ソロアルバム:Sunshine of Your Love
ジャック・ブルース(Jack Bruce)、本名ジョン・サイモン・アッシャー・ブルースはスコットランド出身のベーシストです。エリック・クラプトンとのバンド「クリーム」での活動が特に有名です。大音量で音数も多い演奏スタイルが特徴で、現在に至るまでのロックベースの演奏スタイルを築き上げた創始者のひとりとされています。ボーカル、ブルースハープ、チェロ、ウッドベースなどもこなすマルチプレイヤーとしても知られています。
【使用機材】Gibson EB-3、Warwick Thumb bass Jack Bruce Signature
【所属バンド】Cream、Tony Williams Lifetime
1943年5月14日、ラナークシャー群ビショッププリッグスで生まれます。当初はスコットランドの王立音楽院でチェロを学んでいましたが、17歳でロンドンへ移住しここを拠点とした音楽活動を開始します。
1960年代前半頃はブルースハープやベースなどで様々なバンドに参加し、のちに「クリーム」のメンバーとなるエリック・クラプトンやジンジャー・ベイカー、ともに「ライフタイム」へ在籍することになるジョン・マクラフリンともこの頃出会います。
1966年、ドラムのジンジャー・ベイカーがエリック・クラプトンをバンドに誘います。このころジャックとジンジャー・ベイカーは別のバンドでともに活動しており、その関係はすでに良好とは言えないものでした。が、クラプトンは「ジャック・ブルースがベースならば」という条件を出し、べイカーがこれをしぶしぶ受け「クリーム」が誕生しました。ブルースとハードロックを融合させたサウンドと、3人の技巧的な演奏は瞬く間に話題となりました。が、メンバーの強烈な個性のぶつかり合いはやがて衝突を生み、1968年には不仲によりバンドは解散に至ります。わずか2年間の短い活動期間でしたが、「クリームの素晴らしき世界(Wheels of Fire)」等の名盤を生み出し、ジミ・ヘンドリックスとともに60~70年代のロックミュージシャンへ多大な影響を与えました。
https://www.youtube.com/watch?v=EqtcF5iKryc
Jack Bruce-Sunshine Of Your Love(from “Golden Days”)
クリーム解散後の1980年のジャック・ブルースのライブ映像です。演奏されているのはクリームの代表曲「 Sunshine Of Your Love 」です。この曲はクリーム解散後もメンバーそれぞれがよく演奏しています。
クリーム解散後のしばらくの間は、自身名義のアルバムの作成、セッションミュージシャンとしてレコーディングに参加するなどのソロ活動を行っていきます。
自身名義のアルバムとしては、1969年の「ソングフォーアテイラー(Song for a Tailor)」を皮切りに、遺作となった2013年の「シルバー・レイルズ(Silver Rails)」まで20枚以上の作品を発表しています。内容も、自らボーカルを務めるソウル風のものや難解なジャズ作品などバラエティーに富んでおり、ジャックの音楽的引き出しのの多彩さを物語っています。
セッションミュージシャンとしても、リンゴ・スター、フランク・ザッパ、サイモン・フィリップス、ビリー・コブハム・ラリー・コリエル、元ローリングストーンズのミック・テイラーなどそうそうたるミュージシャンと競演しています。中でも当時最先端のジャズドラマーであったトニー・ウィリアムスがジョン・マクラフリンらと結成したバンド「ライフタイム」のアルバム「ターンイットオーバー(Turn it Over)」への参加は特に有名です。
Tony Williams Lifetime Tribute-WildLife
ジャック・ブルース、ヴァ‐ノン・リード、ジョン・メデスキー、シンディ・ブラックマンによって結成された「ライフタイム」のトリビュートバンドのブルーノート東京でのライブ映像です。
1993年にクリームがロックの殿堂入りを果たし、その授賞式において一夜限りの再結成ライブが行われました。その後2005年5月には解散前最後のライブを行ったロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで、10月にはニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでそれぞれ再結成ライブが行われています。この前後もラテン音楽を取り入れた自らのバンドを結成するなど、ソロ活動は精力的に行われています。
2014年10月25日イギリス・サフォークの自宅にて息を引き取ります。
https://www.youtube.com/watch?v=QtWzR5RkB3U
