クリス・ウォルステンホルム(Chris Wolstenholme)

クリス・ウォルステンホルム(Chris Wolstenholme)はイギリス・ヨークシャー州出身のベーシストで、3ピースロックバンド「Muse(ミューズ)」のメンバーです。ミューズは、全世界でのCDの売り上げが1500万枚以上を数え、グラミー賞にも3度ノミネートされるなど世界的な人気を誇っています。

【使用機材】Status Graphite Chris wolstenholme Signature bass、Fender Jazz bass
【所属バンド】 Muse

biography

1978年12月2日、イギリスヨークシャー州ロザラムで生まれます。11歳の時にデヴォン州ティンマスへ移住し、バンドを結成します。当時クリスはドラムを担当していました。同時期に、後のミューズのメンバーとなるギター・ボーカルのマシュー・ベラミーとドラムのドミニク・ハワードは同じ学校で「The Rocket Baby dolls」というバンドを組んでいましたが、程なくして、このバンドのベーシストがバンドを脱退することになります。そこでクリスはベースへ転向し「The Rocket Baby dolls」へ加入します。地元のコンテストで優勝したことをきっかけにバンドでデビューを目指すことを決意し、テーンマスを離れバンド名も「Muse」に改名します。

MUSEデビュー

Showbiz 1stアルバム「Showbiz

ロンドンやマンチェスターを中心としたライブ活動で次第に注目を集めるようになり、1998年にはニューヨークとロサンゼルスでライブを行います。このライブがきっかけで大手レーベルとの契約を果たし、1999年9月には「ストーンローゼス」や「レディオヘッド」を手がけたプロデューサー「ジョン・レッキー」のプロデュースで、デビューアルバム「Showbiz(ショウビズ)」をリリースします。


Muse – Sunburn
デビューアルバム「Showbiz」の1曲目を飾る楽曲です。シングルとしてもリリースされています。

2001年にリリースされた2ndアルバム「Origin of Symmetry(オリジン・オブ・シンメトリー)」では、シンセサイザーの使用やギター・ベースへのエフェクターの多用など、現在に至るまでのサウンドが確立されてきます。続く2003年二リリースされた3rdアルバム「Absolution(アブソルーション)」は全英チャート初登場1位を記録し、ヨーロッパ全土で100万枚・全世界で300万枚を売り上げる大ヒットを収めます。この頃からミューズのサウンドは「エピック・ロック(壮大なロック)」と形容され、世界的な評価を得ることとなり、この後にリリースする全てのアルバムが全英1位を記録します。

世界的なバンドへ


Muse – New Born [Live From Wembley Stadium]
2ndアルバム「Origin of Symmetry」に収録された楽曲の、2007年のウェンブリースタジアムでのライブ映像です。導入部分のピアノサウンドから典型的なバンドサウンドへ変化する対比が印象的です。

翌2004年には、ヨーロッパ最大のロック・フェスティバル「グランストンベリー・フェスティバル」の大トリを務め、この時のバンドのパフォーマンスおよびクリスのベースプレイは、ポール・マッカートニーからも賞賛を受けます。また同じ年のワールドツアー中、クリスは左手首を骨折するトラブルに見舞われます。が、代役のモーガン・ニコルズがベースを担当しツアーは続けられ、クリスもキーボードとコーラスでステージに立ち続けました。


Muse – Ruled By Secrecy(Live)
グランストンベリー・フェスティバルでのライブの模様です。この楽曲は3rdアルバム「Absolution」に収録されています。

2006年には4thアルバム「Black Holes and Revelations(ブラックホールズ・アンド・レヴァレイションズ)」をリリースします。2007年6月には改修されたばかりのロンドンのウェンブリースタジアムでライブを行い、この模様は翌2008年にライブアルバム「HAARP」としてリリースされます。


Muse – Starlight [Live From Wembley Stadium]
4thアルバム「Black Holes and Revelations」に収録された楽曲「Starlight」の、2007のウェンブリースタジアムでのライブの演奏です。この楽曲は2010年に公開された映画「ツーリスト」の主題歌となっています。

セルフプロデュース・アルバム「The Resistance」

Showbiz The Resistance

2009年には、muse初の完全セルフプロデュースアルバム「The Resistance(ザ・レジスタンス)」をリリースします。この作品はバンドとして始めてグラミー賞にノミネートされ、さらに最優秀ロック・アルバム賞を受賞します。同年にはバンド発祥の地ティンマスでの凱旋ライブを開催し、2日間で3万人を動員しました。翌2010年はヨーロッパ各国でのスタジアムツアーや各国のフェスティバルへの出演を行い、日本のフジロックフェスティバルへもヘッドライナーとして出演しています。


