ベースをはじめとする弦楽器において一番大切なパーツはなんでしょう?その名の通りで、やはり「弦」ではないでしょうか。いくらいい楽器があっても、これがないと音が出ませんからね。そして重要なだけに種類も多く、どれを使うのか、いつ変えるのか、悩んでいる方も多いと思います。そこでこの「弦」について、種類・交換の仕方など書いてみようと思います。
ベースの弦は「芯線」と呼ばれるピアノ線のような細い金属線に、「巻き線」と呼ばれる別の金属を巻きつける構造になっています。これらの長さ、太さ、材質、形状等によって様々な種類の弦が作り出されています。ちなみにエレキギターの弦は低音の3本(4~6弦)はベースの弦と同じ構造になっており、高音の3本(1~3弦)はプレーン弦といわれる、巻き線の巻かれない金属線の弦になっています。
ギター弦の巻き方/交換方法 – エレキギター博士
弦の物理的な特性について簡単に触れておきます。まず弦は重さが重いほど、音が低くなります。低いチューニングの弦ほど太くなっているのは重さを稼ぐためです。つまり、太いほど音が低くなるともいえますね。さらに弦の振動する長さが長いほど、音が低くなります。そして弦の張力(テンション)も緩いほど、音が低くなります。
言い方を変えれば、長さは同じで太さの違う弦を同じチューニングにする場合、太い弦の方がテンションがきつくなり、細い弦のほうがは緩くなります。同様に、太さは同じで長さの違う弦を同じチューニングにする場合、長い弦のほうがテンションがきつくなり、短い弦のほうが緩くなります。
ちなみにこのテンションは、1本の弦に付き15~20kg。4本合計すると60~80kgにもなります。これだけの力で弦がネックを引っ張っているんです。
ベースの弦には長さが数種類あり、持っている楽器に合う長さの弦を選ぶ必要があります。ちなみにここでいう弦の長さとは、ナットからブリッジまでの長さ(開放で弾いた時に振動している部分の長さ)の事を指し、この長さのことをスケール(弦長)と呼び、インチで表示されることが多いです。後述のようにメーカーによって呼び方が違ったり、共用の弦があったりするので弦を選ぶ際には注意しましょう。自分の楽器のスケールがはっきりわかれば間違えも減るので、わからないという方はメジャー等を使ってチェックしてみましょう。
ベースでは最も一般的なスケールです。特に4弦ベースはこのスケールの楽器がほとんどで、店頭に売られている弦もこのスケールに対応したものが多いです。
多弦ベースによく使われるスケールです。緩くなりがちな低音弦のテンションを、スケールを長くすることにより少しでも稼ぐためです。エクストラロングスケールと呼ばれたりすることもあります。特に35インチの場合はロングスケールと共用で使える弦もあります。
ネックが短いため演奏性は上がりますが、テンションも緩めになり音のハリはやや劣ります。
弦の太さのことをゲージと呼びます。こちらもスケールと同じようにインチで表示されることがほとんどです。太い弦ほどテンションがきつく音も太めになり、細い弦ほどテンションが緩く音も細くなります。テンションが緩いほど演奏性が高いといわれることが多いですが、これは好みによると思います。ちなみに最も一般的といわれているのが、
1弦から 45-65-80-100
という表示(実際の太さは0.045インチ~0.1インチ)のゲージなので、迷っている場合はこの太さから試してみてください。
ベースの弦は金属性のものがほとんどです。後述のように金属以外の素材を使ったものもありますが、その場合にも芯線は金属になっています。この理由は「金属性の弦でないとエレキベースは音が出ないから」です。簡単に説明すると、弦の振動をピックアップに仕込まれた磁石が感知し、それが電気信号になり最終的にアンプから音として再生されます。つまり磁石に反応する素材(=金属)であることが必要なんです。ちなみ磁石への反応のしやすさを磁性と呼びます。
ベース弦としてもっともポピュラーな素材です。音は程よくブライトで芯があり、値段も比較的安価です。
ギラギラしたブライトな音色が特徴で、アクティブベースやスラップ奏法と好愛称です。硬い素材のためテンション感がきつくなり、手触りもジャリジャリした感じになります。
ステンレスと似た特性の素材です。
銅と錫(すず)の合金で、アコースティックギターの弦によく用いられる素材です。アコースティックに使われる位なので生音はいいのですが、磁性が高くないためエレキベースやエレキギターにはあまり使われません。
