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トニー・レヴィン(Tony Levin)

トニー・レヴィン(Tony Levin)はアメリカ・マサチューセッツ州ボストン出身のベーシストです。プログレッシブロックバンド「King Crimson(キング・クリムゾン)」のメンバーとして有名ですが、セッションミュージシャンとしても超一流で、ジャンルを超えた様々な作品に参加しています。またスティック(ドラムを演奏する際に用いるスティックとの混同を避けるため、製作者の名と併せてチャップマン・スティックとも呼ばれます)という特殊な楽器の奏者としてもよく知られています。

【使用機材】Musicman Stingray、Chaspman Stickなど
【所属バンド】 King Crimson

biography

1946年6月6日、アメリカ・マサチューセッツ州ボストンで生まれます。現在もジャズミュージシャンとして活動する兄のピート・レヴィンの影響で、幼い頃から音楽に親しみます。10歳でコントラバスを手にし、当初はクラシックのプレーヤーを志していました。が、アメリカの名門音楽学校「イーストマン音楽学校」へ入学し、そこでルームメイトとなったドラマーのスティーブ・ガッドの紹介でジャズ・ポピュラー音楽のフィールドへ転向します。

セッションワーク

ポール・サイモン

1970年前後からプロとしての活動をスタートさせ、ジャズビブラフォン奏者のゲイリー・バートンやフォークシンガーのカーリー・サイモンなど、当時から多彩なジャンルのアーティストのライブ・レコーディングに参加しています。特にサイモン&ガーファンクルのポール・サイモンの1975年のソロアルバム「Still Crazy After All These Years(時の流れに)」は、全米1位を獲得し、グラミー賞も受賞するなど大ヒットしました。なお、この作品には イーストマン音楽学校時代のルームメイトのスティーブ・ガッドも参加しています。


Paul Simon – 50 Ways To Leave Your Lover(Live From Philadelphia)
「Still Crazy After All These Years」に収録されたポール・サイモンの代表曲「恋人と別れる50の方法」のライブ映像です。このライブでもトニーとスティーブ・ガッドのリズム隊になっており、他にもギターのエリック・ゲイル、ピアノのリチャード・ティーなど錚々たる顔ぶれで演奏されています。

ピーター・ガブリエル

また1977年には、ロックバンド「ジェネシス」を脱退しソロ活動を開始したピーター・ガブリエルのファーストアルバム「Peter Gabriel(ピーター・ガブリエル)」へ参加します。この作品にはキング・クリムゾンのリーダーであるロバート・フリップも参加しており、のちのトニーの同バンド加入のきっかけにもなります。また、これ以降現在に至るまで、トニーはピーター・ガブリエルの全てのレコーディングやツアーへ関わるなど、バンドメンバーといっても差し支えないほどの貢献をしています。


Peter Gabriel – Sledgehammer(Live in Athens 1987) ~1080p HD
1986年にリリースされた「Sledgehammer」のライブ映像です。この楽曲は全米1位、全英4位を記録するなど大ヒットし、ピーター・ガブリエルの代表曲の1つとなっています。

キング・クリムゾンにメンバーとして加わる

Discipline Beat Three of a Perfect Pair トニー・レヴィンが参加した80年代クリムゾンのアルバム3枚。左から:DisciplineBeatThree of a Perfect Pair

1981年にはイギリスのプログレッシブロックバンド「キング・クリムゾン」へ加入します。 キング・クリムゾンは1974年に一旦解散をしていたものの、60年代から活動しすでに世界的な人気を得ていたため、トニー・レヴィンの名も一気に広く知れ渡ることとなります。しかし、70年代の音楽性から大きく転換したサウンドはファンに受け入れられず、「Discipline(ディシプリン)」、「Beat(ビート)」、「Three of a Perfect Pair(スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペア)」の3枚のアルバムもヒットに恵まれることはなく、バンドは1984年に再び解散することとなります。


