基本的にベースの弾き方は、ギターと同じように利き腕でピッキング、逆の手でフレットを押さえることで音を出します。今回はそのピッキングについて解説していきます。厳密にはプレーするスタイルやプレーヤーそれぞれに弾き方があり、「どれが正しいか」という判断はできない、逆にいえば様々なプレーヤーが行っているそのどれもが「正しい奏法」といえます。ここでは、代表的な奏法を紹介していきます。厳密にはプレーするスタイルやプレーヤーそれぞれに弾き方がありますが、大まかには
といった分類に分けられます。元々指弾きはJazzのウッドベースのピチカート奏法(弦を指ではじく方法)から発展した奏法であり、他の奏法と比べても歴史の長いものです。指弾きはアタック音(音の立ち上がり)は丸く、さらにニュアンスが付けやすいため、ファンク、ソウル、ポップス、Jazzなど幅広い分野で使われています。
対してピック弾きは、指弾きに比べる発音のアタック(音の立ち上がり部分)が他の奏法と比べると鋭く、大きな音が出ますので、ロックやヘヴィメタルなどの重たいビートを出す場合に多く用いられます。
注意したいのは、必ずしも上記の分け方が正しいとは限らないということです。
例えばヘヴィメタル界でもアイアン・メイデンのスティーブ・ハリスなどをはじめ指弾きでヘヴィなビートを出すプレーヤーはたくさんいます。
逆にJazzべーシストのスティーブ・スワロウやセッションべーシストのアンソニー・ジャクソンなど、ピック弾きでも多彩なニュアンスを付けながら、独特の音色を持つべーシストもいます。
そのため、一つの奏法にこだわらずいろんな奏法を試しながら、自分のプレーしたいスタイルに合った奏法を身に着けるといいでしょう。
指引きの基本的な奏法が、「ツーフィンガー奏法」と呼ばれるもので人差し指と中指を用い、交互に指で弦をはじく奏法です。基本的には親指で手の位置をボディに固定し、2本の指を交互に動かして弦をはじいていきます。当然、人差し指と中指では、指への力の入れやすさも違いますので、弾く際にはどちらの指ではじいても均一の音量になることを心がける必要があります。
後述しますが、親指をどこに固定するかは音色にも影響します。一般的にはピックアップの上部に親指を引っ掛けることが一般的ですが、ピックアップ位置ではかなわない、ネック側での場合には、専用のフィンガーレストを取り付ける方法、あるいは一番低い弦を弾かない場合に引っ掛ける方法、または引っ掛けずにボディに直接指を置く方法などがあります。
親指をピックアップに乗せる
弦をはじく指のフォームによっても、出音は変わります。一般的なものは、2本の指を伸ばし弦を叩くようにはじく奏法です。基本的なベースの奏法で、いわゆる「ベースらしい」タイトな音が出ます。
対してフォークギターのように指を曲げ、引っ掛けるようにはじく奏法があります。どちらかというとギターの音色に近い音になり、音圧も変わりますが、弦の移動がしやすくなり、ギター奏法のようにトリッキーな奏法がやりやすくなります。
基本的にはエレキギターを弾く要領と同じです。但しエレキベースは、エレキギターに比べ弦の張力が強いため、ピックを持つ際には若干力の入れ加減に気を付ける必要があります。以下で2種類の弾き方を紹介します。
ピックを2本の指で持ちます。安定したフォームが作れるため、しっかりしたベースラインを引き出すことができます。但し、握り部分が完全に固定されるため、ピッキングのニュアンスをコントロールするのが若干難しくなります。
ピックを2本指で握るフォーム1、ピックを2本指で握るフォーム2
指をほぼ伸ばした状態で、3本の指にてつまむようにピックを握ります。ピッキングのニュアンスは付けやすくなりますが、安定度は落ちるため、2本指での持ち方に比べると若干音量は下がります。
ピックを3本指でつまむフォーム1、ピックを3本指でつまむフォーム2
ピックで弾く弾き方は、ダウンピッキングのみで弾く方法、あるいはギターのように上下でピッキングをするオルタネイトピッキングがあります。ダウンピッキングのみで弾くと、粒のそろった音を出しやすくなりますが、速いテンポの曲には向きません。
オルタネイトピッキングは逆にスピードに対応しやすくなりますが、ダウン、アップぴキングそれぞれで音の粒をそろえるために、ある程度の練習を要します。また、この奏法はアップから弾き始めるか、あるいはダウンから弾き始めるかで、指弾きと同じようにラインのノリが変わってきます。この弾き方も、どちらからでも始められるよう練習しましょう。