ベース弦としては最近用いられるようになった新素材です。定番のニッケルより高い磁性が特徴です。
スチールの芯線にナイロンが巻きつけられた弦です。テンション感が緩く、ウッドベースのような短めサスティーン(音の伸び)の「ボン」という丸い音が特徴です。
この他にもニッケルとステンレスの合金など様々な素材がありますが、定番のニッケルが全体の60~70%、さらにステンレスも加えた2種類で90%以上を占めているのではないでしょうか。迷ったらまずはニッケル素材の弦を使用してみるのをお勧めします。
丸い断面の巻き線を巻いた弦で、表面はザラザラした手触りになります。明るい音が特徴です。通常のエレキベースには最も多く使われるタイプです。
テープ上の平らな巻き線を巻いた弦で、表面はつるつるした手触りになります。高音成分の少ない、暗めの音が特徴で、表面に凹凸がなく指板を傷付けにくいのも関連して、フレットレスに用いられることが多いです。同じゲージのラウンドワウンド弦と比べると、テンションがきつくなる傾向にあります。
ラウンドワウンドの表面を加工(研磨やプレス)して平らにした弦で、ラウンドワウンドとフラットワウンドの中間的なキャラクターを持ちます。
この他にもヘッド側がフラットワウンド、ボディ側がラウンドワウンドになっているハーフ&ハーフなどの特殊な弦もあります。
ラウンドワウンドの弦の表面を特殊な素材でコーティングした弦で、これにより、劣化の原因となる汗や汚れから弦が保護され、寿命が長くなります。またコーティングにより、音のブライトも多少失われますが、これもこの弦の特徴となっているともいえます。
ブリッジ側の数cmのみ細くなっている弦です。これはサドルに切られた溝への弦の食い込みをよくするためにされた加工です。Low-B弦(5弦、6弦ベースの最低音弦)は、この加工がされることが特に多いです。同じ部分のみ芯線が剥き出しになっている弦もあります。
蛍光塗料等で着色された弦です。目立ちます。音への影響はほぼありませんが、手触りには多少の影響があるようです。
「弦ってどのくらいで換えればいいんですか?」これはよくある質問なのですが、音の好みによってまちまちで正解はないといっていいでしょう。プロのベーシストも弦交換のペースはそれぞれで、それこそ1日どころかリハーサルと本番の間にも弦を張り替える人もいれば、切れるまでは絶対に張り替えないという人もいます。
ただ、ベースを手に入れてからまだ一度も弦を張り替えたことがないという方は、試しに一度張り替えてみるといいのではないでしょうか?古い弦と新しい弦のサウンドの違いがわかると思います。ちなみに新しい弦は高音成分の多い明るい音で、徐々に高音が出なくなり、落ち着いた音になっていきます。
また、「ベースの弦って切れることはあるんですか?」という疑問も多くありますが、これは、もちろん100%とは言い切れませんがめったにないと思っていいでしょう。ごく普通のベーシストであれば弦の交換頻度は半年に一度程度であり、ステージで切れるといったこともまずありません。ただ念のため予備のベース弦は1セット、ケースに入れておくと良いでしょう。
ベースはアンソニー・ジャクソン。「ベース弦の寿命は数時間」という考え方のようで、ツアーには数百セットの弦を持っていくそうです。といってもそれほど新しい弦と聞いてイメージするようなブライトな音色ではなく、むしろどっしりとした音なのが興味深いです。
ベースはウィル・リー。こちらは新品のラウンドワウンド弦らしいブライトな音色です。時折聴こえる、弦とフレットの当たる「カチッ」という音が気持ちいいですね。特に6:20あたりからのスラップを交えたベースソロは新品の弦ならではのサウンドです。
まずはもともと張ってあった古い弦を外します。もちろん最後まで緩め切ってから外してもいいですが、ある程度緩めたらニッパー等で切ってしまっても大丈夫です。ただこの場合、切った弦の先やニッパーでベース本体を傷つけないよう注意しましょう。
ニッパー等で弦を切る場合、必ずある程度緩めてからにしましょう。
通し方はブリッジの種類により異なります。古い弦を張ってる状態で確認しておくといいでしょう。
このあたりから通すことが多いですが、ボディの裏から通すものなどもあります。各自の楽器で確認してみてください。
1~4弦、それぞれに対応するポスト(弦が巻かれる箇所)からさらに8~10cm程度余らせて(この数字はポストの形状、それぞれの好みでかなり変わってきます)弦をカットします。この余った部分がポストへ巻かれます。短く切りすぎてしまうとポストへの巻き数が減ってしまい、また長すぎると巻いた弦が2重になってしまい、どちらも不安定なチューニング等の原因となってしまいます。
