メタリカの2代目ベーシストであり、バンドの方向性に大きな影響を与えたクリフ・バートン。卓越したテクニックと作曲センスでメタリカにドラマティックな要素を持ち込み、バンドをネクスト・レベルに持ち上げたクリフが24歳という若さでこの世を去っていなければハードロック、ヘヴィメタルの歴史は今と違ったものになっていたかもしれない。
【本名】クリフォード・リー・バートン
【生年月日】1962年2月10日
【出身地】カルフォルニア
【使用ベース】 : Rickenbacker 4001、Aria pro II SB-1000
【所属バンド】 : メタリカ
スラッシュ四天王の一角・メタリカ
スレイヤー、アンスラックス、メガデスと共にスラッシュ・メタル四天王と呼ばれ、世界中のメタル・バンド、そしてメタル・ファンたちから羨望の眼差しを受けていたメタリカ。しかしながら単にスラッシュ・メタルと語れない叙情性はクリフが作曲に関わり始めた2ndアルバム「ライド・ザ・ライトニング」以降で発揮されていく。「ファイト・ファイター・ウィズ・ファイヤー」「クリーピング・デス」といったナンバーを収録したこのアルバムは今でもファンの間で根強い支持を集めている。
スラッシュ・メタルを進化させた男の早すぎる死
Metallica「master of puppets」
86年、メタリカ最高傑作との呼び声も高い「メタル・マスター(マスター・オブ・パペッツ)」を発表。クリフが作曲に参加した「マスター・オブ・パペッツ」におけるブリッジのメランコリックなギターとせめぎ合うようなフレージングや、クリフのベースをフィーチャーしたインスト「オライオン」などベーシストとしても聴きどころ満載の名盤である。
Metallica – Master of puppets (Original Video)
ゴールド・ディスクを獲得し、順風満帆に思えたクリフとメタリカであったが、ツアー中の交通事故によりクリフが他界。スラッシュ・メタルとロックの可能性を押し広げたクリフ・バートンを含む4人のままであったらメタリカはどんな進化を遂げていたのだろうか。そんな想像を膨らませながらクリフのプレイに耳を傾けるのも一興である。
クリフ・バートンの使用機材
クリフと言ってまず思い浮かぶのがRickenbacker 4001。フロント・ピックアップをGinbson EBのハムバッカーに、リアをFender JazzBassのシングルコイルに変更したうえで、更にストラトキャスター用のピックアップもマウントしており、2フィンガー(3フィンガー説もあるが)であの驚異的スピードのスラッシーなリフを弾きまくっていたのである。
Rickenbackerの他にはAria pro IIのSB-1000も愛用。エフェクターにはElectro Harmonix Big muff や Moley製のワウ・ペダル、アンプはAmpegやMesa/Boggieをつないでいたようである。
プレイスタイル
クリフ・バートンのベースは、優れたテクニックと、奔放かつ個性的なプレイが特徴的である。それらのスタイルや、歪んだ音色、ステージでのファッション等から「ベースのジミ・ヘンドリックス」とも呼ばれていた。ロック系のベーシストにしては珍しく、ベースソロを多く演奏し、1stアルバムの「キル・エム・オール」にはソロベースの楽曲「(Anesthesia)Pulling Teeth」も収録されている。
奏法的には、タッピングやスラップなどのテクニックは使わず、オーソドックスな2フィンガー奏法がメインである。が、そのフォームは特徴的で、小指を立てた状態で弦を叩きつけるようにしてアタックの強いピッキングを行っている。また、特に速いフレーズでは薬指も用いた3フィンガーピッキングも行っていたようだ。
クリフはクラシック音楽について学んだこともある。シンプルな楽曲が多い1stアルバムから、2nd・3rdアルバムで曲の構成が複雑化していくバンドサウンドの変化には、クリフのクラシックの知識が大きく影響を与えた。
名盤:メタル・マスター(マスター・オブ・パペッツ)
叙情的なアコースティック・ギターの調べから一転轟音リフへの変貌を遂げる「バッテリー」で幕を開け、「メタル・マスター(マスター・オブ・パペッツ)」へとなだれ込む冒頭の流れはもはや最強。その後もスラッシュ史に残る名曲が続くが、ベーシスト的には前述の「オライオン」がこのアルバムのハイライトだろう。長尺のインストながらアグレッシブさとドラマ性が同居するギター・リフに真っ向勝負で絡み続けるクリフのベースがこれでもかというほど楽しめる。スラッシュ・メタルの金字塔でありつつ、何年経っても色褪せない名盤である。