先述の比較でも登場した、現代の「スタンダード(Standard、標準)」となるジャズベースです。60年代の雰囲気を帯びたベーシックな作りは「これぞジャズベース」と納得させるものであり、かつ現代的な演奏性が付加されています。
ボディカラーと指板の組み合わせで異なる価格が設定されていますが、これは塗料や指板材の原価の差を、価格に公平に反映させた結果だと思われます。普及価格帯モデルなればこそ、シビアな値付けになっているわけです。仕様それぞれの価格は以下のようになります。
ボディカラー | 塗装の内容 | 指板 | 価格 |
ブラック | 1色の塗りつぶしなので、手間が他よりかからない。 | メイプル(パーフェロー指板なし) | ¥85,500 |
ブラウン・サンバースト | シースルーブラウンの外側に黒を拭きつける二度塗り。 | メイプル | ¥90,000 |
ブラウン・サンバースト | 同上↑ | パーフェロー | ¥92,500 |
キャンディアップル・レッド | ラメが入るぶん、塗料が高い。 | パーフェロー(メイプルなし) | ¥97,750 |
表:スタンダード・ジャズベースの仕様と価格(価格は2018/10時点)
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ヴィンテージ・スタイルのジャズベースは、60年代の雰囲気を演出する3モデルがリリースされています。いかに60年代ジャズベースが高人気で、かつ定番視されているかが分かりますね。
’60S JAZZ BASS
CLASSIC series ’60S JAZZ BASS LACQUER
ROAD WORN ’60S JAZZ BASS
以上の3本は、
といったところに共通点があります。
木材構成は共通で、ネック仕様はヴィンテージ・スタイル、ピックアップは3モデル共通です。このうち最大の相違点は、塗装の仕様と付属のケースです。
’60S Jazz Bass | ’60S ラッカー | Road Worn ’60S | |
ボディ/ネック塗装 | ポリエステル/グロスウレタン | ボディ/ネックともに、ニトロセルロースラッカーを使用 | ボディはラッカー、ネックはウレタン。共にエイジド加工 |
ボディカラー | 3カラーサンバースト | ホワイト | 3カラーサンバースト、フェスタレッド |
付属ケース | デラックス・ギグバッグ | ツイードケース | デラックス・ギグバッグ |
表:クラシック・シリーズの相違点
「Road Worn」は塗装面のダメージやパーツの変色/サビまで再現した「Wornフィニッシュ」による貫禄のある外観に大きな特徴があります。「ツイードケース」はツイード(毛織物)で覆われたハードケースです。
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3バンドイコライザーを装備した現代的なジャズベース「デラックス・アクティブ・ジャズベース」は、
という現代的なスタイルでまとめており、5弦モデルもリリースされています。1970年代のイメージがあるためか、トラスロッドはヘッド側に開口しています。
「Dual-Coil Ceramic Noiseless™ Jazz Bass with Nickel-Plated Pole Pieces」
というなかなか長い名前の付けられたピックアップは、
という設計で、ノイズに強く、キメの細かいサウンドが得られます。
Deluxe Active Jazz Bass(Surf Pearl)
操作系は4弦、5弦ともに
となっており、積極的な音づくりができます。プリアンプを切ってパッシブとして使用する時には、ボリュームとパンポットのみの操作になります。
ブリッジには肉厚で頑強な「HiMASS(ハイマス)」ブリッジが採用されています。がっちりとして重量もあるので、弦の振動をしっかり受け止めるとともに、サスティンが伸びます。「American Professional」や「American Elite」に搭載されているブリッジに近いものですが、こちらは「裏通し」セッティングができず、弦は従来の方式(トップロード)で張ることになります。
デラックス・シリーズはフェンダーの伝統にならい、ボディカラーによってボディ材や指板材が決まります。やはりサンバーストならアルダー、ナチュラルならアッシュなんですが、ボディカラーと楽器本体の組み合わせには、なかなか興味をそそられます。
5弦モデル「デラックス・アクティブ・ジャズベースV」は
この一本勝負なんですが、4弦モデルの場合、
ボディカラー | ボディ材 | 指板材 | インレイ |
3カラーサンバースト | アルダー | メイプル | ブラックパーロイド・ドット |
オリンピック・ホワイト/サーフ・パール | アルダー | パーフェロー | パーロイド・ドット |
ナチュラル | アッシュ | メイプル(黒いバインディング) | 黒いブロックインレイ |
表:デラックス・アクティブ・ジャズベースのボディカラーと仕様の関係
というようにナチュラル/アッシュのモデルだけがバインディングありのブロックインレイ、という1970年代のスタイルをふまえた仕様になっています。
Deluxe Active Jazz Bass(Natural)
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2018年に発表された「プレイヤー・シリーズ」は、特にベースを始めたばかりの人に向け、早い段階から本物のフェンダー・サウンドに触れられるように価格を圧縮させたラインナップです。価格を抑えたフレットレスと5弦もあるので、始めたばかりの人だけでなく、楽器のバリエーションとして手軽なフレットレスや5弦を手に入れたいという中級者にもお勧めです。
