴です。
インパクトのあるピックアップ配列がそのままモデル名になった「JHJ」は、4弦22フレットの「JHJ-190」、5弦22フレットの「JHJ-215」の両面で展開しています。ミニスイッチの操作で1ハムと2シングルを切り替えることにより、他にはないサウンドバリエーションが得られます。操作系は各ピックアップの音量、トレブル/ベースの操作となっていますが、パッシブでも使用できます。
JHJを…
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「ベータ・デラックス」は、4弦24フレットの「Beta4 DELUXE」、5弦24フレットの「Beta5 DELUXE」の両面で展開しています。これらは上位機種「Beta」の基本設計を踏まえた上に、新開発のピックアップと自社製プリアンプで性能を向上させています。プリアンプ「EQ-Z」は3バンドEQを備え、サウンドメイキングの自由度が向上しています。
新開発ピックアップ「JZ-4 」および「 JZ-5」は、斜めに配置されたポールピースがピックアップ上の磁界を広げ、弦振動を漏らさず拾い上げるワイドレンジを実現しています。またスプリットコイル構造を採用することでノイズのない静粛性も持っています。
なお、5弦用のJZ-5は特殊な寸法が採用されており、他メーカー製品との互換性がありません。ピックアップ交換に際しては、キャビティ修正が求められる場合があります。
Beta DELUXEを…
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baby Z-4PJ OWH
弦長30インチのショートスケールを採用した「ベイビーZ」は、裏通しのブリッジ、迫力あるサウンドが得られる「EQ/J」プリアンプを備えることで、演奏スタイルやジャンルを問わない守備範囲を持つ高性能なベースとして仕上がっています。
baby Zを…
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限定生産機は、希少な木材を使用したり思い切った設計を採用したり、アトリエZのメーカーとしての挑戦を楽しむことができます。
小ぶりなディンキー形状のアルダーボディ機「DAL」は、チャンバー構造のアルダーボディをアッシュのトップ材で塞いでいます。重量感のあるアッシュボディを基本とするアトリエZのラインナップでは珍しい、軽量なボディに由来する鳴りの良さが楽しめるベースです。
「jノート」は、アトリエZラインナップの中で異彩を放つ、現代的で自由なデザインを採用したベースです。変則的なペグ配置のヘッド、低音側に寄せたドットインレイなど、ルックス的にはアトリエZっぽさがどこにもありませんが、芯のある太いボトムがある「アトリエZの音」が得られます。ピックアップ及びプリアンプはバルトリーニ製で、ミニスイッチの操作で3種類の中域を選んで操作できます。
アトリエZはその開発コンセプトから、数多くのプロミュージシャンに愛用されています。同社がコラボレートしているミュージシャンは現在60名ほどとのことですが、プロの現場からの声を吸い上げ、製品に反映させているわけです。ここではこうしたミュージシャンたちのこだわりの詰まったベースをいくつか見ていきましょう。
RIZE LIVE DVD “PARTY HOUSE” KenKen Ver.
過去最年少の弱冠21歳で月間ベースマガジンの表紙を飾ったという、若き天才KENKEN氏。シグネイチャーモデルは、ミラーピックガードとご本人のロゴ入りペグを備える、独特の雰囲気を帯びています。
各地でクリニックを開催するなど後進の育成にも余念がない石川俊介氏のベースは、人間として演奏する時と悪魔に身体を乗っ取られている時とで、仕様が異なっています。
世界的な活躍を見せる達人、日野賢二氏のシグネイチャーモデルは、4弦20フレット「JINO-4」、5弦21フレット「JINO-5」、6弦24フレット「JINO-6」の3タイプがリリースされています。3機種はJHJ配列のピックアップ、ハムバッカーのボリュームだけ移動させた操作系、細めのピックアップ・フェンスという仕様が共通しています。JINO-6はネックジョイントに大きな特徴があり、ボルトオンジョイントながらヒール部をバッサリと切り落とした、スルーネックと見まごう形状になっています。
以上、アトリエZのベースをチェックしていきました。演奏性とサウンドの両面に優れた高性能なベースは、プロの頼れる道具であるだけでなく、上達を促進する楽器でもあります。ショップで見かけたら、ぜひその感触を確かめてみてください。
なお、悪魔たるゼノン石川和尚、ベース神たるBOH氏、ひとつのベースブランド内で神と悪魔が共存しているのが興味深いところです。アトリエZのベースは、神も悪魔も弾くのです。
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