コンプレッサー(compressor)は、圧縮するという意味の英語「compress」から名付けられたエフェクターです。名前から予測できるように、小さい音を大きく大きい音を小さくと、音を圧縮して粒を揃える効果があります。これによりベースのサウンドがタイトになり、音程感も明確になってくるんです。また圧縮されることで同じ音量の音が持続することになり、サスティーン(音の伸び)も長く聴こえるようになります。
具体的にベースでコンプレッサーが用いられるのはどんな場面が多いでしょうか?まず挙げられるのはスラップ奏法の時でしょう。普段あまりコンプを使わないけどスラップの時だけは使うというベーシストもけっこういます。スラップ奏法は音が暴れやすいため(もちろんそれが特徴でもあるのですが)、それをある程度補整してくれるコンプレッサーはとても相性のいいエフェクターといえるでしょう。
同じような理由でピック弾きの際にもコンプレッサーはよく用いられます。とくに、音の粒が揃うことが重要となる速いテンポの8ビートのルート弾きなどには有効ですね。他にも、サスティーンが長くなるという特性を生かし、ロングトーンを多用する指弾きのバラード楽曲で薄くコンプレッサーをかけるのもいいでしょう。
ディストーションなどの音を「変化」させるエフェクターは使いどころが限られていますが、コンプレッサーは音を「補整」するエフェクターなので、適度に使えばどんな場面でも有効活用できるといえます。実際レコーディングの現場などでは、ほとんどの楽器に何かしらのコンプレッサーがかかっている場合がほとんどです。
しかし、その特性上深くかけすぎてしまうと、細かいニュアンスが失われる、音抜けが悪くなるなどの結果になってしまうこともあり注意が必要です。ただ、この加減も当然使ってみなくては分からないので、興味を持ったらまずはリハーサルやセッションで積極的に使ってみて、録音や周りの意見などを聞き適度な使い方を見極めていくのがいいのではないでしょうか。
ギターにも当然コンプレッサーと呼ばれるエフェクターは存在します。これらは基本的には同じ仕組みでできているので、ギター用のコンプレッサーをベースに用いるのは可能です。が、ベース用のものは、低音域にエフェクトが効きやすいなどのベースに特化した工夫がされているため、そちらを選んだほうが無難といえるでしょう。しかし最終的には、気に入ったサウンドが出ればそれが正解です。
コンプレッサーのコントロールは、主に「threshold(スレッショルド)」、「ratio(レシオ)」、「attack(アタック)」、「release(リリース)」、「level(レベル)」または「gain(ゲイン)」の5つのパラメーターで構成されています。
「スレッショルド」は、どれくらいの音量から音に圧縮をかけるかを設定するパラメーターです。低めに設定すると小さい音にも圧縮がかかり、高めに設定するとスラップのプルなど大きい音にだけ圧縮がかかります。
「レシオ」は、スレッショルドを超えた音をどれくらい圧縮するのかを決めるパラメーターです。1:1ならば実質コンプがかかっていない状態、2:1ならばスレッショルドを超えた音は1/2の音量に圧縮されます。
「アタック」は、スレッショルドを超えた音にいつから圧縮をかけるかを決めるパラメーターです。この値を小さくするとアタックからすぐにコンプがかかることになりコンプ感の強調されたサウンドに、逆に大きくするとアタックからしばらくしてからコンプがかかることになりナチュラルなサウンドになります。
「リリース」は、減衰してスレッショルドを下回った音にいつまで圧縮をけけるかを決めるパラメーターです。「アタック」とは逆で、値を小さくするとすぐに音の減衰が始まりナチュラルなサウンドに、値を大きくするとしばらくコンプがかかりつづけコンプ感の強いサウンドになります。
「レベル」または「ゲイン」は、エフェクターで作った音を最終的にどの程度出力するのかを決定するパラメーターです。
これらのパラメーターは必ずしもコントロール部分に全てが搭載されているわけではなく、特にペダルエフェクターなどでは、いくつかのパラメーターが統合されてひとつのツマミになっているものも多いです。
ベーシストの定番コンプレッサーがEBSの「MultiComp」です。小さい音は大きく、大きい音はそのままに、音の粒をしっかりと揃えてくれます。コンプ感は少なめで、原音重視のナチュラルなサウンドが特徴です。
