みなさんエフェクターと聞くとどんなものを連想しますか?ディストーションなどの、いわゆる歪み系のエフェクターを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。この歪み系エフェクターはジャンルに関わらずギタリストには必須のエフェクターといえますし、ベーシストにとっても使用頻度の高いエフェクターの1つなのではないでしょうか?当記事ではそんなベース用歪みエフェクターにスポットを当てて、使い方や定番モデルの紹介などしていきます。
歪みとは、もともとは真空管アンプに入力される音声信号が大きすぎて過大入力となったときに出る、割れたサウンドのことです。オーディオ等の世界では音が歪むことは当然回避すべきと考えられていますが、ギターやベースにおいては、独特の濁ったサウンドがロックなどのジャンルに意図的に使われるようなります。これに応じて、あまり本体に負担をかけずに歪みサウンドが得られるようになったアンプや、アンプより前の段階で歪みサウンドを作り出す歪みエフェクターが登場してきます。
ひと口に歪みエフェクターといっても様々な種類のものがあります。その中でも代表的なのはオーバードライブ、ディストーション、ファズなどです。実はこれらにははっきりと定義された違いはありません。が、一般的なイメージではオーバードライブ→ディストーション→ファズの順で、より過激な歪みになっていきます。
ちなみに、これら3つのエフェクターの名前ですが、オーバードライブとはアンプに信号が過大入力している状態を、ディストーションは歪んだ音そのものをそれぞれ指し、ファズは本来は割れた音を表現する擬音語として使われています。
YesSongs #7:YES Roundabout
イギリスのプログレッシブロックバンド「YES」の代表曲の1つで、歪んだベースサウンドが聴ける曲としても有名です。ベースのクリス・スクワイアはマエストロの「ベースブラスマスター」というファズを愛用していました。
BOSS Bass OverDrive ODB-3
歪みエフェクターの操作方法はメーカーにより様々ですが、ほぼ全てのモデルに付いているツマミとして、歪み具合を調整するツマミと、エフェクトがオンになっているときのボリュームを調整するツマミがあります。歪み具合を調整するツマミは「DIST(ディストーションの略)」「DRIVE」「GAIN」などの名前がつけられ、これを右方向に回すほどより深い歪みサウンドが得られます。ボリュームを調整するツマミは「VOLUME」「LEVEL」などの名前がつけられています。このツマミにより、エフェクターのオン/オフを切り替えた際にボリュームが大きく変わらないようにしたり、エフェクターをオンにしたときに歪ませると同時にボリュームも大きくする、といった調整が可能です。
この他にもエフェクトオン時の音質を調整するトーンツマミや2バンド程度のイコライザー、歪み音と原音をミックスするツマミなども搭載されているモデルが多いです。
ベースにおいて、歪みエフェクターはどのような場面に使われているのでしょうか?
まずはベースソロのとき。ソロの最初から歪ませてギタリスト顔負けのソロを弾いてもいいし、最初はクリーントーンで弾き途中から歪ませるのも、テンションの違いが演出できて面白いのではないでしょうか。
次にベースラインを弾いているとき。特に小編成のバンドではサウンドに厚みを出すためベースも歪ませることがよくあります。それ以外にも少し聴くだけでは分からない程度に歪ませることによって、バンドの音との馴染みをよくするなど様々な使われ方をしています。
複数のエフェクターを用いる場合、歪みエフェクターはどこに繋げばいいでしょうか?エフェクターの接続順は一般的には以下のようにするのがセオリーといわれています。
楽器→フィルター系(ワウetc)→ダイナミクス系(コンプレッサーetc)→歪み系→モジュレーション系(コーラス・フランジャーetc)→アンビエント系(リバーブ・ディレイetc)→プリアンプ→アンプ
つまり、ベースで多様されるエフェクターの中ではコンプレッサーの直後に歪みエフェクターを配置するといいでしょう。ただ、これはあくまでセオリーであって決まりではありません。いろいろな接続順を試して気にいった音色が得られたら、その順番で繋いでもまったく問題ないです。
BASS DRIVER DI V2
「SansAmp Bass Driver」などのベースにおける定番のプリアンプには、歪みエフェクターを内蔵しているものが多数あります。が、これらのエフェクターの主な用途は、ボリュームやイコライザーなどによって音を整えることにあります。音を歪ませるのが目的のエフェクターとは主な用途が異なります。ただ内蔵されている歪みが気に入ったのであれば、プリアンプを歪みエフェクターとして用いるのは問題ないでしょう。実際に、歪み用と本来のプリアンプ用など、用途を使い分けて複数のプリアンプを同時に使用しているミュージシャンも多いです。
Ibanez TS9
ギター用だがベーシストの使用例もある
これは他の機材にもいえることですが、ギター用とベース用のエフェクターは基本的には同じものなので、ギター用のものをベースに使っても効果は得られます。が、ベース用に作られたエフェクターは低音域へのエフェクトの掛かり具合がよくなっていたり、音の太さを失われにくく設計されています。逆にいえば、ギター用のエフェクターをベースに使うと低音域のエフェクトのかかり具合がよくなかったり、音が細くなる可能性があります。ただ、このことをうまく利用して効果的に使える場面もあるかもしれません。やはり最終的には使える音か否かで判断するといいでしょう。
逆に、低音域が強調されたベース用エフェクターをギターに使用するという例はいくつも見られます。
それではおすすめの歪みペダルを紹介していきます。
