ジョン・ポール・ジョーンズ

1946年1月3日生 英ケント州シドカップ出身
ジョン・ポール・ジョーンズは言わずと知れたレッド・ツェッペリンのベーシストである。
1968年、既にヤードバーズのギタリストとしての名声を手に入れていたギタリスト、ジミー・ペイジが新バンドのベーシストとして白羽の矢を立てたのが、当時ドノヴァンやジェフ・ベック、ストーンズとのコラボレートでセッション・マンとして活躍していたジョン・ポール・ジョーンズだった。ロバート・プラント(Vo)とジョン・ボーナム(Dr)、そしてジミー・ペイジという曲者たちをまとめあげるには、既にアレンジャーとしてひっぱりだこになりつつあったジョンを加入させたことは大正解だった。(当初ベーシストとして参加予定だったヤードバーズのクリス・ドレヤの脱退というハプニングもあったわけだが…)
ヤードバーズを引き継ぐかたちで始まったレッド・ツェッペリンは、当初ブルースを基調としたハード・ロック・バンドとしてスタートしたが、ジョンの堅実なベース・プレイ、類い稀なるアレンジのセンス、そしてベースだけでなくキーボード奏者としても一流だったそのテクニックで、急激にその音楽性を広げていく。
そしてツェッペリン解散以降も数々のプロデュースやコラボレートをこなしながら、今もなお現役で活躍中。

【使用ベース】 : Fender Jazz Bass 1961 , Fender – Precision Bass 1951 , Gibson EB-1 , Ibanez – RD300 , Alembic Series II , Pedulla Rapture
【所属バンド】 : Led Zeppelin,Them Crooked Vultures

Biography

レッド・ツェッペリン

 ツェッペリンは1969年にデビュー作「レッド・ツェッペリン」を発表。ここに収録されている「幻惑されて」のベース・ラインは一度聴いたら忘れることの出来ないほどのインパクトで曲を牽引している。また「ユー・シュック・ミー」など、オルガンもプレイしており、後のツェッペリンにおけるサウンド・バラエティの豊富さの要が他ならぬジョンであることを予見させるデビュー作となっている。


Led Zeppelin Dazed and Confused

 そして恐るべき速さで制作され、デビュー作と同じ1969年に発表された「レッド・ツェッペリンⅡ」。「胸いっぱいの愛を」「リヴィング・ラヴィング・メイド」など聴きどころは満載でファンの間でも人気の高い名盤だが、やはりベーシスト的な観点で言えば「レモン・ソング」における縦横無尽なベース・ラインとグルーヴがハイライトではないだろうか。

 その後、ベーシストなら誰もがコピーするであろう必殺のリフを奏でる「移民の歌」収録の「レッド・ツェッペリンⅢ」経て、遂に最高傑作との呼び声高い「レッド・ツェッペリンⅣ」を発表。ここでジョンはアルバムの冒頭を飾る名曲「ブラック・ドッグ」のリフを書いている。ボーナム独特のタイム感とジョンのリフによるグルーヴは、ツェツペリンが誰にも真似の出来ない唯一無二の存在であることを証明している。もちろん「天国への階段」も言わずもがなの名曲。そしてこのアルバムでは鍵盤奏者としての貢献度も高くなり、それと同時のバンドは飛躍的に音楽性の幅を広げていくとことなる。


Led Zeppelin – Black Dog (Live at Madison Square Garden 1973) (Official Video)

 「聖なる館」「フィジカル・グラフティ」というこれまたロック史上に残る名作を発表しつつ、プラントが自動車事故による療養を余儀なくされた期間に制作された「プレゼンス」でハード・ロック路線に回帰、このアルバムに収録された「アキレス最後の戦い」ではボーナムのドラムと渡り合うアグレッシヴで硬質なサウンドによるベース・ラインを10分以上に渡って展開、世界中のベーシスト達を驚嘆させた。アルバム「イン・スルー・ジ・アウトドア」はジョン主導で制作され、キーボードやジョンのアレンジが大幅にフィーチャーされ、ツェッペリンの次なるステップを期待させたが、1980年のボーナムの急死によりツェッペリンはその活動に幕を降ろした。