「COMP/LIMITツマミ」と「GAINツマミ」の2つに加え、「TUBESIM」と「MB(マルチバンド)」、「NORMAL」といった3つのモードを選択できるスイッチを搭載しています。基本的にはCOMP/LIMITツマミで音を圧縮し、GAINツマミで出力を調整するだけなので、コンプレッサーの扱いに慣れていない初心者の方でも、難なく使いこなすことができます。
MBモードに関しては、内部基板にある「THRESHOLDトリマ」を調整することで、各音域にコンプレッションをかけることができます。これにより、低音域だけを圧縮し、「高音域は圧縮しない」という選択も可能になります。中〜上級者向けの機能ですが、音を作り込みたい方は試してみると良いでしょう。
EBS MultiComp – Supernice!エフェクター
2016年に登場した「BC-1X」は、BOSSの新世代デジタルペダル「X」シリーズのベース用マルチバンド・コンプレッサー。発売してから間もないペダルですが、瞬く間にベース用コンプの定番となりつつある人気機種です。
ATTACKの値は固定で、4ツマミの搭載でナチュラルなコンプレッションからパコパコ系と呼ばれるサウンドまで1台で対応できます。原音を損ねずクリアでノイズレス、コンパクトながらスタジオ品質のコンプレッションが可能となっています。ツマミすぐ下のインジケーターによって、演奏中にどのくらいコンプレッションがかかっているかが視覚的にわかるようになっているのも、ベーシストにとってはありがたい機能です。
BOSS BC-1X – Supernice!エフェクター
白い外観からも連想できるように、ナチュラルで色付けの少ないコンプレッサー。スレッショルドがない代わりに、インプットの上下で入力レベルを操作するクラシカルな仕様で、4:1から20:1までを選択できる幅広いレシオ、アクティブピックアップに合わせるためのスイッチもあり、見た目以上の設定幅を持っています。ベースに適した幅広いヘッドルームを持ち、薄く掛けて音量バランスを調整したり、音に滑らかさを出したり、また深く掛けてスラップに合わせるにも良く、あらゆる用途で使用できます。アタックに追従するゲインリダクションメーターも、コンパクトエフェクターではあまり見ない仕様で、演奏する上での気分を盛り上げてくれます。
MXR M87 Bass Compressor – Supernice!エフェクター
Aguilar独自のトランス・リニア・コントロール回路を内蔵したコンプレッサー。名称もそれが由来となっています。原音を尊重したナチュラル系コンプレッサーでは随一と評価の高いペダルで、どのようなセッティングでも使える音を出す稀なエフェクターです。原音を変えすぎないためか、一人で弾いている時には劇的な効果を感じにくい代わりに、バンドアンサンブルにおいての効果は高く、程よく抜ける音が得られ、良い意味でベースらしいエフェクターと言えるでしょう。ノイズが皆無なのも、大きなポイントとして挙げられます。
Aguilar TLC COMPRESSOR – Supernice!エフェクター
音の伸びを得るためのサステインモードと純粋なコンプレッサーであるコンプモードを切り替えられる、独特な機能を持つコンプレッサー。ギターとの兼用であるためか、いわゆるコンプレッサーの詳細な設定をするためのコントロールがなく、その代わりにコンプレッサーには珍しいトーンというコントロールがついています。これはブーストする帯域をつまみで設定できる、補足的なEQとも呼べるものになっています。オーソドックスなコンプレッサーではありませんが、このモデルならではのピュアな音色に、トーンコントロールを合わせた独自のセッティングで得られる音は、他のモデルにはない魅力があります。
MAD PROFESSOR Forest Green Compressor – Supernice!エフェクター
安価なエフェクターを多数発売しているベリンガー製のベース用リミッター。レシオやスレッショルドなど、典型的なコンプレッサーと同じコントロールつまみを持ちながら、エンハンスというコントロールを回していくことで、エンハンサー機能を得ることができるのが大きな特徴です。音の輪郭を鮮やかにしてくれるこの機能は、スラップ奏法などに特に相性がよく、太さを保ったまま音抜けの良いサウンドを得ることができます。
