今回は、楽器のセッティングの際にこだわる方も多い「弦高」についてです。弦高が高い場合・低い場合にはそれぞれ演奏性や音にどのような影響があるのか、調整の仕方など紹介していきます。
弦高とは?
一般的に弦高は、弦を押さえていない状態でのフレットの上部から弦の下部までの距離のことをいいます。おもに12フレットで測ります。標準的な高さは4弦側で2.5~3mm、1弦側で2mm程度といわれています。弦高の測定は、「端から目盛の打たれた定規」があれば簡単にできます。
12フレットで測っている様子。このベースの4弦の弦高は、だいたい1.5mmであることがわかる。
弦高を測るポイントは
- 楽器を寝かさずに弾くときと同じ向きにすること
- 正しいチューニングにすること
です。これらが違うとネックに掛かる力が変わり、弦高も変化してきますので、測定の際は注意しましょう。
弦高が低い場合・高い場合のメリット・デメリット
弦高が低い場合のメリット
弦高が低いと弦とフレットの距離が近くなり、弦自体の張力も下がるので、必要な力は少なくなります。これによりいつものフレーズが楽に弾けるようになったり、早いフレーズも弾けるようになります。
弦高が低い場合のデメリット
「ビビり」といわれる、弦とフレットの接触するフレットノイズが出やすくなります。この音は程よく入れば生々しい感じにもなり、必ずしも悪い音というわけではないですが、弦高が低すぎて常にビビっているような状態は、やはり弾いていて気になるのではないかと思います。
弦高が高い場合のメリット
フレットノイズの少ない音になります。また弦の張力も上がるので、ハリのある音色になります。
弦高が低い場合のデメリット
弦とフレットの距離が遠くなり、弦の張力も上がるので、押えるのに力が必要になります。また開放弦のチューニングが合っていても、フレットを押えたときの音程が、少し高くなることもあります。弦高が低い場合と違い音自体に影響が出にくいので、初心者の方の中にはかなり高い弦高の楽器をそのまま使ってしまっている方も見られます。
弦の高さと音楽性との関係は?
弦高が低めのセッティングに向いているのは、やはりフュージョンやプログレなどテクニカルなジャンルでしょう。また、ギターやドラムの分厚いサウンドでフレットノイズの目立ちにくいハードロックやメタルなどもこのセッティングがむいていると言えます。
一方弦高が高めなセッティングは、小編成のアコースティックなフォークやポップス、シンプルなロック等に適しています。
これらはもちろん弾き方や音の好みなどで変わってくるので一概にはいえませんが、それぞれのセッティングでよく演奏されるのはこのようなジャンルと言えるでしょう。
弦高の調整の仕方
六角レンチを用いる場合
各弦のサドル部分にあるイモネジを六角レンチで回すことにより、弦高を調整することができます。時計回りに回すと弦高が上がり、反時計回りに回すと下がります。1つのサドルには2つのイモネジが付いているので、それぞれ同じだけ回すようにしましょう。また、1~4弦それぞれの弦の上下量も揃えてあげると、今までの弾き心地と大きく変わってしまうことも起こりにくくなります。
マイナスドライバーを用いる場合
古いフェンダーのベースやそれを模したモデルでは、イモネジではなくマイナスドライバーを用いるネジが付いているものもありますが、こちらも方法は同じです。
弦高調整の際の注意点
弦高調整をする際の注意点は2つ。
まずはネックを正常な状態なのを確認してから調整しましょう。ネックが正常な状態でないと、例えば弦高を下げたときに音のつまりなどが出てくる可能性があります。ネックの状態を確認するには、左手で1フレット、右手でその楽器の最終フレットをそれぞれ押えます。その状態で12フレット上でフレットの頂点と弦に隙間があるか否か確認しましょう。このときのポイントは弦高を測る場合と同じく楽器を寝かさずに弾くときと同じ向きにすることと、正しいチューニングにすることです。
0・5mm程度のわずかな隙間があれば正常な状態、それ以上の大きな隙間があれば順反り、隙間なく密着していれば逆反りが疑われます。このような状態の場合ネックの調整が必要です。慣れれば自分でできますが、ネックは弦楽器の中でも一番デリケートな部分なので、慣れない場合は楽器屋さんやリペアショップに相談に行くのをお勧めします。
2つめに、弦高を変えるときは一度弦を少し緩めるようにしましょう。そして調整し終わったらチューニングをして弾き心地や音を確認、再度調整が必要ならばまた弦を緩める。という繰り返しです。面倒なようですが、慣れればそれほど大変な作業ではないですよ。
弦高はどんなときに変わる?
調整をしなくても、弦高が変わったように感じられることはありませんか?これは実はネックによるものが多くあります。木でできたネックは想像以上に温度や湿度の影響を受けやすくく、この影響によりネックが順反り状態になると弦高が上がったように感じ、逆反り状態になると弦高が下がったように感じられます。
弦高調整の仕方の項で「ネックを正常な状態にしてから弦高調整をする」と書いたのと矛盾しますが、ネックの多少の変化は、弦高調整によって対応するのもアリです。前述のようにネックはデリケートなので、頻繁なネックの調整はそれだけで楽器にダメージを与えることになりまsす。特に季節の変わり目の時期などはネックの状態も安定しないことがあるので、この時期は弦高を変えてしのぎ、気候が安定してからネックを調整する等の方法をとるといいかもしれません。
突き詰めれば0.1mm単位のシビアなものとなる弦高調整ですが、作業自体は比較的行いやすいのではないでしょうか。本文で書いたような方法で慎重にやれば、だれでもできる調整だと思うのでぜひ挑戦してみてください。
ギターの弦高を調整する – エレキギター博士