ディアマンダ・ギャラス

Diamanda Galas「Sporting Life」

ツェッペリン解散後のジョンの活動では「ズーマ」「ザ・サンダーシーフ」などのソロ・ワーク、R.E.Mやバット・ホール・サーファーズのプロデュースといったところが有名だが、意外と知られていないのが、1994年に発表されたアヴァンギャルド系のヴォイス・パフォーマー、ディアマンダ・ギャラスとのコラボレート作品「ザ・スポーティング・ライフ」。このアルバムはディアマンダ・ギャラスwithジョン・ポール・ジョーンズ名義で発表されており、ジョンの本気度が伺える。実際にツェッペリン時代にも引けをとらない(もしくはそれ以上の)ドライヴ感溢れるベース・ラインが楽しめる。「スコートセメ(キル・ミー)」「ドゥー・ユー・ライク・ジス・メン?」におけるラインを聴いていると後にゼム・クルックド・ヴァルチャーズを結成したのも納得、と思えてくる。


Diamanda Galás “Do You Take This Man”

ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ

tcv
Them Crooked Vultures

2009年にフー・ファイターズのデイヴ・グロール(Dr)とクイーン・オブ・ストーン・エイジのジョシュ・オム(G.Vo)と結成、アルバムのみならずライヴも精力的に行い、来日公演も行った。このバンドでのジョンはまさにロック・ベーシスト然としており、激しいリフ&ベース・ラインでバンドを牽引している。

プレイスタイル

ジョン・ポール・ジョーンズは、レッド・ツェッペリン加入以前はセッションミュージシャンとして活動しており、ベーシストしての確かな技術と、様々なジャンルをこなす対応力をすでに会得していた。ハードロックにカテゴライズされることの多いレッド・ツェッペリンだが、その楽曲には多岐にわたるジャンルの要素が含まれており、これにはジョンの卓越した技術と知識が不可欠だったといえるだろう。

プレイスタイルとしては、テクニカルなプレイを見せ付ける派手なタイプではなく。どちらかというと堅実なスタイルといえるだろう。指弾きとピック弾きを楽曲により使い分け、様々なジャンルの要素が入った楽曲に的確なベースラインを提供していく、まさに元セッションミュージシャンならではの職人肌のプレーヤーといえるだろう。その的確なプレイには、ジョン・エントウィッスル、ジャック・ブルース、ポール・マッカートニーなどの同世代のベーシストたちも注目していたといわれている。実際のベースラインでは「レモンソング」や「強き二人の愛(what is and what should never be」などモータウンの影響を感じさせるものが多い。


Led Zeppelin – What Is And What Should Never Be (Official Music Video)
R&B風のメロディの部分と、いかにもロックというメロディの部分と対比が面白い楽曲。R&B風の部分はベースを中心にバッキングがされていて、まさにモータウンというイメージの6thを強調したメロディアスなベースラインが弾かれている。またロック風の部分では開放弦をうまく利用した、ロックの定番リフといえるフレーズになっている。ツェッペリンの楽曲は、この曲のように雰囲気の異なった2つ以上のセクションを組み合わせたものがとても多い。

アレンジ面での貢献も多大で、ツェッペリンの代表曲の代表曲のひとつである「ブラックドッグ」のリフを作ったのはジョンである。また、ジョンはベース以外にもギターやマンドリン、様々な鍵盤楽器を操るマルチプレーヤーとしても知られており、ツェッペリンのレコーディングなどでもこれらの楽曲を演奏している。このことが、本来は4ピースバンドだがその枠に収まらないツェッペリンのサウンドの多彩さに繋がっている。

使用機材

ジョン・ポール・ジョーンズと言えば62年製のフェンダー・ジャズ・ベースがあまりにも有名。このジャズ・ベースとアコースティック361との組み合わせでふくよかで芯のあるトーンで数々の名演を生み出した。ツェッペリン後期にはアレンビックのベースも使用、4弦だけでなく8弦ベースも導入し、サウンドの幅を広げていった。この頃はギャリエン・クルーガーのアンプも愛用していたようである。ツェッペリンが解散した後はヒュー・マンソンのベースを使用する機会が多くなっている。

名盤:聖なる館

 ツェッペリンのアルバムはどれも必聴の名盤揃いだが、ジョンの幅広いベース・プレイを堪能出来るのが「聖なる館」。「永遠の詩」におけるジミー・ペイジのギターと拮抗するハードなプレイ、「クランジ」のファンキーなベース・ライン、「ディジャ・メイク・ハー」でのサステインを抑えたレゲエ風のライン作りなど、ベーシスト的においしいフレーズが満載。ベース以外にもシンセやメロトロンでサウンドに彩りを添えるジョンの存在感が光る傑作。

「コード中心或いはコード分解系のリフはペイジ、ベースライン中心或いは単音系のリフはジョンジー」(本人談)