Suicidal Tendencies — You Can’t Bring Me Down (Live at Virgin Oil Co.)
それもそのはずサンダーキャットは音楽系一家に育った言わばサラブレッド。ダイアナ・ロスのバック・ミュージシャンとしてドラムを叩いていたロナルド・ブルーナー・シニアを父親に持ち、母親もフルートなどを演奏するミュージシャンだと言う。兄のロナルド・ブルーナー・ジュニアはマーカス・ミラー(!)やスタンリー・クラーク(!!)と言った超一流アーティストのボトムを支えるドラマーである。
11年にリリースされたサンダーキャットとしての1stアルバム「ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・アポカリプス」。冒頭わずか23秒のイントロダクション・トラック「Hooooooo」のベースを聴くだけで、ベーシストならワクワクしてしまうグルーヴがこの作品に詰まっているであろうことを予感出来るだろう。
作品全体を通して生楽器とエレクトロニック・ミュージックを絶妙なバランスで融合させたサウンドで、70年代フュージョンを現代の機材と彼自身のアイデアとスキルでアップデートしたような作風になっている。
全編に渡ってサンダーキャットの類い稀なるテクニックを活かしたベースが満載となっており、「For Love I come」でのジャコ・パストリアスを彷彿とさせる高速パッセージや、「Mystery Machine」でのハーモニクスを多用した美しいメロディなど、コピーするにはなかなかハードルが高い楽曲が揃っているが、一度はチャレンジしてみたいフレーズが揃っている。
この作品がフライング・ロータスのレーベル「ブレインフィーダー」からリリースされたこともあり、クラブ系のリスナーからも一気に注目される存在となっていく。
1stである「ザ・ゴールデン・エイジ・オブ・アポカリプス」に比べてエレクトロニック色が強くなった印象だが、その基盤にあるのは紛れもなくサンダーキャットのベース。「seven」における2フィンガーで弾ききっているとは思えないフレージングや、「Lotus And The Jondy」でのベース・ソロなどこちらもベーシスト悶絶必至のテクニック満載。
そしてそのフレーズもテクニックのみならず曲に必須の要素として成立しており、あくまでサンダーキャットの音楽を表現するための手段として選ばれたフレージングとなっているところがサンダーキャットの音楽的な懐の深さを物語っている。