「Xotic(エキゾチック)」は、プリアンプやエフェクター、ベースやギターなど幅広く開発しているブランドです。「現場主義」と表現されるシンプルな使いやすさ、頼れるサウンドクオリティによって、違いが分かる多くのプレイヤーに愛用されています。特にベースは「Beyond a Vintage(ヴィンテージの向こうへ)」を標榜し、伝統的な弾き心地とサウンドを継承しつつ、現代的な音楽シーンにしっかり追随できる幅広いサウンドバリエーションを持ち味としています。今回は、このXoticのベースに注目していきましょう。
Carmine Rojas’ Performances from Joe Bonamassa’s “Tour de Force Tour” DVDS
デヴィッド・ボウイ氏、ロッド・スチュワート氏ら名だたるミュージシャンの作品を支え、現在ではジョー・ボナマッサ氏のベーシストを務める、カーマイン・ロハス氏。多くのジャンルに精通したベーシストには、それだけ守備範囲の広いベースが求められます。
Xoticの歴史は1996年、USA南カリフォルニア、サンフェルナンドバレーの小さなガレージに始まります。創始者のヒロ・ミウラ氏(現在は退社し、Miura Guitars USAを運営)はまず一人で、高品位なベースと、それに必要な高性能プリアンプの製作を開始しました。
サイドプロジェクトとして革新性と創造性を備えたエフェクターの開発にも着手しており、1998年に発表された「ロボトーク(Robotalk)」は、ランダムアルペジエーター、エンベロープフィルター、ローパスフィルターをコンパクトな一台にまとめていました。(あくまでも、良い意味で)変態エフェクターのロボトークは大いにヒットし、現在でもアップグレード版がリリースされています。
2000年には、Xotic製品を取り扱うPCI社を設立、ブースターやプリアンプなど、製品を順調にヒットさせてきます。現在の主力モデル「XJ-1T」が発表されたのは2008年、翌2009年にはさすがにガレージでの運営が限界を迎え、現在のカリフォルニア州ヴァンナイスにオフィスを移転します。Xoticの大ヒット作「EPブースター」もこの時リリースされています。
Xoticのエフェクター一覧 – Supernice!エフェクター
Xotic XJ-1T 5
Xoticのベースは、伝統的なスタイルを踏襲しながらも、現場で頼れる演奏性と幅広いサウンドバリエーションを備えています。その特徴をかいつまんで見ていきましょう。
XJ-1T 5のコントロール部分:多彩なトーンコントロールが可能
Xoticのベースで最も特徴的なのが、多機能かつ高性能な自社製プリアンプです。ジャズベースタイプの「XJ-1T」で採用されている「Xoticオンボード・ベースプリアンプ」を例に挙げると
2ボリューム、1トーン | 伝統的なJベースの操作系。2基のボリュームポットにはスイッチが仕込まれている。 |
アクティブ/パッシブの切り替え | フロントボリュームのスイッチで起動。 |
シリーズ/パラレルの切り替え | 略して「シリパラ」。リアボリュームのスイッチで起動し、両ピックアップのつなぎ方を切り替える。パラレル(並列)がノーマル、シリーズ(直列)で疑似ハムバッカーとなる。 |
3Band EQ | 高中低域のブースト/カット。センタークリックあり。 |
Midスイッチ& Brightスイッチ | 中域は400Hzと800Hz、高域は6KHzと12KHzの二択で、操作する周波数を選べる。 |
プリセット・ゲイン | ベース背面から操作し、アクティブ時の音量を設定する。パッシブ/アクティブの音量差をなくしたり、アクティブ時に大胆なブーストをかけたりできる。 |
表:オンボード・プリアンプの内容
かなり機能が多く、さまざまなジャンルのサウンドにフィットできる幅広さがあることが分かります。Xoticのプリアンプは自然なサウンドを身上としており、プリアンプ起動時の音色変化を極力抑えているのも注目すべきポイントです。また電源は18ボルト(9V乾電池を二つ使用)仕様となっており、強弱表現が活きる充分なヘッドルームが得られます。
木製ピックアップカバーがチャーミング
ピックアップはロサンゼルスの工場にて昔ながらの「手巻き」で作られ、パッシブ時のヴィンテージトーンを生み出します。木製のピックアップカバーが付けられるのも大きな特徴です。ピックアップカバーは低音側が巧く削ってあり、親指を置くのに好都合な形状になっています。
XJ-1T 5のブリッジ部分
搭載されるパーツ類には、現場で頼れるベースに求められる高品位なものが選ばれます。
ペグ | Hipshot「ウルトラライト」 | 小型の軽量なペグ。ヘッド重量を軽減させる効果があり、重量バランスが良くなる。 |
フレット | ジェスカー「FW- 9665」 | やや大きめのニッケルシルバー製フレット。程良い高さがあり、ピッチの安定感には定評がある。 |
ブリッジ | Xotic A-Type | 弦間ピッチも操作できる、堅牢な作りのブラス製ブリッジ。弦交換がラクチン。Hipshot社に特注して作っているXoticオリジナルパーツ(非採用モデルもあり)。 |
ストラップピン | GOTOH | 軽視されがちな部品だが、高精度&高品質を誇る日本製がわざわざセレクトされている。 |
ノイズ対策 | HRI(ハムリダクションインダクタ) | シングルコイルピックアップのトーンを維持しながら、ハムノイズの問題を解決する。電池不要。 |
