スクエア・プッシャー

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【本名】トーマス・ジェンキンソン
【生年月日】1975年1月17日
【出身地】イングランド
【使用ベース】 : Fender Jazz Bass、Ibanez、Musicman Stingray
【所属バンド】 : Squarepusher

スクエアプッシャーことトーマス・ジェンキンソンはテクノ/ドラムン・ベース系のミュージシャンとして有名だが、同時に超一流のベーシストでもある。緻密にプログラミングされた超高速のブレイクビーツにジャコ・パストリアスを彷彿とさせるテクニカルなベースの生演奏を融合させた斬新なスタイルで旋風を巻き起こした初期の2作「Feed Me Weird Things」「Hard Normal Daddy」は、世界中のエレクトロニック・ミュージック・ファン、そして早耳のベーシスト達を驚愕させ、一躍時代の寵児となった。
デビュー作の冒頭を飾る「Squarepusher Theme」でのチープな機材で練り上げたジャジーなブレイクビーツの上を縦横無尽に弾きまくるベース、2ndに収録の「coopers world」のバック・トラックとのユニゾンから流れ込む高速パッセージは、まさに現代のジャコパスの名が相応しいプレイである。

「Music Is Rotted One Note」では、打ち込みではなく全て生演奏によるスクエアプッシャー流ジャズ・アルバムを制作、その懐の深さとアイデアでリスナー達をいい意味で裏切り、もはやテクノ/ドラムン・ベースというエレクトロニック・ミュージックの範疇で語ることの出来ない存在となっていく。
2004年発表の「Ultravisitor」は高速ドリルン・ベースとジャジーかつメロディアスなベース・プレイを絶妙なバランスで配置し、ベーシストとしてのスクエアプッシャーの存在感を改めて世に知らしめた傑作となった。
2012年の「Ufabulum」は楽曲がよりキャッチーになりつつも攻撃的な側面は失われておらず、ライヴにおけるLEDを多用した斬新なビジュアル・コンセプトと相まってスクエアプッシャーそのものをネクスト・レベルに押し上げる作品となった。

ちなみにその音楽性の多様さゆえ、アルバムによっては生ベースを使用していない時期もあるが、センスのいいシンセベースのラインは生ベースのプレイにおいても非常に参考になり、ベーシスト視点で聴いても退屈することは全くない。

プレイスタイル

スクエアプッシャーの主な奏法としては指弾きとスラップの2つが挙げられる。それぞれの特徴を個別にみていこう。

指弾き

オーソドックスな2フィンガーが中心で、リラックスしたフォームでの演奏はまさに正統派テクニシャンといったところか。また、本人も言及しているように、そのフレージングにはジャコ・パストリアス氏の影響が強く感じられる。またソロベースでのパフォーマンスなどの際には親指も用いた3フィンガー奏法でのプレイも多く見られる。


Shobaleader One performing “Squarepusher Theme”
地球外から来た覆面バンドというコンセプトの、スクエアプッシャーの別プロジェクト「Shobaleader One」のライブ動画。ハーモニクスを織り交ぜつつ16分音符とゴーストノートを多用したスピーディーなベースラインや、2:18あたりからのテクニカルかつメロディアスなソロなど、随所にジャコからの影響が見て取れる。

スラップ

こちらも基本はオーソドックスなフォームでのプレイだが、フレーズによって右手の位置を移動させたり、まるでピックのようなサムの高速アップダウンを見せたり、弦を手のひらで叩いてパーカッシブな音を出すなど様々な奏法を見せる。


Squarepusher – Outlander (Live)
スクエアプッシャーのベースソロパフォーマンス。あまりの高速プレイの上、エフェクトも強くかかっているためどのような奏法でプレイをしているのか細かい部分は特定しづらいが、前半はサムのアップダウン、後半は手のひらで弦を叩くパーカッシブな奏法が中心となっている。

使用機材

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初期はフェンダー・ジャズ・ベースのフレットレスと、Ibanez Roadstar II やミュージックマン・スティングレイ・ベースを使用。現在はルシアーという6弦ベースを使用している。打ち込み機材はAKAI S6000や、BOSS DR-660、ROLAND TR-707など多岐に渡る。

名盤:Solo Electric Bass 1

純粋にベーシストとしてのトーマス・ジェンキンソンのプレイに酔いしれたければ、2009年の「Solo Electric Bass 1」がオススメ。ベース1本で演奏される美しいメロディ、時折織り込まれる速弾き、アルペジオやハーモニクスなどもはやギターかと思ってしまうようなプレイをサラリとこなすスキルの高さは超人レベル。エレクトロ文脈で語られることの多いスクエアプッシャーのベースへの愛情と本気度が伺える1枚であり、ベーシストにとっては畏怖すべきテクニックの宝庫と言える21世紀のベース・バイブル。