Cream “White room/Crossroad/Badge” Live-2005
ロイヤル・アルバート・ホールでのクリーム再結成ライブの模様です。クリームを代表する3曲が演奏されています。
ルート弾きや一定のパターンを繰り返す一般的なベースラインと違い、常にベースソロのようにアドリブでフレーズを構築していく、いわゆる「リードベース」と呼ばれるスタイルの先駆者の一人です。このスタイルの先駆者としては他にも「ザ・フー」のジョン・エントウィッスル、「ヴァニラファッジ」・「カクタス」・「べック・ボガード&アピス」のティム・ボガードなどが知られています。この2人とジャックの大きな違いは、フレージングにジャズやクラシックの要素が感じられることです。これは10代の頃にチェロを学び、クリーム以前にはジャズバンドにも在籍していたという彼のバックグラウンドから来ているのでしょう。
ジャズからの影響は、クリームの特徴でもあるインタープレイにも表れています。インタープレイとは、お互いに触発しながら即興的に演奏をしていくことで、ジャズの最大の特徴にもなっています。クリームの演奏にもインタープレイが随所に聴かれ、アドリブソロがどんどん盛り上がっていき時には1曲の演奏時間が15分を超えることもありました。
具体的な奏法では、アタックが強くほぼ人差し指のワンフィンガーで弾かれる右手が大きな特徴となっています。ピッキングの位置もネック寄りのことが多く、このあたりに独特の太いサウンドの秘密があるのかもしれません。
Jack Bruce-Life On Earth
1993年に行われたジャックの50歳のバースデイライブの模様です。かなり細かいフレーズでも人差し指のワンフィンガーで弾いてるのが確認できます。ギターソロの部分ではソロの盛り上がりに連れてフレーズを変化させているのも聴けますね。ちなみにギターはゲイリー・ムーア、ドラムはサイモン・フィリップスです。
ジャック・ブルースといえばEB-3、EB-3といえばジャック・ブルースといっても過言ではないくらいのトレードマークとなっているベースです。1961~79年に製造されたギブソン初のソリッドボディのエレキベースで、ジャックは1962年製のものを使用していました。ギブソンのSGシリーズのギターとボディシェイプが同じなためSGベースと呼ばれることもあります。30.5インチという短めのスケールと2つのハムバッキングピックアップの搭載が特徴で、それぞれのピックアップに対応したボリューム・トーンが備えられているので、多彩な音色を得ることができます。中低音域に強い特徴があり、扱いづらいと認識されることも多いベースですが、ジャックは見事に使いこなしています。
晩年にメインで使用していたワーウィックのシグネチャーモデルです。フレッテッドとフレットレスがありますが、主にフレットレスを使用していました。小ぶりのボディシェイプが特徴で、これにより高い演奏性を得ています。ボディはブビンガ、指板はエボニー、ネックはウェンジとブビンガのラミネイト構造がそれぞれ採用されています。ピックアップはセイモアダンカン製で3バンドのアクティブサーキットが搭載されています。
ワーウィックには、このモデルのほかにも「Jack Bruce Cream Reunion ’05」と名づけられた、2005年のクリーム再結成を記念したシグネチャーモデルもあります。こちらはEB-3を模したボディシェイプとなっています。
1968年にリリースされたクリームの3rdアルバム「クリームの素晴らしき世界(Wheels Of Fire)」は60年代ロックを代表する作品として知られています。1枚目がスタジオ録音、2枚目がライブ録音の2枚組になっています。イギリスでは最高位3位、アメリカでは最高位1位を記録し、2枚組アルバムとしては初のプラチナディスクを獲得しています。代表曲「ホワイトルーム」も収録された1枚目ももちろんいいいのですが、クリームの真骨頂を聞くにはやはり2枚目のライブ録音のほうでしょう。特に有名なのはtrack1「クロスロード」で、クラプトンのギターソロをすごい勢いで煽るジャックのベースとベーカーのドラムは必聴です、そしてベース視点で見るとtrack2「spoonful」がさらに興味深い演奏になっています。15分を超える長尺の」演奏になっており、その大半はクラプトンのギターソロで占められているのですが、ジャックがまさにリードベースといった演奏でそこに絡んでいきギターとベースのソロが同時進行しているようにも聴こえます。もちろんベーカーのドラムもパターンらしきものはほとんど叩かず、3人が対等な立場で火花を散らすような演奏を繰り広げています。まさにロックにおけるインタープレイの極致といっていい名演ではないでしょうか。