YAMAHA SLB200
アップライトは「直立」という意味で、アップライトベースという呼び名は、楽器を直立に構えて演奏するベース、つまりウッドベースの別名として使われていました。が、近年では、ウッドベースと比較してボディが小型化され、さらにピックアップ等が搭載されたいわゆる「エレクトリック・アップライトベース」が一般的になってきており、このエレクトリック・アップライトベースを指して「アップライトベース」と呼ぶことも多くなってきています。そこで当記事でもこれらの楽器を「アップライトベース」として、その特徴や魅了などに迫っていきます。
高橋ゲタ夫(Bs)、大儀見 元(Per)セッション
ベースは高橋ゲタ夫。日本を代表するラテンベーシストです。こちらの動画で弾かれているのがベイビーベースです。プラスティックで出来た小ぶりのボディや、なんといっても独特のアタック感が特徴的ですね。
世界初のアップライトベースがいつ作られたかは定かではありませんが、1960年代にはアンペグ社から「ベイビーベース」と呼ばれるアップライトベースが作られています。このベイビーベースは独特のアタック感と短めのサスティーンが特徴で、ラテン音楽などのジャンルを中心に当時から現代に至るまで使われ続けています。
しかしカテゴリーとしてのアップライトベースが知れ渡ってきたのは、ベイビーベースの誕生よりもかなり後の1990年台後半~2000年代辺りでしょう。このころにジャズの要素をもったポップスやアコースティックな音楽が流行し、それに呼応して様々なメーカでアップライトベースが作られ始めました。そして現在ではロック系など多様なジャンルに積極的に使われる楽器になってきています。
エレクトリック・アップライトベースの特徴を、ウッドベースと比較することによって炙り出してみましょう。
見た目からもわかるように、アップライトベースはウッドベースのボディをコンパクトにした、もしくはボディ自体を無くした構造になっています。さらに、収納時には楽器本体をいくつかのパーツに分けるモデルもあり、ウッドベースと比較すると運搬の面で有利になります。またスケール(弦長)はウッドベースと同等のものが多く、この場合には弦もウッドベースのものが流用されます。ほぼ全てのモデルがフレットレスですが、ネックの側面にポジションマークの付いたモデルも多いです。
Chris Minh Doky live at Namm 2012
ベースはクリス・ミン・ドーキー。アップライトベースをメイン楽器とする珍しいプレイヤーのひとりです。YAMAHAのSLB-200が彼のトレードマークとなっています。ちなみに、終盤まで見ていただくと気づくかも知れませんが、この演奏のドラムは生ドラムではなくmidiパッドを指で叩いて演奏されています
アップライトベースでは、アンプ等を一切通さない生音の状態でも音は出ますが、大きなボディを持つウッドベースと比較すると当然音質・音量ともに劣ります。基本的にはエレキベースと同様アンプを通して初めて成立する楽器と捉えたほうがいいでしょう。ただ、自宅での練習程度ならアンプなしでもできるモデルもあります。
逆に、アンプを通してある程度以上の音量を鳴らす場合、アップライトベースのほうが有利になってきます。ウッドベースを大音量でハウリングさせずに鳴らすためには、低音を削るなどの音作りが必要になり、ベースらしい太い音質を得ることが難しくなるためです。ボディが小さくハウリングに強いアップライトベースであれば、低音を削ることなく太い音質のまま音量を稼ぐことが可能です。
前述のようにアップライトベースはウッドベースと同様、楽器を直立に構えて演奏楽器です。そのためアップライトベースの演奏に必要な奏法・テクニックは、エレキベースではなくウッドベースのものが用いられることが多いです。ウッドベースに特有のアルコ奏法(弓奏)が可能なモデルもあります。
ウッドベースはエレキベースに比べ遥かに長い歴史を持つ楽器で、エチュードも確立されているので、それを用いて練習するのもいいのではないでしょうか。
「ウッドベースも弾くけど自宅での練習が難しいのでアップライトを」
「まずはアップライトを手に入れて後々ウッドベースも」
などの理由でアップライトベースの購入を検討している方も多いのではないでしょうか。
このようにウッドベースとの両立を前提でアップライトベースを選ぶ場合、注意して欲しいことがあります。それは、「ウッドベースと弾き心地の極力近いアップライトベースを選ぶ」ということです。前項で「アップライトベースにはウッドベースの奏法を用いる」と書いたので、弾き心地も同じと思うかも入れませんが、モデルによってはかなり違った弾き心地になっているものもあります。具体的には以下のような点を確認してみましょう。 なお、これらはあくまでウッドベースと近い演奏製を得るために確認すべき点であり、アップライトベースという楽器としての優劣とは直接関係しません。
ウッドベースの場合、楽器の右肩の部分とプレーヤーの左腰の辺りが当たるように構えます。楽器の重量バランスがいいので、これだけでかなり安定して構えることができるんです。アップライトベースでは同じような構えをしたときに、楽器が倒れたり回転しそうになるもあります。
また、このように構えたときの、体とネックの距離感も重要になってきます。
ウッドベースのネックの太さは個体ごとでまちまちですが、アップライトベースにはウッドベースと比較してかなり細いネックになっているものもあります。
