ジャクソン(Jackson)は1980年に革新的なギターブランドとして設立、特にハードロック/ヘヴィメタルに特化したギターやベースで知られます。新発想の指板、新しいボディ材、攻撃的なデザインなど、同社の革新的な設計は、後発のギターメーカーに多大な影響を及ぼしています。今回は、このジャクソンのベースに注目していきましょう。
HATEBREED – Seven Enemies (OFFICIAL MUSIC VIDEO)
メタルコアバンド「Hatebreed」所属、クリス・ビーティー氏は永年にわたりジャクソンのベースを愛用、Xシリーズよりシグネイチャーモデルが出ています(海外モデル)。ラインナップや用途で多様化の様相を見せているジャクソンですが、やはりジャクソンと言えば、低く構えてバキバキとピックで弾くのが似合います。
ジャクソンのベースは、エレキギターの設計で培った設計理念を基に、特有のサウンド、演奏性、頑丈さを持っています。まずその特徴をチェックしていきましょう。
ジャクソンの楽器は、一目見ただけでそれとわかる、絶大なインパクトを持っています。その最たるものが「コンコルド・ヘッド」と「シャークフィン・インレイ」の、鋭く尖ったデザインです。ジャクソン以前にこのような意匠はなくまさに空前、画期的であり、後に続くギターメーカーのデザインに大きく影響しました。
また、金属部品においては、ほとんどのモデルでブラックパーツが採用されています。最も低価格なモデルにおいてもルックスのかっこ良さを譲ることはできない、ジャクソンの心意気を感じさせます。
ジャクソンから始まったと言われる「スカーフジョイント」は、頑強な角度付きヘッドを作る画期的な発明です。普通に倒したり落っことしたりする程度では、折れることがほぼありません。しかし逆にローポジションの強度がありすぎて、ネックの反り方に従いにくいのが難点でした。現在のジャクソンでは、全モデルのネックにグラファイト製の補強ロッドを仕込むことで、スカーフジョイントとバランスの取れた強度のネックを作っています。
X Series Concert Bass CBXNT V
「コンパウンド・ラジアス指板」の名で一般に知られる「コニカル・フィンガーボード(円錐指板)」も、ジャクソンが起源です。ローポジションでは丸みがあり、ハイポジションに行くに従って徐々に平たくなっていく指板は、弦高を下げる「ロー・セッティング」にしやすいのが最大のメリットです。ジャンボフレット採用と相まって、軽いタッチで押弦できます。
また、上位モデルでは「スルーネック」構造が多く採用されています。スルーネックはジョイント部分の出っ張りをキレイさっぱりカットできるため、ハイポジションの演奏が飛躍的にラクチンになります。またネックからブリッジまで、つなぎ目のないカチカチなメイプルが渡されるので、弦振動がネックに吸われにくくなりサスティンが豊かに伸びます。
ボディ材に「ポプラ」を採用したのも、ジャクソンが初めてです。ポプラは軽量で、加工性が良い木材です。そのぶんサウンドも軽く柔らかくなる傾向のあるところですが、ネックがボディエンドに達するスルーネック構造に加え、各弦独立ブリッジや重厚な「HiMass」ブリッジなど金属量の多い重いブリッジを載せることで、パンチのある弦振動を達成しています。
ジャクソンの特徴については、こちらも参照してください。
Jackson Guitars(ジャクソン)の選び方。各グレードの違いは? – エレキギター博士
では、ジャクソンのラインナップをチェックしていきましょう。現在のラインナップは、今までの、またこれからのジャクソンの姿を現す3タイプを基に展開しています。
では、シリーズごとに見ていきましょう。
「プロ」シリーズはその名の通り、プロミュージシャンの使用を念頭に置きつつ、求めやすい価格帯に踏みとどまった製品群です。今のところ、5弦2タイプ、4弦1タイプの「Spectra」がリリースされています。
「Spectra」は、コンコルド・ヘッドとシャークフィン・インレイから脱却した新しいデザインに、24フレットの音域とアクティブ回路を持たせた、ジャクソンの未来を担う新しいベースです。ルックスの特徴でもある大きなアッパーホーンは12フレット地点に達し、良好な重量バランスを達成しています。
プロシリーズ版の「Spectra」は、これまでのジャクソンのイメージを一新するデザインと構造を採用した、様々な場面で活躍できる優秀なベースとして仕上がっています。
Jackson® Pro Series Spectra Bass
控え目なヘッドロゴと楕円形のポジションマークに、現代的なセンスを感じさせます。マッチングヘッドがお洒落な印象。サスティンの豊かな楽器は、弾いた音がそのままに近い音量で伸びるので、フレーズをしっかり歌うことができます。
