サンダーキャット

【本名】スティーヴン・ブルーナー
【生年月日】1984年10月19日
【出身地】アメリカ カルフォルニア
【使用ベース】 : Ibanez Artcore、Ibanez BTB、Fender Precision Bass
【所属バンド】 : Suicidal Tendencies

biography

スイサイダル・テンデンシーズ加入

メタリカに加入するためにスイサイダル・テンデンシーズを脱退したロバート・トゥルジロ(Ba)の後任として加入したのが、このサンダーキャットことスティーヴン・ブルーナー。加入時の年齢はわずか16歳。この年齢であの凄腕ベーシストであるロバート・トゥルジロの後釜を努めるというのだから、おそろしく早熟な天才である。


Suicidal Tendencies — You Can’t Bring Me Down (Live at Virgin Oil Co.)
それもそのはずサンダーキャットは音楽系一家に育った言わばサラブレッド。ダイアナ・ロスのバック・ミュージシャンとしてドラムを叩いていたロナルド・ブルーナー・シニアを父親に持ち、母親もフルートなどを演奏するミュージシャンだと言う。兄のロナルド・ブルーナー・ジュニアはマーカス・ミラー(!)やスタンリー・クラーク(!!)と言った超一流アーティストのボトムを支えるドラマーである。

その環境の中で育まれた感性を表現するテクニックを磨き続けたサンダーキャットはスイサイダル・テンデンシーズを離れた後はソロ・アーティストとして精力的に活動、フライング・ロータスの主催するイベント「ブレインフィーダー」の常連として出演するなどクラブ・ミュージックへも接近している。
ソロ・ワークでは自身でヴォーカルも努め、ソウルフルな歌声を聴かせている。

またレッチリのフリーがサンダーキャットを絶賛しているようにミュージャンの間でも評価が高く、その類い稀なるセンスのおかげでセッションワークも多い。前述したフライング・ロータスやジョン・レジェンド、スヌープ・ドッグなど、シャンルの垣根を超えた客演が多いことも彼の幅広い音楽性を物語っている。


Thundercat – MmmHmm (Live in LA)

ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・アポカリプス~アポカリプス

ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・アポカリプスザ・ゴールデン・エイジ・オブ・アポカリプス

11年にリリースされたサンダーキャットとしての1stアルバム「ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・アポカリプス」。冒頭わずか23秒のイントロダクション・トラック「Hooooooo」のベースを聴くだけで、ベーシストならワクワクしてしまうグルーヴがこの作品に詰まっているであろうことを予感出来るだろう。
作品全体を通して生楽器とエレクトロニック・ミュージックを絶妙なバランスで融合させたサウンドで、70年代フュージョンを現代の機材と彼自身のアイデアとスキルでアップデートしたような作風になっている。
全編に渡ってサンダーキャットの類い稀なるテクニックを活かしたベースが満載となっており、「For Love I come」でのジャコ・パストリアスを彷彿とさせる高速パッセージや、「Mystery Machine」でのハーモニクスを多用した美しいメロディなど、コピーするにはなかなかハードルが高い楽曲が揃っているが、一度はチャレンジしてみたいフレーズが揃っている。
この作品がフライング・ロータスのレーベル「ブレインフィーダー」からリリースされたこともあり、クラブ系のリスナーからも一気に注目される存在となっていく。

アポカリプスアポカリプス

13年に2ndアルバムとなる「アポカリプス」をリリース。こちらも同じくブレインフィーダーからのリリースで、エレクトロニックとの融合を試みたコズミック・ジャズ。歌モノの曲では素晴らしい歌伴を聴かせつつ、全編に渡って凄まじいフレージングが滝のように流れ続ける傑作である。

プレイスタイル

サンダーキャットのプレイの特徴は、その多彩さだろう。これぞベースといったグルーヴィーなプレイ、エフェクターを使いシンセベースをシミュレートしたプレイ、2フィンガーによる超絶な早弾き、まるでギターのようなコードプレイ、ジャコを彷彿とさせるハーモニクスなど、現代のエレキベースのアプローチとして考えうるほとんどを習得している。彼はベースの演奏に関して「自分のハートに従うだけ」と答えているが、まさにハートに従って貪欲に色々なプレイを取り入れた結果、現在のスタイルに行き着いたと考えられる。さらに、これらを既成概念にとらわれることなく自由に組み合わせることにより、唯一無二の個性を確立している。

メインベースであるIbanez TCB1006-ALMなど、サンダーキャットは6弦ベースをプレイすることが多いが、これも彼の自由かつ多彩なプレイを支えるためだ。6弦ベースは通常のベースと比較し音域が広いため当然プレイの幅も広がる。さらに、最高音弦であるHi-C弦はかなり細いため、その音色はブライトになりコード弾きの際にクリアな響きが得られる。これはコード弾きを多用する彼のプレイスタイルに必要不可欠な要素になっている。またベースをかなり高い位置に構え、ハイフレットでの演奏性を高めていることも特徴的だ。


Thundercat – Them Changes – Later… with Jools Holland – BBC Two
イギリスBBCの音楽番組でのライブパフォーマンス。シンセベースを模した音色によるグルーヴィーなベースラインの合間に時折入る、超ハイスピードなフィルフレーズが印象的だ。

日本のサブカルチャーに傾倒していることで有名なサンダーキャットだが、影響を受けたベースプレイヤーとしても、アンソニー・ジャクソンなどの他に桜井哲夫の名前を挙げている。特にスラッププレイに関して大きな影響を受けたようだ。

使用機材

Ibanez TCB1006-ALM シグネイチャーモデル「Ibanez TCB1006-ALM」

使用頻度が高いベースは Ibanez Artcore シリーズ。Ibanez BTBシリーズも所有しており、こちらはスイサイダル・テンデンシーズで使われている。Artcore、BTBともに6弦ベースである。その他にはフェンダー・プレシジョン・ベースや MTD なども使用している。
2017年にはアイバニーズからシグネイチャーモデル「TCB1006-ALM」をリリース。オリジナル・シェイプのホロウボディに、マグネティック/ピエゾ・ピックアップを搭載。MIDI端子を搭載した規格外なモデルです。

Ibanez TCB1006-ALMを…
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アンプはSWR、Aguilarなどを使用。エフェクターは、MXR EVH Phase 90Electro Harmonix Small Clone、 Fulltone のクライド・デラックス・ワウ・ペダルなどがライヴで使用されている。

名盤:アポカリプス

1stである「ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・アポカリプス」に比べてエレクトロニック色が強くなった印象だが、その基盤にあるのは紛れもなくサンダーキャットのベース。「seven」における2フィンガーで弾ききっているとは思えないフレージングや、「Lotus And The Jondy」でのベース・ソロなどこちらもベーシスト悶絶必至のテクニック満載。
そしてそのフレーズもテクニックのみならず曲に必須の要素として成立しており、あくまでサンダーキャットの音楽を表現するための手段として選ばれたフレージングとなっているところがサンダーキャットの音楽的な懐の深さを物語っている。


Thundercat – Evangelion

ちなみにサンダーキャットは大のアニメ好きであり、アニメからインスピレーションを受けることもあるようで「Evangelion」という曲も収録されており、ダークでありながら美しいメロディが紡がれていく名曲となっている。こちらも必聴。