メキシコ・エンセナダ工場で作られるフェンダー・ジャズベース[記事公開日]2015年3月19日
[最終更新日]2020年03月19日

スタンダード・シリーズ

STANDARD JAZZ BASS

Fender STANDARD JAZZ BASS

先述の比較でも登場した、現代の「スタンダード(Standard、標準)」となるジャズベースです。60年代の雰囲気を帯びたベーシックな作りは「これぞジャズベース」と納得させるものであり、かつ現代的な演奏性が付加されています。

ボディカラーと指板の組み合わせで異なる価格が設定されていますが、これは塗料や指板材の原価の差を、価格に公平に反映させた結果だと思われます。普及価格帯モデルなればこそ、シビアな値付けになっているわけです。仕様それぞれの価格は以下のようになります。

ボディカラー 塗装の内容 指板 価格
ブラック 1色の塗りつぶしなので、手間が他よりかからない。 メイプル(パーフェロー指板なし) ¥85,500
ブラウン・サンバースト シースルーブラウンの外側に黒を拭きつける二度塗り。 メイプル ¥90,000
ブラウン・サンバースト 同上↑ パーフェロー ¥92,500
キャンディアップル・レッド ラメが入るぶん、塗料が高い。 パーフェロー(メイプルなし) ¥97,750

表:スタンダード・ジャズベースの仕様と価格(価格は2018/10時点)

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クラシック・シリーズ

ヴィンテージ・スタイルのジャズベースは、60年代の雰囲気を演出する3モデルがリリースされています。いかに60年代ジャズベースが高人気で、かつ定番視されているかが分かりますね。

’60S JAZZ BASS
CLASSIC SERIES ’60S JAZZ BASS LACQUER
ROAD WORN ’60S JAZZ BASS

Fender 60S JAZZ BASS ’60S JAZZ BASS

Fender CLASSIC series 60S JAZZ BASS LACQUER CLASSIC series ’60S JAZZ BASS LACQUER

Fender ROAD WORN 60S JAZZ BASS ROAD WORN ’60S JAZZ BASS

以上の3本は、

  • アルダーボディ、Cシェイプメイプルネック、パーフェロー指板
  • 弦長34インチ、指板25インチ、ナット幅1.5インチ、細く低いフレット
  • アルニコ磁石を使用したヴィンテージ・スタイル・ピックアップ
  • ネックヒール側にトラスロッドが開口

といったところに共通点があります。

木材構成は共通で、ネック仕様はヴィンテージ・スタイル、ピックアップは3モデル共通です。このうち最大の相違点は、塗装の仕様と付属のケースです。

’60S Jazz Bass ’60S ラッカー Road Worn ’60S
ボディ/ネック塗装 ポリエステル/グロスウレタン ボディ/ネックともに、ニトロセルロースラッカーを使用 ボディはラッカー、ネックはウレタン。共にエイジド加工
ボディカラー 3カラーサンバースト ホワイト 3カラーサンバースト、フェスタレッド
付属ケース デラックス・ギグバッグ ツイードケース デラックス・ギグバッグ

表:クラシック・シリーズの相違点

「Road Worn」は塗装面のダメージやパーツの変色/サビまで再現した「Wornフィニッシュ」による貫禄のある外観に大きな特徴があります。「ツイードケース」はツイード(毛織物)で覆われたハードケースです。

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デラックス・シリーズ

DELUXE ACTIVE JAZZ BASS
DELUXE ACTIVE JAZZ BASS V(5弦)

Fender DELUXE ACTIVE JAZZ BASS

3バンドイコライザーを装備した現代的なジャズベース「デラックス・アクティブ・ジャズベース」は、

  • 「モダンC]より若干細身の「C」シェイプのネック
  • 12インチR指板とミディアムジャンボフレット
  • ハイポジションの演奏を助けるヒールカット

という現代的なスタイルでまとめており、5弦モデルもリリースされています。1970年代のイメージがあるためか、トラスロッドはヘッド側に開口しています。

1) ピックアップ

「Dual-Coil Ceramic Noiseless™ Jazz Bass with Nickel-Plated Pole Pieces」

というなかなか長い名前の付けられたピックアップは、

  • Dual-Coil:コイルを二つ重ねた形式。二つ目のコイルでノイズを相殺させる
  • Ceramic:セラミック磁石を使用。現代的なキメの細かいサウンドになる
  • Noiseless:ノイズが出ない
  • Nickel-Plated Pole Pieces:ポールピースがニッケルでメッキされていて、錆びにくい

という設計で、ノイズに強く、キメの細かいサウンドが得られます。

2)操作系

Deluxe Active Jazz Bass:コントロール Deluxe Active Jazz Bass(Surf Pearl)