Pro Series Spectra Bass SBP IV
ボディはマホガニーにメイプル&ウォルナットの3層を貼り付け、さらにその上に「SPB」ならバールポプラ、「SBA」なら板目(flatsawn)のアッシュがあしらわれます。マホガニーバックに硬質な多層トップ材が貼られる構造となり、環境変化も安心な強度と安定性、そして良好な音響性能を達成しています。
ネックはメイプル&ウォルナットの5層構造に加え、グラファイトの補強もあり恐ろしく頑強です。ジャクソンの特徴だったスカーフジョイントからも脱却し、ヘッドの先からボディの末端まで一本の木材が通る構造になっています。指板には、ただでさえ非常に硬いジャトバ材に熱処理を加え、さらに硬く軽量に仕上げた「キャラメライズド・ジャトバ」が採用されています。高い安定性と、豊かなサスティンが期待できます。
スルーネック構造、コニカル・フィンガーボード、そしてジャンボフレットが採用されており、ハイポジションではラクラク指が届き、スリムなネック形状も手伝い、軽いタッチでスイスイ運指できます。なお、5弦モデル「SPB V」「SBA V」は弦長35インチ、4弦モデル「SBP IV」は弦長34インチです。
ソープバータイプのNordstrand「RSB4」ピックアップは、明るくパンチの効いたキャラクターの、オールラウンドなサウンドを持っています。ON/OFF切替ミニスイッチ、中音域を3つのうちから選べる3WAYトグルスイッチを伴う3バンドEQ、ブレンド、ボリュームという操作系は、どんなジャンルにも順応できる積極的なサウンドメイクを可能とします。
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ミドルクラスとなる「X」シリーズはポプラボディを基本とし、スカーフジョイント採用のグラファイト強化ネック、スルーネック構造、ローレル指板、といった仕様で「Spectra」と「Concert」がリリースされています。
X series Spectra SBX
Xシリーズの「Spectra」は、ポプラボディの基本モデル(SBX)、ポプラバールトップ(SBXP)、キルテッドメイプルトップ(SBXQ)それぞれに5弦仕様と4弦仕様を揃える、かつ4弦モデルにはメイプル指板モデル(SBXM)もある、充実した布陣です。中程度の出力を持つハムバッカー・ピックアップを2基搭載していますが、ミニスイッチの操作でコイルタップができ、繊細なタッチの活きるサウンドに切り替えることができます。
CBXNT DX IV
「Concert」は、コンコルド・ヘッドとシャークフィン・インレイ、スルーネックを継承した、ジャクソンのアイデンティティを体現したベースです。「X」シリーズでは、4弦はロケンローな意匠の「CBXNT DX IV」のみで、これ以外は全て5弦という、尖ったラインナップが展開されています。
4弦仕様の「CBXNT DX IV」は、守備範囲の広いPJ配列ピックアップに、3バンドのEQを備えます。このモデルだけの「Bacher IV」ブリッジとピックアップフェンスにより、他の機種と一線を画したデザインになっています。ナット幅は41.3mmで、PB並み、またはちょっとだけスリムです。
5弦仕様機は、ポプラボディの基本モデル「CBXNTV」、マホガニーボディ&メイプル指板モデル「CBXNTMV」、マホガニーボディ「CBXNTV MAH」の3モデルで、木材構成でキャラクターを立たせています。
Jackson® X Series Concert™ Bass CBXNT DX IV Demo
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「JS」は、これからベースを始める人のスタート地点として良好な、手に入れやすい価格とじゅうぶん以上の性能、そしてクールなルックスを兼ね備えたシリーズです。ポプラ製ボディ、スカーフジョイントのグラファイト強化ネック、アマランス製指板、ボルトオンジョイントで本体を構成し、電気系でグレードとバリエーションを作っています。
エントリークラスではありますが、ほとんどのモデルでコニカル・フィンガーボードとアクティブ回路が採用され、また銘木のボディトップやブラックパーツなどのドレスアップもあり、ジャクソンのベースとしての矜持をしっかり持っています。こちらはメタルにぴったりの「Concert」と「Kelly Bird」、オールジャンル対応型の「Spectra」の3モデルでラインナップを展開しています。
JS Series Concert Bass JS3VQ
上位モデル「JS3」は、ネックとヘッドにバインディングが巻かれ、アクティブ回路が備わります。2タイプある5弦モデルはいずれも弦長35インチ、ナット幅1.75インチ(44.45 mm)で、24フレットの音域があります。「Concert」は高出力ハムバッカー・ピックアップを2基備え、2ボリューム、3バンドEQという操作系です。