Easy Money
トニー加入以前の1973年のアルバム「Larks’ Tongues in Aspic(太陽と戦慄)」に収録された、キング・クリムゾンを代表する楽曲「Easy Money」の2015年のライブ映像です。キング・クリムゾンは時代により楽器編成も大きく変わるバンドですが、 このころはドラマーが3人在籍しておりトリプルドラム期と呼ばれています。

キング・クリムゾン在籍時もトニーは他のアーティストのセッションへの参加を継続させており、80年代にはジョン・レノンやオノ・ヨーコ、ジェイムス・テイラー、アート・ガーファンクルなどのレコーディングへ参加し、スタジオミュージシャンとしての地位を不動のものとしています。
1994年には再結成した キング・クリムゾンへ再び参加します。このときのバンドの編成はギタリスト2人、ドラマー2人、トニーの他にもベースとスティックに似たウォー・ギターと呼ばれる楽器を演奏するプレイヤーが1人の6人編成で、同じ楽器のプレイヤーが2人ずついることからダブルトリオ期と呼ばれました。この編成では1994年のミニアルバム「VROOOM(ヴルーム)」、1995年のフルアルバム「THRAK(スラック)」、1996年のライブアルバム「THRaKaTTak(スラックアタック)」の3枚をリリースします。が、ピーター・ガブリエルのツアースケジュールの関係などがあり、トニーは1998年にバンドを離脱します。

ソロアルバム

また、トニーはこの頃からソロアルバムの制作にも着手し始め、1995年には、ピーター・ガブリエルのワールドツアーの最中に、世界各国で様々な民族楽器とトニーのデュオ編成を中心に録音したアルバム「World Diary(ワールドダイアリー)」を、1997年にはドラマーのジェリー・マロッタ、リード奏者のスティーブ・ゴーンとの連名で、ニューヨークの洞窟内で録音されたアルバム「From The Caves of the Iron Mountain」をリリースします。


King Crimson Live at the Warfield Theatre
キング・クリムゾンのダブルトリオ編成でのライブ映像です。向かって右側のトニーは、エレキベースの他にも、アップライトベースをアルコ(弓奏)で演奏しているのが確認できます。

2000年代に入っても2000年の「Waters of Eden」、2002年の「Pieces of the Sun」、「Double Espresso」(トニー・レヴィンバンド名義)をリリースするなど積極的なソロ活動を行います。また、2003年には三度キング・クリムゾンへ加入し、現在に至るまでメンバーとして在籍しています。2005年から2007年にかけてトニー・レヴィンバンドととしてヨーロッパ各地を回るツアーを行います。このバンドにはトニーの兄のピート・レヴィンも参加していました。また、2006年には自身のボーカルをフューチャーしたソロアルバム「Resonator」もリリースしています。
2007年には、キング・クリムゾンにも在籍しているドラマーのパット・マステロットとスティック奏者のマイケル・ベルニエとともにアルバム「Stick Man」をリリースします。この作品はトニーのソロ名義で作られましたが、やがてこの3人を中心とした「Stick Men」というユニットに発展してゆき、2010年の「Soup」など4枚のスタジオアルバムを作成し、数度の来日公演も果たしています。


Scarlet Wheel by Stick Men(Tony Levin、Michael Bernier & Pat Mastelotto)
Stick Menのライブ演奏です。この楽曲はStick Menとしてのデビューアルバムとなる「Soup」に収録されています。

2014年には兄のピート・レヴィンらとともに「Levin Brothers」をリリースします。この作品は純粋なジャズ作品といっていい内容になっており、トニーもアップライトベースをプレイしています。


Levin Brothers | Not So Square Dance
レヴィンブラザースのプロモーション映像です。聴いて分かるようにこのユニットの演奏は伝統的なジャズマナーに則ったものとなっています。

