ビリー・シーン

【生年月日】1953年3月19日
【出身地】ニューヨーク
【使用ベース】 : YAMAHA Attitude
【所属バンド】 : Mr.Big、タラス、ナイアシン、ザ・ワイナリー・ドッグス

Mr.Bigのベーシストとして知られ、ロック・シーンにおけるテクニカル系ベーシストの代表格として挙げられるのがビリー・シーン。
ポール・ギルバード、スティーヴ・ヴァイ、リッチー・コッツェンといった超絶ギタリストと対等に渡り合う速弾きをはじめとする非凡なテクニックの数々はタラスでのデビューから30年以上を経た今もなおベーシストたちの羨望の的であり続けている。

biography

タラス~デヴィッド・リー・ロス

79年にタラスの1stアルバム「タラス」でデビューしたビリー・シーン。当初から卓越したテクニックでバンドを牽引しつつ3枚のアルバムを発表。その後スラッシャー、トニー・マカパインでの活動の後、ヴァン・ヘイレンを脱退したデヴィッド・リー・ロスのバンドに参加。
ギタリストはスティーヴ・ヴァイであり、ビリーとのコンビで超絶テクを随所に織り交ぜたハード・ロックを展開。アルバム「イート・エム・アンド・スマイル」に収録された「シャイ・ボーイ」はビリーのタラス時代の名曲であり(「タラス・イヤーズ」などに収録)後に後にMr.Bigのライヴ・レパートリーに加わることになる。88年には2nd「スカイスクレイパー」を発表。そしてビリーはいよいよMr.Bigでの活動に身を投じていくこととなる。


Mr. Big – Addicted To That Rush

Mr.Big~黄金時代

テクニカル・ギタリストを数多く発掘したことで知られるシュラプネルのマイク・ヴァーニーを通じて、既にソロ・ヴォーカリストとして実績を積んでいたエリック・マーティンと出会ったビリーは、レーサーXのポール・ギルバート(G)、インペリテリのパット・トーピー(Dr)と共にMr.Bigを結成。
89年にデビュー・アルバム「Mr.Big」でデビュー、良質なハード・ロック・アルバムとして評価された。

その後91年にMr.Bigの人気を決定付ける2ndアルバム「リーン・イントゥ・イット」を発表。アルバム冒頭を飾る「ダディ、ブラザー、ラヴァー、リトル・ボーイ」でのポール・ギルバートとのマキタ製の電気ドリルを使ったドリル奏法でリスナーの度肝を抜いた。また、アコースティック・バラード「トゥ・ビー・ウィズ・ユー」の世界的ヒットによってモンスター・バンドの仲間入りを果たす。

93年に発表された3rd「バンプ・アヘッド」収録の「コロラド・ブルドッグ」では凄まじいユニゾンを披露、ビリーのプレイをコピーするベーシストたちを唸らせた。


Mr. Big – Green Tinted Sixties Mind

バンドとの亀裂

96年にヒット曲「テイク・カヴァー」を含む4th「ヘイ・マン」を発表するが、このアルバムのレコーディング中にビリーとバンドとの間に亀裂が生じることとなる、その後ベスト・アルバム「ビッグ、ビガー、ビッゲスト」を発表後、バンドは活動休止に入る。
99年にはポール・ギルバートが脱退、リッチー・コッツェンを新しいギタリストに迎え、「ゲット・オーヴァー・イット」を発表。
00年に新たなベスト・アルバム「ディープ・カッツ」では既存の曲をリッチー・コッツェンを含む新体制でリメイクするという試みが行われたが、その際にビリーのプレイが削除されるという事件が発生。ビリーとメンバーとの仲はますます溝を深め、6th「アクチュアル・サイズ」リリース直前にビリーはバンドを解雇されてしまう。

その後ビリーを含むメンバーでツアーを行った後、Mr.Bigは解散を決断するが、08年にオリジナル・メンバーによって再結成。現在も活動中である。


Mr. Big – Take Cover (Official Music Video)

ナイアシン&ワイナリー・ドッグス

96年、Mr.Bigの活動と並行してビリーのライフワークとなっていったプロジェクトがナイアシンである。デニス・チェンバース(Dr)、ジョン・ノヴェロ(Key)という実力派ミュージシャンと共に新時代のフュージョンを奏でる、Mr.Bigとは一線を画すサウンドでビリーのアーティストとしての懐の深さを見せつける機会となり、またプレイの幅を広げるきっかけにもなっている。(実際、Mr.Bigでは使うことのなかったスラップをナイアシンでは披露している)

また12年にはMr.Bigのバンド・メイトであるリッチー・コッツェン、ドリーム・シアターのドラマーであるマイク・ポートノイとザ・ワイナリー・ドッグスを結成。13年に発表されたアルバム「ザ・ワイナリー・ドッグス」に伴うツアーとして来日も果たしている。