「Spectra」は標準的な出力のハムバッカー・ピックアップを2基備え、ボリューム、バランサー、3バンドEQという操作系に加え、ボリュームポットのスイッチでパッシブに切り替えられ、またミニスイッチでコイルタップができます。
Kelly Bird JS3Q
アクティブ4弦の「Concert」と「Kelly Bird」は電気系が共通で、高出力ハムバッカー・ピックアップ2基に、2ボリューム、3バンドEQという操作系です。両機ともナット幅は42mmで、これは標準的なPBよりちょっとスリムな感じです。なお、「Concert」は24フレット、「Kelly Bird」は21フレットです。
JS Series Concert Bass JS2
「JS2」はバインディング非採用、「Concert」と「Kelly Bird」は2基の高出力ハムバッカー・ピックアップを搭載するパッシブ仕様です。操作系は2V1Tのベーシックな構成で、シンプルながら必要十分です。
「Spectra」の「JS2」は、PJ配列のピックアップに、低域をブーストできるアクティブ仕様機です。操作系はボリューム、バランサー、ベースブーストという構成で、ボリュームノブを引き上げるとパッシブに切り替えできます。
「Minion JS1X」は、弦長28.6インチの、小型ベースです。パッシブPJ配列のピックアップ、2V1Tの操作系、堅牢な「HiMass」ブリッジという仕様はメタル用ベースとして十分な性能です。ちょっとメタルやりたくなっちゃった時はもちろん、健全なお子様に鋼鉄の精神をたたき込む英才教育にも活用できます。
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Megadeth – Hangar 18
メガデスの4thアルバム「Rust in Peace(1990)」収録、1992年グラミー「ベスト・メタル・パフォーマンス部門」ノミネートの名曲。歌詞の内容はSFアクション映画「Hanger 18(1980。日本未公開)」をヒントにしており、1947年、オハイオ州ライトパターソン空軍基地内施設「ハンガー18」に、エイリアンの航空機が運ばれ隠蔽されているという「UFO陰謀説」を唱えています。
スラッシュメタルバンド「MEGADETH(メガデス)」所属、デイヴ・エレフソン氏は長らくジャクソンを愛用しており、Xシリーズからシグネイチャーモデルを多く輩出しています。全モデルで4弦と5弦があり、また2モデルで「世界一」を達成しており、ファンならずとも気にしてほしいベースに仕上がっています。
メガデスの名盤「Rust in Peace」リリース30周年を記念して発表された本機は、レギュラーモデル同様のボディ形状に、柾目(Quatersawn)メイプルを使ったスルーネック、EMG製PJ配列ピックアップ搭載という高級仕様です。操作系は、2WAYセレクタースイッチ、ボリューム、2バンドEQという構成になっています。
メイプル指板モデルは、ストレートヘッド、ピックガードあり、トラスロッドがネックエンド側に開口、というフェンダー的なアプローチです。ネックには柾目材が使用されていますが、Xシリーズからのリリースということもあり、「柾目ネック仕様で、世界で最も手に入れやすい価格」を達成しています。
電気系はEMG製PJ配列ピックアップに、ボリューム、バランサー、3バンドEQです。
エレフソン氏の「Concert」は、ボディのエッジとカッタウェイにベベル(斜角)が入れられているのが特徴です。こちらはEMGのハムバッカー「HZ35」を2基搭載、ボリューム、バランサー、3バンドEQという操作系になっています。
変形モデル「Kelly Bird」はメイプル指板で、ボディを3分割した印象的なカラーリングが特徴です。こちらも「HZ35」を2基搭載していますが、操作系はボリューム2基、3バンドEQという構成です。こちらは「EMG搭載機で、世界で最も手に入れやすい価格」を達成しています。EMG「HZ35」はもともとパッシブのピックアップなので、アクティブ/パッシブの切り替えスイッチを増設するなど、改造することも可能です。
以上、ジャクソンのベースについてチェックしていきました。鋭利なルックスと高い演奏性でメタルの歴史を牽引してきたジャクソンでしたが、演奏性へのこだわりはそのままに、オールジャンル対応型の「Spectra」を投入することで新しい歴史を歩もうとしています。歴史を歩んできたジャクソンも、これからの歴史を歩むジャクソンも、ショップで見かけたら、ぜひ手にとってみてください。
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