Squier(スクワイア)のベースについて[記事公開日]2020年6月3日
[最終更新日]2020年06月7日

スクワイアのベース

「スクワイア(Squier)」は、フェンダー傘下で手に入れやすい価格のベースをリリースするブランドです。フェンダーの歴史をそのまま受け継いだモデルのほか、低価格帯だからこそ出せる個性的なモデルもあり、一つのブランドとしてアイデンティティを屹立しています。これから始める人が手にするベースとして最適であるほか、メイン機と違ったテイストの楽器を試してみたい人にもたいへん良好です。今回は、このスクワイアのベースに注目していきましょう。


New Squier Contemporary Basses – Andertons Music Co.
クールなルックスにキレッキレのサウンド。モダンなアクティブベースも、スクワイアなら気軽に手に入れられます。

スクワイアの略歴

スクワイアのベースヘッド

19世紀:親子で作るバイオリン

スクワイアの歴史はフェンダーよりも古く、19世紀後半にさかのぼります。この頃英国から渡米したジェローム・ボナパルト(JB)・スクワイア氏は、息子のビクター・キャロル(VC)・スクワイア氏と共に1881年からバイオリンの製造/修理を始めました。この頃作られた「JBスクワイア」のバイオリンは「アメリカのストラディバリウス」と高く評価されており、10万ドルの値がついたものもあります。

20世紀前半:弦メーカーとして躍進

1900年ころ、欧州からの輸入に頼るしかない状況から弦の生産を始め、CVスクワイア社は大成功を収めます。1950年代からはフェンダーからの注文も受け始めましたが、1965年にはフェンダーの買収を受け、その数ヵ月後に当のフェンダーはCBS社に買収されます。弦はフェンダー名義でリリースされることになり、ブランドとしてのスクワイアはしばらく沈黙します。

20世紀後半以降:フェンダー傘下ブランドとして復活

1982年、スクワイアはフェンダーの低価格モデルを作るブランドとして復活しました。初めは日本で、そこから韓国、中国、インドネシアなどアジア諸国へと生産地を移動させながら、手に入れやすい価格帯のベースをリリースして若きベーシストのスタートを支えています。

スクワイアの特徴

コピーではない「本物」であること

スクワイヤのペグ

フェンダーの「ジャズベース」や「プレシジョンベース」という名称、そしてブランドやモデルを象徴するヘッド形状は、フェンダー社の知的財産権として法的に保護されています。その意味で、他社が作るJBタイプやPBタイプはいわば「似たもの」であって、コピーモデルです。しかしスクワイアはフェンダー傘下なので、フェンダーの設計そのままのベースを、コピーではなく「本物」としてリリースできます。ピックアップをフェンダーが設計することもあり、サウンドも本格的です。

クラシカル/モダンの両面展開

フェンダーのラインナップは、1970年代までのクラシックな設計のヴィンテージ・スタイル、80年代以降発明された設計のモダン・スタイルの両翼を軸としています。スクワイアもそれにならってクラシカルなモデルとモダンなモデルを分け、幅広いバリエーションを展開しています。

分かりやすいところでは、ヴィンテージ・スタイルのネックはツヤッツヤの「グロス仕上げ」で、適度なグリップ感があります。またブリッジは薄く軽量で、ボディの鳴りを引き立たせます。

いっぽうモダン・スタイルのネックはサラッサラの「サテン仕上げ」で、ポジション移動に有利です。またブリッジは重厚で、音の伸びと密度感に優れます。

これらの違いは優劣ではなく、設計理念の違いです。判断がつかなければ何となく好みで決めてしまっても、あるいはカラーリングや価格など他の要因で決めてもだいたい大丈夫です。

トラスロッドはヘッド部に開口

フェンダーのトラスロッドは、年代によりヘッド側から調節するものとネックエンド側から調整するものに分かれます。ネックエンド側からトラスロッドを調節するためには一旦ネックを外さなければならず、始めたばかりのベーシストにはなかなかハードルの高い作業です。スクワイアではこれを全て、ヘッド側から調節できるようにしています。新品購入からしばらく、あるいは季節の変わり目を迎えると、ネックはわずかに動きます。トラスロッドを自分で回してみることで、ベースについてさらに深く知ることができます。

スクワイアのベースラインナップ

ヴィンテージ・スタイル

歴史的名機の姿を現代に伝えるヴィンテージ・スタイルは、「クラシック・ヴァイブ」シリーズを中心に展開されています。適度なグリップ感が得られるグロス仕上げのネック、やや丸みを帯びた9.5インチRの指板、細めで背の高いフレットという組み合わせは、古い年式のベースが帯びる雰囲気(ヴァイブ)を残しつつ、現在の視点で弾きやすいアレンジです。本体もピックアップもフェンダーによる設計で、ピックアップにはアルニコ磁石が使用され、見た目も音も本格的です。

Classic Vibe ’60s Precision Bass

Classic Vibe 60s Precision Bass

60年代式のプレシジョンベースは、1対のピックアップにツマミが2つというシンプルな電気系、ナット幅1.685インチというちょっと幅広のネック、という構成です。まさに現代音楽を支えてきた歴史をもつプレシジョンベースそのもので、カラーバリエーションはサンバーストとホワイトの2タイプあります。

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Classic Vibe ’60s Jazz Bass / FL

Classic Vibe 60s Jazz Bass

Classic Vibe 60s Jazz Bass Fretless Classic Vibe ’60s Jazz Bass Fretless

60年代式のジャズベースは、2本のピックアップに3つのツマミ、ナット幅1.5インチのスリムなネック、という構成です。カラーバリエーションに3タイプあるほか、同仕様のフレットレス版(FL)もあります。こちらは指板にフレットのラインが刻まれているため、ピッチを合わせやすくなっています。ピックガードを外したら、気分はジャコ・パストリアス氏です。