表:Xoticに使われる主なパーツ
USAのメーカーだけあり海外ブランドのパーツが多い印象です。意外なことにHipshot(ヒップショット)およびそのライバルSchaller(シャーラー)からは、オーソドックスなストラップピンがリリースされていません。しかしストラップピンは楽器の重さを支える重要な部品ですから、精度と品質が信頼されているGOTOH(ゴトー)がセレクトされたわけです。
かつてオリジナルデザインのベースをUSAの自社工房で作っていたXoticですが、現在のラインナップはスタンダードモデルのみとなり、本体の製造は日本の工場に依頼しています。依頼を受けている工場は、丁寧な作りと高い加工精度を持ち味とした老舗です。木材は切削面が空気に触れることで変形する、すなわち「削ったら曲がる」わけですが、日本工場ではそういうところまで考慮した、精度の高い木工が行われます。
また現在では「plek(プレック)」により、1,000分の1ミリ単位でのフレット調整が施されます。
現代的なサウンドメイキングができる電気系を備えながらも、本体は伝統的なスタイルをしっかり継承しており基本構造はいたってオーソドックスです。弦の本数に関わらず弦長は標準的な34インチで、一般的なベースから持ち替えても違和感なく演奏できます。
アッシュとアルダーが選べるボディ材には、ある程度「重量感」のあるものが選ばれます。ボディ材の重量をある程度確保することで、しっかりした低域、中低域が安定的に得られるという考えです。
また、ジョイントヒール部は厚みを残しながらも滑らかに整えられ、ハイポジションでの演奏性を向上させています。トラッドな雰囲気のあるベースですが、ジョイントプレートは非採用です。
では、Xotic製ベースのラインナップを見て行きましょう。現在、
の3タイプがリリースされています。そのすべてが弦長34インチで、木製のピックアップカバーが付けられます。
LACM Xotic Bass Day Event – Rufus Philpot Demos Xotic Basses
Xotic製品をとっかえひっかえ演奏してくれるルーファス・フィルポット氏。こうして次々と見て行くと、それぞれのキャラクターが何となく伝わってきますね。
Xoticベースの主力モデルは4弦5弦ともに、
という仕様でまとまっています。ボディ材と指板材が選択でき、カラーバリエーションもじゅうぶんです。4弦と5弦で本体重量がほぼ同じということですから、比較的軽量なボディ材が5弦モデルに振り分けられているようです。
XJ-1Tを…
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Trio B.A.D. with Steve Hass – “Night in Tunisia”
エフェクターのかかりが良く、エグい設定でもしっかり演奏できます。
「軽量版」としてリリースされる5弦ベースは、
材木は選べないものの、ボディもネックも薄めに作って本体から軽量化し、ブリッジも軽量。電気系は高域と中域のスイッチが配置されず シンプルにまとまっています。軽くするのは弾きやすさのためばかりでなく、ヴィンテージ風味を持つ音響特性を狙ってのことです。
6弦モデルではボディ材と指板材は固定で、やや薄めのネックが採用されています。6弦ユーザーのプレイスタイルを考え、ジョイントヒールは大胆にカットされています。
海外仕様として、5弦モデルをインドネシアで組み立て、ロサンゼルスでセットアップされる「ProVintage」シリーズがあります。今のところ日本国内での流通はありませんが、XJ-1Tとほぼ同じ内容で大幅なコストカットを実現させており、日本でのこれからの展開が期待されています。
無骨さと温かみが共存するプレシジョンベースタイプでは、指板材とボディ材の組み合わせが決められており、「アルダーボディ&メイプル指板」といった仕様はありません。またジャズベースタイプ「XJ-1T」と同様に4弦でも5弦でも本体重量に大差がなく、持ち替えに違和感を覚えにくい印象です。4弦ではプレベの象徴でもある「ナット幅42mm」というやや幅広のネックですが、5弦では「XJ-1T」と同じ「ナット幅47mm」に設定されています。
XP-1Tを…
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“Spud Magic” by Toshi Yanagi
「もっとベーシストを映してくれ!」と言いたくなる動画ですが、姿ではなく「野太い低音で主張してこそのプレベ弾き」と考えるならば、むしろこれが美しい姿なのかも。
ソウル/ファンクの分野で知る人ぞ知る名手、チャック・レイニー氏愛用のPJベースは、プレシジョンベースタイプ「XP-1T」にJタイプのピックアップを追加しつつ、4弦ペグに「Dチューナー」を設けた高機能モデルです。Xoticベースの中で唯一、ゴールドパーツを採用した高級感ある意匠もポイントです。
Peg
「チャック・レイニーって誰?」っていう人も、一番良い時代のスティーリー・ダンで弾いてたと聞けば、それ以上の説明は不要でしょう。決して派手なプレイヤーではありませんが、かといって地味でもない、巧さのちょうど良さが絶妙です。
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