ODB-3は黄色いボディが特徴的なベース用歪みエフェクターの超定番モデルです。コントロールツマミは、歪み具合を決定する「GAIN」、音量を決定する「LEVEL」、エフェクトオン時の音質を調整する「HIGH」「LOW」のイコライザー、原音とエフェクトオンをミックスする「BALANCE」で構成されています。特に原音とエフェクト音をミックスして出力する「BALANCE」ツマミをうまく使うことにより、原音の太さを損なわないまま「芯のある歪みサウンド」を生み出すなど、様々な音色を得ることが可能です。
Red Hot Chili Peppers-Around The World[Official Video]
冒頭から過激に歪んだベースサウンドを聴くことができます。ベースのフリーがBOSSの「ODB-3」を使用したことにより、このエフェクターがベースの歪みエフェクターとして定番となっていきました。
ODB-3 Bass OverDrive[Boss Sound Check]
ODB-3の様々なセッティングでのサウンドを聴くことができます。かなり深く歪んでいますが音の太さは失われていないのが分かると思います。
BOSS Bass OverDrive ODB-3 – Supernice!エフェクター
スウェーデンに本社を持ち、ベース用のアンプやエフェクターを製造している「EBS」の歪みエフェクターです。コントロールツマミは、歪み具合を決定する「DRIVE」、音量を決定する「VOLUME」のみと、いたってシンプルです。このほかにモード切替の3WAYスイッチが搭載されており、ストレートな歪み回路のFLAT、エフェクターを使った際の音痩せを回避するため低音域のみエフェクト祖スルーさせるSTD(STANDARD)、真空管のひずみをシュミレートしたTUBESIMの3モードが選択可能です。
EBS MultiDrive Studio Editon – demo by Pascal mulot
EBS MultiDriveのデモ動画です。ナチュラルな歪みから過激なものまで様々なサウンドが聴けます。
EBS MultiDrive – Supernice!エフェクター
フィンランドのエフェクターブランド「Mad Professor」のベース用歪みエフェクターです。ヴィンテージの真空管アンプのような歪みサウンドが特徴です。コントロールツマミは、歪み具合を決定する「DRIVE」、音量を決定する「VOLUME」、エフェクトオン時のトーンをコントロールする「NATURE」で構成されています。「NATURE」のツマミがさセッティングのキモとなり、左に回すほどローが、右に回すほどミドルが強調されたサウンドになります。
Mad Professor BlueBerry Bass Overdrive video by Heikki Laine
BlueBerry Bass Overdriveのデモ動画です。同じフレーズを繰り返す中でツマミのセッティングを変えているので、サウンドの変化がとてもよく分かります。
Mad Professor Blueberry Bass Overdrive – Supernice!エフェクター
BASS Soul Foodは、ELECTRO HARMONIXのケンタウロス・クローン系オーバードライブとして人気の高い「Soul Food」をベース用にアレンジしたモデル。Soul Foodの持つドライブサウンドはそのままに、より広いダイナミック・レンジを持ちローエンド(低音域)が強調され、サウンドをより太く迫力のあるものにしてくれます。歪みの量自体は控えめで、 BLENDツマミで原音のみにすることでクリーンブースターとしての使用も可能です。
-10dB/0dBのパッド・スイッチを搭載し、アクティブ・ピックアップやハムバッカー・ピックアップにも対応。ベーシストはもちろん、低音域を強調したいギタリストにも人気のモデルです。
Electro Harmonix BASS Soul Food – Supernice!エフェクター
Hooker’s Green Bass Machineは、ONE CONTROLによるミニサイズのベース用オーバードライブ。ベースチューブアンプの自然な歪みやフィーリングが再現され、暖かみのあるサウンドからゴリゴリと激しい歪みまでカバーすることができます。ボディ側面にLowトリムポットを搭載し、多弦ベースの使用時にもリッチな低域を実現します。
ミニサイズの非常にコンパクトなサイズなので、エフェクターボードにも組み込みやすいでしょう。比較的リーズナブルな価格も魅力的です。
ONE CONTROL Hooker’s Green Bass Machine – Supernice!エフェクター
エレハモのベース用ディストーション「Bass Big Muff Pi」を、コンパクトにダウンサイジングした機種が「Nano Bass Big Muff Pi」です。サイズは小さくなったものの、「Bass Big Muff」特有の極太ディストーションサウンドをしっかり引き継いでおり、エレハモ製品特有の強烈なキャラクターは健在です。
操作系統に関しては、TONEなどのツマミが3つと、DRYモードを選択できるスイッチを1つ搭載しています。通常時はエフェクター音のみを出力しますが、スイッチを操作してエフェクター音に原音をミックスすることで、厚みのあるディストーションサウンドを作ることが可能です。
Electro-Harmonix Nano Bass Big Muff Pi
Nano Bass Big Muff Piのデモ動画です。かなり深く歪ませても、DRYスイッチをオンにして原音を混ぜることにより、サウンドに芯ができるのがわかりますね。
Electro Harmonix Nano Bass Big Muff Pi – Supernice!エフェクター