プレイスタイル

歴代のロックベーシストでもNo1といっていい超絶テクニックを持ち、様々なテクニックを操るビリーだが、その中でも代表的なものを紹介していく。

3フィンガー

ビリーのテクニックの中でも最も知られており代名詞といってもいいのが、3フィンガーピッキングだろう。一般的な2フィンガーでは人差し指・中指を使いピッキングするが、3フィンガーではこれに加え薬指も用いる。指の数が増えるので当然ピッキングのスピードは上がるが、それぞれの指の長さが違うため、音の粒が揃いにくくなるというデメリットも生じてくる。が、ビリーは指を適度に丸めることにより指先の位置を揃え、これを解決させている。特に第二関節を意識的に曲げると、3本の指先が揃いやすいだろう。また、指の先をピックアップの表面に軽く当てるようなイメージでのピッキングも意識しているようだ。これによりピッキングする指が深く入りすぎず、さらには常に同じ深さでのピッキングとなるため、スピーディーで粒の揃った演奏が可能となる。
またベースソロでは、ワンオストロークで複数の弦を一度にピッキングするレイキングや、小指も用いた4フィンガーピッキング、ドリルの先に付けたピックでピッキングするなどの独特のピッキングも見られる。一方、シンプルな8ビートのルート弾きでは人差し指のみのワンフィンガーピッキングも用いられる。これは、より粒の揃った力強い音色を得るためで、ピック弾きの際にダウンのみでピッキングするのと似たようなイメージだろう。

タッピング

最近ではベースにおいても当たり前のテクニックになりつつあるタッピングだが、ビリーのそれは速度・精度ともに高く、テクニカルギタリストのタッピングと遜色ないものとなっている。実際タッピングの名手であるギタリストのスティーヴ・ヴァイやポール・ギルバートとのユニゾン(まったく同じフレーズを演奏すること)でのタッピングフレーズも、ビリーの参加作品の随所に聴くことができる。また、特に両手を用いたタッピングの際、左手がローフレット・右手がハイフレットを担当するのが自然だが、これをあえて逆にして腕を交差させるようなスタイルでのタッピングをすることもある。これはライブでのステージングを意識したもので、パフォーマンスも重視するビリーらしいテクニックといえるだろう。

その他

これらのテクニックの他にも、タッピングハーモニクス・チョーキング・ネックベンディング(ネックをしならせることにより得られるビブラート)など多彩なテクニックを駆使する。一方、テクニカルベーシストの必須テクニックといってもいいスラップに関しては、活動初期にはあまり得意としておらず、「白人ベーシストにスラッピングは必要とされなかった」と語っていた。が、90年代後半ナイアシンを結成した頃からスラップも取り入れるようになってきている。
また、ロックベーシストにしてはかなり高い位置にベースを構えている。一般的に、ベースやギターは高い位置に楽器を構えるほど細かい動きをしやすいといわれており、このフォームからもビリーのテクニックへの強いこだわりがうかがえる。


Guitar Center Sessions: Billy Sheehan – Solo Bass Performance
7分に迫る長さのビリーのベースソロパフォーマンス。冒頭から、3フィンガー・レイキング・両手をクロスさせたタッピングなど、多彩なテクニックを駆使した音の洪水のようなすさまじいプレイを見ることができる。

使用機材

billy-sheehan YAMAHA の Attitude ベース

初期は様々な改造が施されたフェンダー・プレシジョン・ベースを使用。その改造の中でも最も有名なのが、ハイ・フレットの指板部分を削るスキャロップド加工である。イングウェイ・マルムスティーン(Gu)が導入していることで有名なこの加工は、イングウェイのプレイ・スタイルを聴けば分かるとおり、速弾きに効果的な改造であり、ベーシストでありながら超絶な速弾きをプレイするビリーには必要な改造であったと言える。
何本かのメイン・ベースを経てたどり着いたのがビリーの代名詞とも呼べるYAMAHA の Attitude。DiMarzio のピックアップや前述のスキャロップド加工など、ビリーのプレイを120%反映させるベースである。

YAMAHA Attitudeを…
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アンプは長年Ampegを使用していたが、近年ではHartkeを導入。
エフェクターはEBSからビリーのシグネイチャー・モデルである「Billy Sheehan Signature Drive」が発売されている。

名盤:リーン・イントゥ・イット

ビリーの勢いを堪能したいなら、やはりこのアルバムから聴いてほしい。Mr.Bigがブレイクするきっかけとなったアルバムであり、ベースによるドリル奏法、超絶スピードによるユニゾン、メロディアスなタッピングからグルーヴィなプレイまで、ロックにおけるベースの可能性を詰め込んだアルバムである。
特にスリー・フィンガーを多用した高速パッセージを聴かせる「ダディ、ブラザー、ラヴァー、リトル・ボーイ」のプレイは必聴である。

リーン・イントゥ・イットを…