プレイスタイル

トニー・レヴィンの演奏スタイルは王道的で、きわめてオードドックスなものといっていいでしょう。が、もちろん個性がない訳ではなく、フロントを引き立てながらも独特のフレージングで自らの色も出し楽曲をよりよいものにしていくという、非常に優れたバランス感覚を持った理想的なセッションミュージシャンといえます。またジャズ畑からキャリアをスタートさせ、フォーク・ポップス・プログレ・ハードロック・フュージョンさらには自身のソロアルバムではワールドミュージックも演奏するなど、音楽性もきわめて幅広く、演奏できないジャンルはないといっても過言ではないでしょう。
エフェクターの使用にも積極的で、リミッターの深めにかかったサスティーンの長めな音色が特徴的です。また、キング・クリムゾンの「sleepless」という楽曲のスラップのリフが驚異的で、ヴァン・ヘイレンもコピーを試みたという逸話もありますが、これが実はディレイをうまく使用し複雑に聴こえるようにしたフレーズであったと、後のインタビューでトニー本人が語っています。


Paul Simon – Late in the Evening
ポール・サイモンの1980年のアルバム「One-Trick Pony(ワン・トリック・ポニー)」に収録されたアフリカンな雰囲気を持った楽曲です。トニーのベースラインがとても印象的で、楽曲に占めるウェイトもとても高くなっています。ポール・サイモンの音楽はフォークやポップスに分類されますが、ワールドミュージック的な要素も多く含まれるため、様々なジャンルに精通したトニーはベーシストとしてまさに適任といえるでしょう。

また、「ファンクフィンガーズ奏法」と呼ばれる特殊な奏法でも知られています。この奏法は「ファンクフィンガー」と呼ばれる、ドラムスティックを短く切断したような木の棒を指に装着し、これで弦を叩き音を出す奏法です。スラップのサムに似たアタック感の強い音が特徴です。Yesのクリス・スクワイアの音色を狙って始めたとも言われています。


Tony Levin Jams at the Ernie Ball Music Man booth at Bass Player Live – Part2
冒頭から「ファンクフィンガーズ奏法」による演奏を見ることができます。2フィンガー奏法に移行してからの、特に終盤でのスライドを多用したメロディアスなフレージングも素晴らしいです。

使用機材

トニーは、エレキベースでは主にスティングレイを使用しています。70年代はフェンダー・プレシジョンベースを弾いていることもあったようですが、80年代に入りキング・クリムゾンへ加入した頃からはスティングレイをメインで使用するようになり、現在は5弦モデルであるスティングレイ5を使用することが多いようです。また、以前ミュージックマンの廉価ブランドとして存在していたOLPというブランドから、トニー・レヴィンシグネイチャーの5弦使用のスティングレイモデルが発売されていましたが、現在は廃盤になっており、OLPというブランド自体もなくなっています。
アップライトベースは、主にNS DESIGN 社のエレクトリックアップライトベースを使用しています。


AMS Exclusive Tony Levin Performance – Bass Solo
トニー・レヴィンによるエレキベースのソロパフォーマンスです。こちらでもスティングレイが使用されています。ボディやネックの見かけ上のダメージの状態から、トニーがかなり以前から所有していた楽器であることが想像できます。

そしてトニーの使用する機材でもっとも特徴的なものといえば、やはりスティックでしょう。このスティックは、1970年代前半にエメット・チャップマンによって作られた電気弦楽器で、ベースやギターのように左手は押弦・右手はピッキングという奏法ではなく、左右両方の手によるタッピングで発音することが特徴の楽器です。これによりベースやギターよりも多くの音数を同時に発音することができ、ベースとギターの役割を1人のプレーヤーでこなす事が可能になります。チューニングや弦の数は様々なバリエーションがありますが、トニーはベース弦6本、メロディ弦6本の合計12本の弦を持ったグランドスティックと呼ばれるモデルを使用しています。


Adrian Belew and Tony Levin Duo – King Crimson’s “Elephant Talk” Iridium Les Paul Monday(9/26/11)
トニーと同時期にキング・クリムゾンへ加入したギタリスト、エイドリアン・ブリューとトニーのデュオ演奏です。トニーがスティックによりベースパートとギターのカッティングのようなパートを同時に演奏しているのが確認できます。この楽曲は、もとはキング・クリムゾンのトニー参加後最初のアルバム「Discipline」に収録されており、トニーのスティック演奏の代表的なものとして知られています。

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