《フレットなど要らぬ…》フレットレスベース特集

エレキベースにはフレットと呼ばれる金属のパーツが指板に打ち付けてあり、これに弦を押し当てることによって音程を変化させています。これにより、初心者でも容易に正確な音程で演奏することができます。しかし、このフレットをあえて取り去り、ウッドベースと同じような平面の指板を持つ「フレットレス」と呼ばれるベースも存在します。そこで当記事では、この「フレットレスベース」の特徴や魅力について迫っていきます。


Japan-Quiet Life
ベースはミック・カーン。ロック系のフレットレスベーシストとして有名です。独特なフレーズ感のベースラインが特徴的です。この演奏ではフレットレスならではのグリッサンド音が随所に聴かれますね。

フレットレスベースの歴史

1966年にアンペグ社から「AUB-1( 愛称はスクロールベース)」というフレットレスベースが発表さています。これが世界初のフレットレスベースかは定かではありませんが、黎明期のモデルの1つであることは間違えないでしょう。
そして1970年代中盤にジャコ・パストリアスが登場し自ら改造した楽器により革新的な演奏を繰り広げたことによって、フレットレスベースがポピュラーな楽器として知れ渡るようになってきました。彼は、ピックガードを外したサンバースト塗装のジャズベースを愛用していましたが、現在でもフレットレスのジャズベースでは、これと同じような「ジャコスタイル」になっているモデルが多数見られます。このことからも彼がフレットレスベースという楽器に及ぼした影響の大きさがうかがえます。

80年代には多弦ベースの発展とともに、フレットレスでも多弦の楽器が多く見られるようになってきました。
その後、現在に至るまでジャズやフュージョンを中心に様々なジャンルに使われ続けています。


Weather Report-Elegant People(Live At Montreux 1976)
ジャコ・パストリアスが初のソロアルバムを発表した1976年の映像です。このころから1987年に永眠するまでの10年あまりの期間に、まさにベースの歴史を塗り替えるような革新的なプレイを繰り広げました。

フレットレスベースのメリット・デメリット

独特の音色が得られる

フレットの目印があるフレットレスベース Fender Jaco Pastorius Jazz Bass
フレット間隔を示すガイドラインが敷かれているがフレット自体は存在しない

まずはなんといってもエレキベースとウッドベースの中間のような独特の音色でしょう。通常のエレキベースは、金属であるフレットに弦を押し当てて音を出すため、その音色も金属的なブライトなものになります。一方フレットレスでは、指と指板に弦を押し当てるので、通常のベースに比べ柔らかめの音色となります。
半音ごとに打たれたフレットがないため、半音以下のどんな音程も自由に出せることもフレットレスのメリットといえるでしょう。とくにスライドを絡めたニュアンス付け等は通常のベースとは比較にならないほど多彩なものとなります。またバイオリンやチェロなどによく使われる、ローリングビブラートと呼ばれるビブラートをフレットレスベースにも用いることができ、特にメロディを演奏する際に効果的です。

音程が不安定になりやすい

フレット目印がないフレットレスベース AntiqueNoel ATB-560FL
フレットの間隔を示す線が存在しない(ポジションマークのみ)。正しい音程で弾くには相当の鍛錬が必要

フレットがないことにより音程が不安定になりやすいことが、やはりフレットレスの最大のデメリットでしょう。特にラインのまったく入っていない指板の楽器では、正しい音程で演奏するには相当な耳の鍛錬が必要となります。ライン入りの指板の場合、そのライン上を押えることによりある程度正しい音程を得ることが可能ですが、これもあくまで目安程度にとどめ、最終的には自らの耳で音程を判断する必要があります。

またスラップ奏法に向かないこともデメリットのひとつとして挙げられます。スラップが不可能というわけではないのですが、弦とフレットが当たる独特な金属音は、フレットのない楽器では当然得られません。そして弦と指板が直接当たることになるため、指板の痛みを早める原因となるため、スラップ奏法を積極的に取り入れるフレットレスプレイヤーは多くはありません。


Alain Caron/Frank Gambale/Damien Shmitt “Pole Position” at Musikmesse 2011
ベースはアライン・キャロン。カナダのスーパーテクニシャンベーシストです。フレットレスだけではなくフレットのあるベースでのスラップのテクニックも驚異的です。F Bass製の彼のシグネチャーモデルであるACというモデルを使用しています。

フレットレスベースへの改造

通常のフレットのあるベースをフレットレスへ改造することも可能です。前述のようにジャコ・パストリアスは、ジャズベースからフレットを取り去り、さらに指板をエポキシ樹脂でコーティングするという改造を自ら施しました。が、やはり工房に持ち込みプロの手に委ねるのが一般的でしょう。フレットを取り去り、その跡を木材等で穴埋めすれば見かけ上は完成となりますが、さらにナット・ブリッジ・指板面の調整の工程が必要となります。フレットレスでは指板面がフレット代わりになるため、その調整はシビアなものとなります。樹脂による指板のコーティングはしないこともありますが、すると音が若干ブライトになり、磨耗に強くなります。

価格帯別お勧めのフレットレスベース

本体実売価格~¥50,000

squier by fender vintage modified jazz bass Fretless

squier by fender vintage modified jazz bass Fretless

ルックスや仕様など、ジャコのベースをモデルにしたsquireのフレットレスベースです。メイプル製のネックは若干薄めに作られており、スムーズなプレイが可能となります。指板はエボノールと呼ばれる樹脂でできており、ラインも入っているため音程の面も安心です。