Muse – Uprising(Live from LCCC,Manchester 2010)
5thアルバム「The Resistance」の1曲目に収録された楽曲でシングルカットもされています。クリスのベースにはかなり深くエフェクターがかかっており、シンセベースのようにも聴こえます。

2012年には、新曲「サヴァイヴァル」がロンドンオリンピック公式ソングとなり、museのメンバーも聖火リレーに参加します。またこの楽曲が収録された6thアルバム「The 2nd Law(ザ・セカンド・ロウ~熱力学第二法則)」も同年リリースされ、前作に引き続きグラミー賞にノミネートされました。さらに翌2013年には、このアルバムに伴うヨーロッパツアーのライブの模様を収録したライブアルバム「Live at Rome Olympic Stadium(ライブ・アット・ローマ・オリンピック・スタジアム)」をリリースします。


Muse – Madness – Live at Rome Olympic Stadium
6thアルバム「The 2nd Law」に「収録された「Madness」の ローマ・オリンピック・スタジアム出のライブ映像です。この楽曲はグラミー賞のベスト・ロック・ソング部門にノミネートされました。

2015年には。7thアルバム「Drones(ドローンズ)」 をリリースし、初の全米1位を記録します。また3作連続でグラミー賞にノミネートされ、「The Resistance」以来2度目のの最優秀ロック・アルバム賞を受賞しました。

プレイスタイル

クリスのプレイの特徴は、フロントマンのマシュー・ベラミーの奔放なパフォーマンスを安定したプレイで支えながらも、シンプルになり過ぎないメロディアスなフレージングを生み出すバランス感覚にあるのではないでしょうか。この感覚は、ベーシストにも様々な役割の求められる3ピースバンドのベーシストには必要不可欠で、クリスはこれを絶妙なバランスで体現しています。
また、エフェクターの多用による音色の多彩さも特徴に挙げられます。半分以上の曲でファズなどの歪みエフェクターが使用されており、そこからさらに、オートワウやベースシンセを併用して独特な音色を作り出しています。


Muse – Hysteria [Live From Wembley Stadium]
3rdアルバム「Absolution」に収録された「Hysteria」の、2007年のウェンブリースタジアムでのライブ映像です。冒頭から聴けるベースのリフは、エフェクターの使用(おそらくファズとベースシンセ)による独特な音色とメロディアスなフレージングで、クリスの特徴をよく表したラインといえるでしょう。ちなみに、このラインはイギリスの音楽サイトの「史上最高のベースラインTop25」の第1位に選ばれています。

使用機材

クリスは、これまでフェンダー・ジャズベースやrickenbacker4003など様々なベースを弾いてきていますが、現在では 主に「Status Graphite(ステイタス・グラファイト)」というメーカーのシグネチャーモデルを使用しています。

「Status Graphite」は1981年に創業されたベースブランドで、その名の通り、ボディやネックにグラファイトを用いた先鋭的な仕様で知られています。ただ、材全てがグラファイトという訳ではなく、木材の表面にグラファイトを圧着させ覆っているのです。この加工により、グラファイトの剛性を持ちながらも、それのみで構成される楽器よりも重量を軽くすることが可能になっています。
クリスのシグネチャーモデルはボディ材にアルダーが、指板にはフェノールが採用されています。また指板のポジションマークにはLEDライトが仕込まれており、ボディについたスイッチの操作でon/offが可能になっています。ネックは、24フレットで34インチのレギュラースケールとなっています。「Status Graphite」のベースはヘッドレスのものが多いですが、クリスのモデルには、ペグが2:2レイアウトされたペググラファイト製のヘッドが付いています。
オリジナルのアクティブサーキットが搭載されており、コントロールはマスターボリューム、ピックアップバランサーとベース/ミドル/トレブルの3バンドEQとなっています。EQはベースとトレブルはカットとブーストのみですが、ミドルには帯域を指定できるフリケンシーノブと、その帯域をカット/ブーストできるミニスイッチが搭載されており、スラップ向けのドンシャリサウンドや、ミドルを強調したサウンドを瞬時に作り出せます。

エフェクター

エフェクターは、歪み系では「Electro Harmonix Big Muff」や「Boss Bass Overdrive」を、ワウやベースシンセなどのフィルター系では「Digitech Bass Synth Wah」や、「Akai Deep Impact Synth Pedal」を使用することが多いようです。


Muse – Reapers [Live from Cologne]
7thアルバム「Drones」に収録された「Reapers」のライブ映像です。ポジションマークに仕込まれた赤いLEDライトが点灯しているのが確認できます。これをつけると、暗いステージでの視認性が上がるだけではなく、ステージの雰囲気を作る演出効果も非常に高そうです。