弦の長さによってはカットしなくていい場合もあります。いろいろ試してみましょう。
ベースの場合、ポストの真ん中に穴が開いているタイプがほとんどです。ここへまっすぐ弦を挿し込み、さらに穴の入り口の箇所で弦を折り曲げます。
ペグを回して弦を巻いていきます。このときペグを回す方向に注意しましょう。手順1で弦を緩めた時とは逆の方向に巻いていきます。またペグを巻いている際、弦へある程度の張力が掛かっているときれいに巻けます。右手で弦を引っ張りながら左手でペグを回すといいでしょう。
画像の下方向(ブリッジ方向)に引っ張りながら弦を巻いていくとたるみが出にくいです。が、あまり力を入れすぎるとポストから弦が抜けてしまうので注意です。
どんなに丁寧に張られた弦でも、最初はチューニングが安定しません。一度音程を合わせたら12フレット付近を軽く引っ張ってみましょう。そして再度チューニングを確認すると、若干低くなるはずです。そこで再度正しい音程に合わせ、12フレット付近を引っ張る。この作業を数回繰り返すとチューニングが安定してきます。
巻いた弦が重なったりしていないかもチェックしましょう。
以上が弦交換の手順です。まだ弦の交換をしたことのない方には難しく感じるかも知れませんが、慣れれば15分程度でできる作業です。何度か失敗しても積極的に慣れていくのをお勧めします。といってもベース弦って安いものではないので極力失敗は避けたいですよね?そこで、最初は弦を1本ずつ交換するのをお勧めします。つまり手順1の段階ですべての弦を外すのではなく、1本だけ外し、その弦だけで手順6のチューニングまでを完了させるんです。このようにして交換すれば、張ってある弦を見本として確認できるので失敗が少なくなります。また前述のようにベース弦のテンションはとても大きいので、ネックにかかっている力を大きく変えずに負担を極力なくすという意味でも、1本づつの交換はお勧めです。もちろん弦交換のついでに楽器の大掃除をしたい時などは一度すべての弦を外してしまったほうがいいでしょう。
また、異なる素材やゲージの弦に張り換えた場合、当然ネックにかかるテンション等も変わってくるので、ネックの再調整が必要になってくる場合も出てきます。張った弦のパッケージ等は捨てないようにして、いま張ってある弦がどんなものなのかわかるようにしていきましょう。
ベースやギターの弦のメーカーとしては最もポピュラーで、あらゆる楽器の弦を製造しています。特にEXL170という型番の弦がベース弦の定番になっており、ほかのメーカーの弦もこれを基準にして語られているといっても過言ではないでしょう。癖のない程よくブライトな音色です。
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ダダリオと双璧をなす弦メーカーで、エレキギター専用の弦を始めて製造したメーカーとして知られています。スーパースリンキーというモデルが定番で、ややきつめのテンションと、特に高音弦の派手な音色が特徴です。寿命は比較的短い印象です。
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カラー弦シリーズ「NEON」でも知られている
マーカス・ミラーのシグネイチャーモデルの弦で知られています。暴れすぎない、品のいいドンシャリサウンドといったイメージです。
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幅広いジャンルのベーシストに愛用されています。ステンレス弦らしいブライトな音色とジャリジャリした手触りが特徴です。
エレキベースの黎明期から弦製造に携わっている老舗のハンドメイド弦メーカーです。落ち着いたアコースティックな音色が特徴です。
コーティング弦の代表的なメーカーです。通常の弦の張りたての状態よりややおとなしめの音色が劣化せずに長期間キープされるイメージです。コーティングにより手触りも独特なものになり、音色や特性も相まって、好みがはっきり分かれる印象です。
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どの弦を選ぶのか、いつ換えるのか、やはりいろいろ試してみるのが一番だと思います。例えば低音弦にはニッケルの暗めの音の弦を張りっぱなしにして、高音弦にはステンレス弦を張って頻繁に交換、とかもうまくいけば面白いかもしれません。当記事を参考にしていろいろやってみてください。