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Classic Vibe ’70s Jazz Bass(左用あり) / V

Classic Vibe 70s Jazz Bass

Classic Vibe 70s Jazz Bass V Classic Vibe ’70s Jazz Bass V

70年代式のジャズベースは、メイプル指板に黒いブロックインレイ、そして黒いネックバインディングのある、キリっとした顔つきが特徴です。指板以外の木材構成やピックアップなどの基本仕様が60年代式と同じになっているので、細かいことは心配せずルックスで選ぶことができます。

5弦仕様では、ボディ材にメイプルが採用されています。硬質なボディが5弦の超低音をしっかり受け止め、地を這うような強力な低音をしっかり出すことができます。70年代に5弦ベースは生産されていませんが、それはそれ。むしろフェンダーからは決してリリースできないであろう、70年代感のある5弦のジャズべが、スクワイアならリリースできるわけです。

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Classic Vibe Bass VI

Classic Vibe Bass VI

「ベースVI」は、ギターの音域をそのまま1オクターブ下げた楽器です。3弦から6弦までは普通の4弦ベースと同じですが、これに1&2弦が加わることでギターのような感覚でベースを弾くことができます。低価格帯のベースではこれ以外にはあり得ないであろうトレモロアームを備え、3つのピックアップを好きなように組み合わせて演奏できるほか、低域をカットする「ストラングル回路」を持っているので、なかなか常識外のポテンシャルを持っています。かなりマニアックな楽器なのでこれから始める人にはお勧めできませんが、クリエイティブな挑戦をしたい人にはぜひ挑戦してもらいたい楽器です。


Is This a BASS or a GUITAR?
ギターのように弾くベース?ベースになるギター?アイディア次第で新しい演奏ができます。

モダン・スタイル

1970年代まででベースはほぼ完成の域に達しましたが、それ以後も時代に応じたサウンドやルックス、演奏性を追求するアレンジが考案されていきました。特に平らな指板とごついブリッジは、現代志向のベースに必須の仕様です。またネック裏にサテン仕上げが採用され、引っかかりのないスムーズなポジション移動ができます。これら比較的新しい設計が採用されるベースは現代の感覚では弾きやすく、サウンド的にも現代的な音楽にマッチしやすいのがメリットです。

Contemporary Jazz Bass

「コンテンポラリー・ジャズベース」は、メタリックカラー&マッチングヘッドという主張あるルックスに、12インチRの平たい指板が特徴です。指板が平たくなると、弦高を下げたセッティングが可能となります。ピックアップにはセラミック磁石が使用されており、キメが細かい明瞭なサウンドが得られます。サウンドと演奏性こそモダンな方向へアレンジされていますが、おおむね伝統的なジャズベースの雰囲気もしっかり残っている仕上がりです。

また、下記アクティブ仕様と合わせた「コンテンポラリー・シリーズ」では、トラスロッドが「デュアルアクション(両効き)」で、順ぞり/逆ぞり両方の調整が可能です。そのぶん少し本体重量が上がるのは注意点ですが、こうしたところもモダンなサウンドを作る密かなポイントです。

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Contemporary Active Jazz Bass HH / V

Contemporary Active Jazz Bass HH

Contemporary Active Jazz Bass HH V

現代的なロック系のゴリゴリ感は、アクティブ回路あってこそです。4弦と5弦がリリースされている「コンテンポラリー・アクティブ・ジャズベース」は、モダンロックに思いきり振ったアレンジでまとめたアクティブベースです。ポプラ材のボディを基本とするスクワイアにおいて、唯一このモデルだけがアッシュを使用しているあたり、開発陣の気合いがうかがえます。

マッチングヘッドで、コントロールプレートを排し、金属パーツはブラッククローム、という外観に、2基のハムバッカー・ピックアップとプリアンプを備えています。プリアンプはマスターボリューム、ブレンド、マスタートーンに加え、トレブルとベースそれぞれのブーストという構成です。

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Affinity Series Jazz Bass / Precision Bass PJ

Affinity Series Jazz Bass

Affinity Series Precision Bass PJ

「アフィニティ」は、スクワイアの中でも最も求めやすい価格帯に設定されたシリーズです。3万円近辺という低価格ながら、基本構造はジャズベースやプレシジョンベースそのもので、まさに本物です。またクラシカルな設計を基本としながらも、これから始める人の練習をサポートするアレンジが施されています。指板には伝統に根差した丸みがありながら、大きめのフレットが打ち込まれていて押弦に有利です。またネック裏がサラッサラのサテン仕上げなので、ポジション移動がスムーズにできます。

アフィニティ・ジャズベースはナット幅1.5インチのスリムネックでカラーバリエーションは4つあります。アフィニティ・プレシジョンベースPJは、プレベにリアピックアップを追加したPJ配列が特徴です。ピックアップごとにボリュームが付いているので、シンプルなプレベとしても使用できる幅広さを持っています。

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Bronco Bass

Bronco Bass

「ブロンコ」は、もともと低価格帯のエレキギターとして開発され、輪をかけてシンプルな基本設計にショートスケールのネックを持っていました。ベース版のブロンコはやはり弦長30インチの短いネックにシングルコイルを1基のみ搭載、というシンプルな楽器です。お子様が抱えるベースとしても良好ですが、だいたいギターと同じくらいの大きさなので大人が使用しても大丈夫です。なお、ブリッジはもとのブロンコを踏まえて完成された、このモデル専用のパーツです。