ウッドベースの指板は、ハイポジション(位置的に下のポジション)にいくにつれ、ボディからせり出してくるような角度で取り付けられています。また、指板面のR(曲がり具合)もエレキベースのようなほぼ平面ではなく、はっきりとカーブを描いた形状になっています。アップライトベースの場合、指板の角度が垂直に近いものや、指板面が平面に近くなっているものもあります。
ウッドベースの場合、ネックとボディの接合位置が音程を把握するのに重要な役割を果たします。具体的には、接合部に左手親指が当たった時の人差し指の位置が、エレキでいう7フレットもしくは8フレット辺りになります。ウッドベースを意識して作られたアップライトベースでは同様の位置感覚が使えます。
以上4点がすべてウッドベースと近くなっており、実際ウッドベースプレイヤーにもよく弾かれているメーカーとして「YAMAHA」や「alter ego」などが挙げられます。ウッドベースとの両立を目指す方は検討してみてください。
主にこれから楽器を始める方を対象に、お勧めのアップライトベースを価格帯ごとに紹介していきます。
特筆すべきはやはりコストパフォーマンスでしょう。他メーカーのアップライトベースは安いものでも10万円前後ですが、こちらのモデルは5万円を切る価格で手に入れることができます。ヘッドフォン出力端子や外部機器の入力端子も付いており、自宅での練習にも向いています。
hallstatt WBSE-850を…
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warwickのハイコストパフォーマンスシリーズ「rock bass」のアップライトベースです。ドイツ製のtriumphモデルをベースに作られています。かなりコンパクトなボディなので運搬性も高いです。
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こちらのモデルは、ウッドベースや多くのアップライトベースとは違い、3脚のような脚が付いており、楽器本体のみで自立できる構造になっています。これによりエレキベース等とのよりスピーディーな持ち替えが可能となります。
アップライトベースの先駆的なシリーズ、aria SWBシリーズのベースです。こちらのモデルはボディがコンパクトで軽量なのが特徴です。マグネティック・ピエゾの2種類のピックアップ、2バンドのイコライザーが搭載されており、幅広いサウンドを作り出すことができます。
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東京スカパラダイスオーケストラ / めくれたオレンジ
ベースは川上つよし。AriaのSWB-βが使われています。アップライトベースはスカやラテンなどの南米のリズムと非常によくマッチします
前述Deanと同様自立式のアップライトベースです。指弾きと弓弾き、それぞれに適した音色をスイッチにより瞬時に切り替えることができます。他モデルに多いネック側面ではなく、指板面にポジションマークが埋め込まれており、より容易に正確なピッチを得ることができます。
LANDSCAPEは「オーガニックな楽器の製作」という開発コンセプトをもったブランドです。このモデルは見た目からは想像できないアコースティックな音が特徴です。オリジナルのマグネティックピックアップとフィッシュマン社のピエゾピックアップが搭載されており、これらはバランサーにより調整が可能です。
LANDSCAPE Swing Bass Standardを…
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エレキベースのように横に構えての演奏も可能、スケールもエレキベースと同じ34インチスケール、
専用アダプターによる充電可能なアクティブサーサーキットなど変わりダネのアップライトベースです。といっても肝心の音は本格的なアップライトサウンドとなっています。WAV4 Dbと同様指弾きと弓弾きの切り替えスイッチも搭載されています。
NS Design Omni Bassを…
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Manu Katché & Tony Levin – Live
ベースはトニー・レヴィン。エレキベースやアップライトベースの他に、スティックと呼ばれるベースラインとコードやメロディを同時に演奏できる楽器などもプレイするマルチプレイヤーです。この動画を見るとわかるように、ウッドベースに比べステージングの自由度が高いのもアップライトベースの特徴のひとつです。
この価格帯になると、ウッドベースの弾き心地を追求したモデルや、そうでないものでもアコースティック色の強いナチュラルな音色のモデルが手に入ります。
ウッドベースとほぼ変わらない弾き心地で演奏することができます。ボディは見た目はコンパクトですが、独自のホロウ(中空)構造になっているため、自然な鳴りが得られます。同シリーズからは指板や電気系統などによりクオリティーの高いパーツを使用したSLB200LTD、よりウッドベースに近い弾き心地のSLB100もラインナップされています。
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アクティブのエレキベースで有名なAtelier Zのアップライトベース。ウッドベースをややスリムにしたような外観からも想像できるように、アコースティック楽器としての鳴りが追及されています。ピックアップも、ナチュラルなサウンドでウッドベースにも多用されるrealistのピエゾピックアップが採用されています。