操作系は4弦、5弦ともに

  • マスターボリューム、パンポット(バランサー)
  • トレブル、ミドル、ベースそれぞれのブースト/カット
  • プリアンプのON/OFFミニスイッチ

となっており、積極的な音づくりができます。プリアンプを切ってパッシブとして使用する時には、ボリュームとパンポットのみの操作になります。

3) ブリッジ

ブリッジには肉厚で頑強な「HiMASS(ハイマス)」ブリッジが採用されています。がっちりとして重量もあるので、弦の振動をしっかり受け止めるとともに、サスティンが伸びます。「American Professional」や「American Elite」に搭載されているブリッジに近いものですが、こちらは「裏通し」セッティングができず、弦は従来の方式(トップロード)で張ることになります。

4) 面構えと木材構成

デラックス・シリーズはフェンダーの伝統にならい、ボディカラーによってボディ材や指板材が決まります。やはりサンバーストならアルダー、ナチュラルならアッシュなんですが、ボディカラーと楽器本体の組み合わせには、なかなか興味をそそられます。

5弦モデル「デラックス・アクティブ・ジャズベースV」は

  • 3カラーサンバースト
  • メイプル指板
  • ドットインレイ

この一本勝負なんですが、4弦モデルの場合、

ボディカラー ボディ材 指板材 インレイ
3カラーサンバースト アルダー メイプル ブラックパーロイド・ドット
オリンピック・ホワイト/サーフ・パール アルダー パーフェロー パーロイド・ドット
ナチュラル アッシュ メイプル(黒いバインディング) 黒いブロックインレイ

表:デラックス・アクティブ・ジャズベースのボディカラーと仕様の関係

というようにナチュラル/アッシュのモデルだけがバインディングありのブロックインレイ、という1970年代のスタイルをふまえた仕様になっています。

Deluxe Active Jazz Bass(Natural)

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プレイヤー・シリーズ

Player Series Jazz Bass(左用あり)
Player Series Jazz Bass Fretless
Player Series Jazz Bass V(5弦)

Fender Player Series Jazz Bass

2018年に発表された「プレイヤー・シリーズ」は、特にベースを始めたばかりの人に向け、早い段階から本物のフェンダー・サウンドに触れられるように価格を圧縮させたラインナップです。価格を抑えたフレットレスと5弦もあるので、始めたばかりの人だけでなく、楽器のバリエーションとして手軽なフレットレスや5弦を手に入れたいという中級者にもお勧めです。

  • 新開発ピックアップ:おそらく若い人を中心に手にすることになるであろうプレイヤー・シリーズのために、ロック向けにちょっと「エッジの立った」サウンドを持つ高出力ピックアップを新開発。
  • 本物の感触:他のフェンダー製品同様の寸法で作られ、ネックは現代的な仕様。
  • 専用ネックプレート:「本物の証明」として、フェンダーの「F」が刻まれたネックプレートを採用。

という点がシリーズ共通の仕様で、価格は「スクワイアの高級機のもうちょい上」あたりまで頑張って下げています。では、このプレイヤー・シリーズは、スタンダード・ジャズベースとどう違うのか、というところに注目してみましょう。

プレイヤー・シリーズとスタンダード・シリーズ仕様比較

PLAYER JAZZ BASS STANDARD JAZZ BASS
価格帯 ¥64,800~¥ 69,300 ¥90,000~¥ 92,500
カラーバリエーション 全7色 全3色
ピックアップ このシリーズ向けに新開発。アルニコV使用・ 「アップグレードがなされた」とフェンダーサイトにて紹介
ブリッジ 標準的かつ現代的なブリッジ 70年代を意識したヴィンテージ・スタイル
ネック塗装 ネック裏はサテン(さらさら)、ヘッド面はグロス(ツヤツヤ) いったん染めてからウレタンを噴いた、サラサラ仕上げ。
指板インレイ ホワイト・ドット パーロイド・ドット

表:Player / Standard ジャズベースの相違点(価格は2018/10時点)

プレイヤー・シリーズの方が、カラーバリエーションは豊富になっています。もっとも大きな違いはピックアップで、プレイヤー・シリーズでは新開発、スタンダード・ジャズベースではグレードアップを果たしています。ブリッジについては、仕様を見る限り「モダン」と「クラシック」というように呼び方を変えていますが、一見して分かるほどの違いがあるわけではありません。

仕様書には現れませんが、やはり木材のグレードに違いはあるようです。スタンダード・ジャズベースのネック材は木目の綺麗なメイプルが、またボディには継ぎ目の無い一枚板が使われていますが、プレイヤー・シリーズで使用される木材はさすがにここまでのものではないようです。ただしだからといって音に影響があるわけではなく、「いかにシビアな耳をもってしても、人間には聞き分けることができない」と言われています。

いっぽう共通点はかなり多くて、

  • アルダーボディ、メイプルネック、メイプルまたはパーフェロー指板という木材構成
  • モダン”C”グリップ、弦長34インチ、指板5インチ、ミディアムジャンボフレット、ナット幅1.5インチ、人工骨製ナット、ヘッド側にトラスロッド開口、といったネック仕様
  • コントロールノブ、ピックガードやペグなど各種パーツ