という点がシリーズ共通の仕様で、価格は「スクワイアの高級機のもうちょい上」あたりまで頑張って下げています。では、このプレイヤー・シリーズは、スタンダード・ジャズベースとどう違うのか、というところに注目してみましょう。
PLAYER JAZZ BASS | STANDARD JAZZ BASS | |
価格帯 | ¥64,800~¥ 69,300 | ¥90,000~¥ 92,500 |
カラーバリエーション | 全7色 | 全3色 |
ピックアップ | このシリーズ向けに新開発。アルニコV使用・ | 「アップグレードがなされた」とフェンダーサイトにて紹介 |
ブリッジ | 標準的かつ現代的なブリッジ | 70年代を意識したヴィンテージ・スタイル |
ネック塗装 | ネック裏はサテン(さらさら)、ヘッド面はグロス(ツヤツヤ) | いったん染めてからウレタンを噴いた、サラサラ仕上げ。 |
指板インレイ | ホワイト・ドット | パーロイド・ドット |
表:Player / Standard ジャズベースの相違点(価格は2018/10時点)
プレイヤー・シリーズの方が、カラーバリエーションは豊富になっています。もっとも大きな違いはピックアップで、プレイヤー・シリーズでは新開発、スタンダード・ジャズベースではグレードアップを果たしています。ブリッジについては、仕様を見る限り「モダン」と「クラシック」というように呼び方を変えていますが、一見して分かるほどの違いがあるわけではありません。
仕様書には現れませんが、やはり木材のグレードに違いはあるようです。スタンダード・ジャズベースのネック材は木目の綺麗なメイプルが、またボディには継ぎ目の無い一枚板が使われていますが、プレイヤー・シリーズで使用される木材はさすがにここまでのものではないようです。ただしだからといって音に影響があるわけではなく、「いかにシビアな耳をもってしても、人間には聞き分けることができない」と言われています。
いっぽう共通点はかなり多くて、
価格が2万円以上高いスタンダード・ジャズベースと比べても遜色ないベースだと言えるでしょう。
Fender Player Series Jazz Bass Fretless – Demo and Features
「ウマい人ならたいがい持っている」というフレットレス。比較的手軽な価格で、本物のフェンダーが手に入れられます。
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シグネイチャーモデルについては、さすがにフェンダーだけあって超大物ミュージシャンのものがリリースされています。
2016年の欧州ツアーでベラルーシに入国した際、メタリカと間違われてサインを求められ、ひとまずメタリカのグッズに自分たちのサインを入れた、という珍事もあったレッチリ(Red Hot Chilli Peppers)の活動を長らく支えているフリー(Flea)氏。近年愛用している1961年製ジャズベースは、何とも太っ腹なファンの方からプレゼントされたのだそうです。
これを再現した「FLEA JAZZ BASS」は、
という「この年代だからこその特徴」をきちんと再現し、
という仕様でまとめています。
「ピュア・ヴィンテージ」は当時の材料と製法をそのまま再現した、フェンダー純正のパーツのシリーズです。このシリーズからは、ピックアップだけでなくトーンコンデンサ、ブリッジ、コントロールノブ、ピックガードなど、さまざまな部品がリリースされています。
搭載されている’64ピックアップは、明瞭な低域、押しのある中域、歌うような高域を持ち、この時代のトーンをしっかり再現しています。出力はそれほどでもないので右手のタッチが活きる、ウマい人もしくはウマくなりたい人向けのベースだと言えるでしょう。
Flea Introduces the Fender Signature Flea Bass | Artist Signature Series | Fender
かのフリー氏が恋に落ちてしまったという’61。「この楽器はあまりにも長くベースでいたため、ずいぶん前に木であることを辞めてしまったんだと思う」というコメントは、なんだかわかんないけど哲学的ですね。
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カナダ発の3ピースロックバンド「ラッシュ(Rush)」は、卓越した演奏技術とサウンドによって「最少編成のロック・オーケストラ」の異名を持っています。このバンドのベース&ボーカル、ゲディ・リー(Geddy Lee)氏のシグネイチャーモデルはフェンダーUSAからもリリースされています。USA版ではブラックのみですが、MEX版のこちらでは3カラーサンバーストも選択できます。
といった仕様です。先述した「FLEA JAZZ BASS」がバキバキのヴィンテージ・スタイルだったのに対し、こちらはピックアップこそヴィンテージ寄りながらブリッジとネックに現代的な要素が盛り込まれた、ジャンルを選ばず使用できる使いやすいジャズベースに仕上がっています。
薄いネックは手のサイズに自信がない人にも弾きやすく、また大きめのフレットは弦高を押さえる力を軽減できるため、ラッシュのファンでなくてもあらゆるベーシストにお勧めです。
「アメリカン・ヴィンテージ」はヴィンテージを精緻に再現したギター/ベースのシリーズでしたが、現在ではパーツのシリーズ名として残っています。ブリッジはアメリカン・プロフェッショナルやアメリカン・エリートで採用されている「HiMass」ブリッジに、ゲディ・リー氏の意向を反映させたカスタムモデルです。通常版より金属量が多くてゴツく、強弱表現や音の伸びに有利です。
Rush – Limelight
いったい何拍子なのかわからない、ベースがやたら動く、ボーカルの声が高い、これぞラッシュです。ゲディ氏はいろいろなベースを使ってきましたが、このジャズベースの音はその中でもとてもオーガニックな印象です。