ロックやポップスでは、エレキベースの最もポピュラーな奏法としては指弾きやピック弾きが最も多く行われていますが、近年ではその他の奏法も頻繁に見られます。ここではその一部を紹介しましょう。
ファンクべーシスト、ラリー・グラハムが編み出したと呼ばれる奏法。その大元はドラムレスのセッションバンドにて、ベースがビート感を補うことを考えた上で生まれた奏法といわれています。
基本的には
を交互に繰り返すことにより、よりリズミカルなベースラインを作ることができます。大まかには親指で叩く低音側をドラムのバスドラム、人差し指ではじく高音側をスネアなどの上モノとしてラインを構成します。
元々ハードロックギタリストのエディ・ヴァン・へイレンが発祥といわれる奏法で、今やロックギターではスタンダードな奏法の一つですが、超絶テクニックを持つべーシスト、ビリー・シーンなどをはじめ、最近ではベースでもテクニカルなメロディ、ソロをプレーされる際に頻繁に使用されことがあります。基本的には右手で指板上を叩く、という奏法ですが、左手と右手の動きをうまく合わせることで、スピード感のある印象的なフレーズをプレーすることができます。
タッピング奏法
指弾きの応用奏法になりますが、これには2本指の応用スタイルと、フォークギターの3フィンガー奏法に似た応用スタイルの2種類があります。
前者は、2本指のフォームに1本の指を追加することで、2本指では実現できない高速フレーズを弾く際に使用します。
3フィンガー奏法1
対して後者は、有名なコメディグループのザ・ドリフターズのメンバーだったいかりや長介氏が、かつてバンドをやっていたときにプレーしていたスタイルから、俗に「いかりや長介奏法」と呼ばれることもあります。単一のベースラインというよりは、ギターのアルペジオ奏法のような、コード感を出したり、ブリッジミュートでリズミカルなフレーズをプレーしたりする場合などに使われます。
3フィンガー奏法2
どの奏法にも共通しますが、弦をはじく位置をブリッジ側にするか、あるいはネック側にするかで出音は大きく変わってきます。ブリッジ側でピッキングすれば、シャープで硬い音になり、重いビート感やファンキーなリズム感を出しやすくなります。逆にネック側で弾くと、甘く太い音になるため、メロディアスなラインやソロフレーズなどでニュアンスを出すのに適した音が出ます。はじく位置も決まった場所はなく、テクニカルなべーシストであればその使い分けも多様です。自分の楽器でいろんな音を出して、好みの音を探してみましょう。
意外に気が付かないポイントではありますが、基本的に「ベースは重い楽器」ですので、抱えていると気が付かないうちに猫背気味になることもあります。そのため、できるだけ背筋を伸ばすことを意識し、可能であれば時々鏡を見てチェックするのもいいでしょう。また、ストラップの長さ、ベースの位置は見た目もそうですが、弾きやすさに影響してきます。
左よりスタンダードな位置のスタンス、ストラップが短い:ベースが高い位置のスタンス、ストラップが長い:ベースが低い位置のスタンス
特にストラップを長くし、低い位置で構える場合には、右手のみならず左手のフォームにも影響してきます。不自然なフォームで構えると、腱鞘炎などの怪我をする場合もありますので、絶対に控えてください。
ピッキングの悪い例:低い位置でのピック弾き:
無理に手首が曲がるフォームとなるため、赤丸の手首の曲げた部分に負担が掛かる
基本的には先述のように、音をそろえて弾くことを心がけるのが基本ですが、厳密には完全にそろえるのは難しいところです。しかし逆にそれがベースラインの上にノリを作る要素にもなります。一般的には人差し指の方が力が強いため、人差し指から弾き始めれば前ノリ(オンビート)のラインに、逆にすれば後ノリ(オフビート)のラインにというように使い分けも出来ます。どちらからでも弾きはじめられるように練習しましょう。
先述もしましたが、どんな弾き方でも、まずは出音をコントロールすることが重要になりますので、最初は弦をピッキングする毎に均一な音を出すことを心がけてください。様々なニュアンス付けは、それが出来た上でのプレーになります。あきらめずにコツコツと弾き続けることが重要になります。
撮影モデル:MAI(Disqualia)
協力:ESP
撮影:ヨコマキミヨ
ベースの売れ筋を…