価格が2万円以上高いスタンダード・ジャズベースと比べても遜色ないベースだと言えるでしょう。


Fender Player Series Jazz Bass Fretless – Demo and Features
「ウマい人ならたいがい持っている」というフレットレス。比較的手軽な価格で、本物のフェンダーが手に入れられます。

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アーティスト・シリーズ

シグネイチャーモデルについては、さすがにフェンダーだけあって超大物ミュージシャンのものがリリースされています。

FLEA JAZZ BASS

Fender FLEA JAZZ BASS

2016年の欧州ツアーでベラルーシに入国した際、メタリカと間違われてサインを求められ、ひとまずメタリカのグッズに自分たちのサインを入れた、という珍事もあったレッチリ(Red Hot Chilli Peppers)の活動を長らく支えているフリー(Flea)氏。近年愛用している1961年製ジャズベースは、何とも太っ腹なファンの方からプレゼントされたのだそうです。

これを再現した「FLEA JAZZ BASS」は、

  • 1960年から1962年までのみ採用された、当時は不人気、現代では激レアのボディカラー「シェルピンク」
  • 1962年後半以降廃止となった操作系、「2連2軸スタックノブ」

という「この年代だからこその特徴」をきちんと再現し、

  • アルダーボディ、メイプルネック、ローズウッド指板
  • ボディ、ネック共にニトロセルロースラッカー塗装、「Road Worn」処理によるエイジド加工
  • 当時の仕様を再現したというCシェイプネック、指板25インチ、小さめフレットのヴィンテージ・スタイル
  • 「ピュア・ヴィンテージ」’64ピックアップ
  • フリー氏のデザインによるネックプレート刻印

という仕様でまとめています。

「ピュア・ヴィンテージ」は当時の材料と製法をそのまま再現した、フェンダー純正のパーツのシリーズです。このシリーズからは、ピックアップだけでなくトーンコンデンサ、ブリッジ、コントロールノブ、ピックガードなど、さまざまな部品がリリースされています。

搭載されている’64ピックアップは、明瞭な低域、押しのある中域、歌うような高域を持ち、この時代のトーンをしっかり再現しています。出力はそれほどでもないので右手のタッチが活きる、ウマい人もしくはウマくなりたい人向けのベースだと言えるでしょう。


Flea Introduces the Fender Signature Flea Bass | Artist Signature Series | Fender
かのフリー氏が恋に落ちてしまったという’61。「この楽器はあまりにも長くベースでいたため、ずいぶん前に木であることを辞めてしまったんだと思う」というコメントは、なんだかわかんないけど哲学的ですね。

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GEDDY LEE JAZZ BASS

Fender GEDDY LEE JAZZ BASS

カナダ発の3ピースロックバンド「ラッシュ(Rush)」は、卓越した演奏技術とサウンドによって「最少編成のロック・オーケストラ」の異名を持っています。このバンドのベース&ボーカル、ゲディ・リー(Geddy Lee)氏のシグネイチャーモデルはフェンダーUSAからもリリースされています。USA版ではブラックのみですが、MEX版のこちらでは3カラーサンバーストも選択できます。

  • アルダーボディ、メイプルネック、メイプル指板、黒いネックバインディングとブロックインレイ
  • とても薄い「Thin”C”」ネックシェイプ、指板5インチ、ミディアムジャンボフレット、という「現代の感覚では非常に弾きやすいネック仕様」
  • 「アメリカン・ヴィンテージ」ピックアップ
  • ゲディ・リーHiMassブリッジ&’70Sヴィンテージ・スタイル・ペグ

といった仕様です。先述した「FLEA JAZZ BASS」がバキバキのヴィンテージ・スタイルだったのに対し、こちらはピックアップこそヴィンテージ寄りながらブリッジとネックに現代的な要素が盛り込まれた、ジャンルを選ばず使用できる使いやすいジャズベースに仕上がっています。

薄いネックは手のサイズに自信がない人にも弾きやすく、また大きめのフレットは弦高を押さえる力を軽減できるため、ラッシュのファンでなくてもあらゆるベーシストにお勧めです。

「アメリカン・ヴィンテージ」はヴィンテージを精緻に再現したギター/ベースのシリーズでしたが、現在ではパーツのシリーズ名として残っています。ブリッジはアメリカン・プロフェッショナルやアメリカン・エリートで採用されている「HiMass」ブリッジに、ゲディ・リー氏の意向を反映させたカスタムモデルです。通常版より金属量が多くてゴツく、強弱表現や音の伸びに有利です。


Rush – Limelight
いったい何拍子なのかわからない、ベースがやたら動く、ボーカルの声が高い、これぞラッシュです。ゲディ氏はいろいろなベースを使ってきましたが、このジャズベースの音はその中でもとてもオーガニックな印象です。