BEHRINGER BLE400 – Supernice!エフェクター
小型の筐体につまみが1つだけという、超シンプル設計のコンプレッサー。ワンノブでありながら複数のコントロールを一括してコントロールできるようになっており、セッティング次第でかなり大きな差が出てきます。このモデルの最大の特徴はTC Electronicの目玉機能Tone Printに対応していること。専用のスマートフォンアプリを使うことで、ブレンド量やコンプレッションの量、圧縮の掛かり始める角度を表すニーなど、細部までが調整可能。大量のプリセットをインポートするだけで膨大な別モデルを使えるという部分において、初心者にもおすすめです。
TC Electronic SpectraComp Bass Compressor – Supernice!エフェクター
2019年に新バージョンとして、あらたにBlue Labelを冠して登場したMultiComp。長年ベース用コンプレッサーとして定番の地位にあり、独特の音色で人気を博してきました。チューブシミュレート、ソリッドステート、ノーマルの3つのモードが選べる仕様は先代のStudio Edition同様に、今回のバージョンからあらたにSensというコントロールが追加され、細やかな効き具合を設定できるようになり、コンプレッサー特有の音色のせり出し感を調整できます。また、18Vに対応するようになり、大きなヘッドルームを確保し、よりローノイズな演奏もできるようになりました。
EBS MULTICOMP BLUE LABEL – Supernice!エフェクター
2009年、フィンランドでベーシストDouglas Castroにより設立されたベース用機器ブランドDarkglass Electronics。本機は同ブランドの代表的なコンプレッサーで、レシオやモード切り替えにタッチセンサーを搭載する、近代的デザインが印象的な一台です。その見た目とは裏腹に内部の回路はアナログで作られており、非常に細やかな銘機のモデリングがなされています。3モードが選択可能で、うち一つがオリジナル、残りの二つはSSLのBus Comp、そして伝説的な1176コンプのモデリングであり、ベース用と銘打ちながらスタジオ機器をモチーフとしている辺り、最高峰のコンプレッサーを目指す意図が感じられます。USBケーブルによるPCとの接続では、アタックやリリースのより細やかなセッティングをすることができます。
Darkglass Electronics Hyper Luminal Hybrid Compressor – Supernice!エフェクター
アメリカのギター・ベースメーカー「Xotic Guitars」で多くの楽器を製作したHiro Miura氏が独立して立ち上げたブランド「Miura guitars」によるベース用コンプレッサーです。図抜けた広さを持つヘッドルームとそれに伴うクリアーな質感が最大の特徴で、非常にレンジの広い再生帯域を持っています。スレッショルド、レシオ、アタックという非常にオーソドックスなコントロールのみで、特に代わり映えのしないモデルでありながら、掛かり方のナチュラルさは他の追随を許さないほどで、まさに正統派コンプレッサーとして堂々たる存在感があります。
Miura Guitars M2を…
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通称U-IIと呼ばれる日本発の最高峰コンプレッサー。あらゆるパーツにこだわった末に、ラックタイプのマシンに匹敵する超高音質を実現。原音を尊重するナチュラルタイプの掛かりを標榜しつつも、絶妙な帯域にツヤを出し、ベーシストが好む音を見事に仕上げてくれる逸品です。その音質とともに、微妙な設定を可能にするその柔軟さにも評価が高く、特に高域部分のみコンプから外してくれるSCEQコントロールによるサイドチェインハイパスフィルターは、6段階のセッティングによって低音弦側と高音弦側とのバランスを非常にうまく取ることができる、このモデルでしか見かけることのない素晴らしいコントロールとなっています。非常に高価な製品ですが、1度持つと手放せない、名前の通り究極のコンプレッサーと言って過言ではないでしょう。