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Antique noel ATB-560 FL

Antique noel ATB-560 FL

この価格帯ながら2バンドのアクティブサーキットが搭載されています。ボディのトップ材にはオバンコールが採用されており、エキゾチックな木目が印象的です。同仕様の5弦モデルであるATB-580 FLも同価格帯にラインナップされています。

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本体実売価格¥50,000~¥100,000

fender standard jazz bass fretless

fender standard jazz bass fretless

ジャズベースの本家fender社のフレットレスベースです。アルダーのボディ、ローズウッドの指板など、そのモデル名から連想できる通りのスタンダードな仕様となっています。電気回路の入ったキャビティ部分はノイズ対策のシールド処理が施されています。

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sire revolution V5 FL

新興ブランドsireのジャズベースタイプのフレットレスベースです。ボディ材はアルダーとアッシュ、
指板はローズウッドとメイプル、さらには4弦と5弦など様々な仕様が選択できます。3バンドのアクティブサーキットが搭載されています。

Ibanez bass work shop series SRH500 F

トップはスプルース、ボトムはマホガニーという組み合わせのセミホロウボディ、ブリッジに搭載されたIbanezオリジナルのピエゾピックアップなどにより、ウッドベースのようなアコースティックなサウンドが生み出されます。同価格帯に5弦モデルのSRH505 Fもラインアップされています。

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本体実売価格¥100,000~¥150,000

fender classic ’60s jazz bass fretless

Japan Exclusive Jazz Bass Fretless

日本の工場で生産される「japan exclusive」シリーズの ’60s jazz bassのフレットレスモデルです。フレットレスであることのほかにも、ボディ材がバスウッドからアルダーに変更されています。ピックガードが外されたジャコスタイルになっていますが、パーツとして付属はしているため、好みにより取り付けることも可能です。

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EDWARDS E-JB-128R/RE Fretless

ピックガードレスのサンバーストボディというジャコスタイルのフレットレスジャズベースです。さらに「レリック加工」と呼ばれる、塗装のはがれ等の使い込まれた状態を再現する加工が施されており、新品ながらヴィンテージ楽器の風合いを醸し出していいます。セイモアダンカン製ピックアップを採用するなど、見た目だけでなくサウンドも本格的です。

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Ibanez bass work shop series SRAS7 ASHULA DEB

Ibanez SRAS7

フレットレスと通常のフレットありのネックを併せ持つ珍しいベースです。弦は7弦あり、そのうちの3弦がフレットレス部分のネックに対応しており、残りの4弦はフレットありの部分に対応しています。チューニングはフレットレス部分がA-D-G、フレットありの部分がE-A-D-Gとなっています。フレットレス部分の指板を1段高くするなどの配慮により、それぞれの部分を違和感なく使い分けることができます。

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本体実売価格¥150,000~¥200,000

fender american professional jazz bass fretless

american professional jazz bass fretless

american professionalはフェンダーの人気シリーズamerican standard(通称アメスタ)の後継機種として2017年に発表されたシリーズです。アルダーボディ・メイプルネックなど基本的にはスタンダードな作りですが、新たに開発されたV-modピックアップの搭載、弦の裏通しも可能なHiMassビンテージブリッジの採用、ネックの強度を確保するグラファイトロッドの内蔵など現代的なニーズにも対応した作りになっています。

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Bacchus Handmade series Woodline DX4-FL

Bacchusの最上位シリーズである Handmade seriesのフレットレスモデルです。ボディにはアッシュ、ネックにはメイプル、指板にはエボニーがそれぞれ採用されています。トーンツマミを持ち上げることで、2つのピックアップを直列に配列する「ターボスイッチ」がオンになり、ハムバッカーピックアップのようなパワフルなサウンドを得ることができます。

TUNE TWB-4 standard Hyb-Ⅱ PD/Maple EFM

細身のネックや、低くセッティングされた弦高など、プレイアビリティに優れたフレットレスベースです。フロント・リアそれぞれのピックアップをシリーズ・シングル・パラレルに切り替えのできる3wayスイッチが搭載されています。さらに3バンドのアクティブサーキットも搭載されており、他に類を見ない多彩な音色が得られます。

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CARVIN AC40 Fretless

アコースティックベースタイプのフレットレスベースです。フレイムコア材によるボディが目を引きます。 ピックアップには、アコースティックギターのピックアップとしても評価の高い「L.R. Baggs」社のものが採用されています。

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Cell Quai-今沢カゲロウ/QUAGERO IMAZAWA
ベースは今沢カゲロウ。ベースニンジャの愛称で世界的に活躍するプレーヤーです。この動画でも行われているような、ルーパー等を用いたソロベースパフォーマンスがよく知られています。また普通はあまりやられないフレットレスでのスラッププレイも、彼の演奏では頻繁に見られます。

本体実売価格¥200,000~

Crews Maniac Sound JACKSON5

Crews Maniac Sound JACKSON5

発表から10年以上のロングセラーを続けるフレットレスベースのスタンダードモデルです。ボディ側に大きくせり出した指板が見かけ上の大きな特徴となっています。この指板は音域を広げるためではなく、この上でピッキングすることにより弦と指板の当たるウッドベースのようなアタック音を出す役割をしています。

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fender Jaco Pastorius tribute jazz bass

Jaco Pastorius Jazz Bass

そのモデル名から連想できるように、フレットレスのパイオニアであるジャコの愛機「bass of doom」を限りなく忠実に再現したモデルです。ジャコの担当テクニシャンの協力の元、ボディの塗装のはがれやネックの黒ずみ、さらには金属パーツのくすみまでがフェンダー独自のレリック加工により再現されています。

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