ジャズベとプレベ、どっちを選ぶ?

皆さんはベースの代表的なメーカーというとどこを思い浮かべますが?おそらくほとんどの方がフェンダーではないでしょうか?ではそのフェンダーの代表的なベースは?これもジャズベース(略してジャズベ)またはプレシジョンベース(略してプレベ)という方がほとんどでしょう。このベースの大定番モデル2つについて、違いやそれぞれの代表的なプレイヤーについて書いてみたいと思います。

ジャズベって?

フェンダージャズベース Fender American Standard Jazz Bass®

1960年にプレベの上位機種という名目で発売され、現在に至るまで基本的なデザインは変更されていません。このタイプのベースを弾いたことのないベーシストはいない、といっても過言ではないの大定番モデルです。ちなみにジャズベースといってもジャズ専用というわけではなく、幅広い音色がでるのでオールジャンルOKです。ちなみに名前の由来については「プレベがジャズのプレイヤーには売れ行きがよくなかったので、ジャズという名前をつけてジャズのプレイヤーの購買を促した。」、「ジャズマスターというギターのボディシェイプを真似た」など諸説あるようです。

フェンダー・ジャズベースの選び方

プレベって?

フェンダープレシジョンベース Fender American Standard Precision Bass®

1951年に生まれた、世界で始めてのエレキベースです。フレットのないウッドベースに対し、フレットを打つことにより正確な音程での演奏が容易になったことからプレシジョン(正確な)ベースと名づけられました。初期のモデルは現在のプレベと少し異なったデザインとなっており、1957年ごろに現在とほぼ同じデザインとなりました。

フェンダー・プレシジョンベースの選び方

ジャズベとプレベの違い

ピックアップとコントロール

ジャズベとプレベのコントロール比較 左:ジャズベース、右:プレシジョンベース

外見からもわかる一番大きな違いはピックアップの形状でしょう。

ジャズべ:シングルコイル・ピックアップ2基

ジャズベにはシングルコイルといわれるタイプのピックアップが2つ付いており、これらが並列で繋がれています。ネック寄りについているピックアップをフロントピックアップ、もう一方をリアピックアップといいます。
コントロールには、フロントとリアそれぞれのピックアップに対応した2つのボリュームと、全体の音色を調整するトーンの計3つのツマミが付いています。つまり2つのピックアップはそれぞれ独立してボリューム調整ができ、このバランスによっても音色調整が可能です。ちなみにフロントピックアップは太く甘めの音色、リアピックアップは硬くはっきりとした音色が特徴です。まずはどちらもフル(時計回りに回るところまで)にして、そこから調整していくと音が作りやすいのではないでしょうか。トーンのツマミもフルの状態が基本となり、そこから絞っていくと徐々に高音が減衰していきます。

プレべ:スプリットコイル・ピックアップ1基

一方プレベにはジャズベのそれより小さいピックアップが2つ付いており、これが直列で繋がれています。この2つのピックアップは2つで1つとして扱われ、スプリットコイルと呼ばれます。つまりプレベのピックアップは1つと捉えていいと思います。
コントロールはボリュームが1つ、トーンが1つの計2つのツマミです。つまり音色を変化させる術はトーンのみで、音色の多彩さという意味ではジャズベに軍配が上がります。が、独特の太い音色はワンアンドオンリーの魅力があります。トーンツマミの使い方はジャズベに準じます。

fender-american-elite-precision-bass PJタイプ:Fender American Elite Precision Bass®

ちなみに、ジャズベースのフロントピックアップの位置に、プレベのスプリットコイルピックアップの付いた、PJタイプと呼ばれるピックアップ配置のベースもあります。

ネックとボディシェイプ

ジャズベとプレベのボディ比較 左:ジャズベース、右:プレシジョンベース

プレベのネックはジャズベのそれに比べて若干太くなっており、前述のピックアップ以外に、このこともプレベの独特の太い音色に寄与しています。ただ、弾きやすさはやはり細いネックに分があるようで、ジャズベのネックが付いたプレベも存在します。
また、写真を見ていただいてもわかるようにボディの形状も異なります。プレベは左右対称に近いボディシェイプになっていますね。

サウンド

最後にもっとも重要な音の違いについてです。
まずジャズベは低音と高音に特徴があります。プレベとの比較でいうと特に高音域のキラキラした感じが目立ちますよね。サスティーン(音の伸び)も長いので高音域でメロディーを弾くのにも向いています。そして音程というより音圧として感じるような低音の部分は、ジャズベのほうが出るのではないでしょうか。この特徴的な高音と低音はアクティブ回路を搭載するとさらに強調され、スラップ等に向いた、いわゆるドンシャリサウンドになります。そしてジャズベのサウンドの一番の特徴は、なんと言っても音色の幅の広さでしょう。2つのピックアップのボリュームとトーンのバランスで様々な音色の出力が可能です。
アクティブとパッシブってどう違うの?


David T. Walker – Lovin’ You (Live) [Official Video]
ミュート気味に弾いていますが、それでも弦とフレットの軋む音が聴こえてくるブライトなジャズベースサウンド(おそらくアクティブ)です。ベーシストはバイロン・ミラーです。

一方プレベの特徴はなんといってもアタック感のある中低音でしょう。「ボン」と強めのアタックがでて、その後はすぐに減衰していきます。キラキラした感じの高音成分も少なく、無骨で泥臭いといった感じの音色ですね。ちなみによく「プレベはスラップには向かない」といわれますが、そんなことはないと思います。前述したアクティブのジャズベでのスラップのようなサウンドは出ませんが、独特のイナタいスラップサウンドはとても魅了的です。そしてプレベの音色は「ブリ」「モコ」「ボン」など擬音で表現されることが多い気がします。それだけ特徴的な音ということでしょう。


Eric Clapton – I Shot The Sheriff (Live from Crossroads 2010)
ベースはウィリー・ウィークス。歪んだギターとプレベはやはり好相性ですね。特にギタートリオ(ギター、ベース、ドラムの編成)ではプレベの出番が多い印象です。ギターソロの時などに足りなくなる中低音域をプレベの音色で補いやすいからでしょう。

ジャズベ/プレベの有名なプレイヤー

ジャズベ

ジャコ・パストリアス(1951~1987)

ソロ楽器としてのエレキベースの地位を一気に押し上げた天才ベーシストです。60年代のフェンダー・ジャズベースを自らの手でフレットレスに改造し愛用していました。この楽器は「bass of doom」と名づけられ、現在はメタリカのロバート・トゥルージロが所持しているようです。
ジャコ・パストリアス

マーカス・ミラー(1959~)

プレイヤー、プロデューサーetcすべてにおいて一流のマルチプレイヤーです。ロジャー・サドウスキーによってアクティブ化された77年製のフェンダー・ジャズベースを愛用しています。彼のサウンドはアクティブのジャズベースサウンドの世界基準となっています。
マーカス・ミラー

ジョン・ポール・ジョーンズ(1946~)

レッド・ツェッペリンのベーシストです。ツェッペリン以外にも多数のセッション活動も行っています。61年製のフェンダー・ジャズベースを愛用しています。
ジョン・ポール・ジョーンズ

プレベ

ジェームス・ジェマーソン(1936~1983)

ファンクブラザーズと呼ばれる、モータウンレーベルのお抱えミュージシャン集団のベーシストとして活躍しました。ワンフィンガー奏法と、シンコペーションを多用したリズム、ジャズベースのラインのような半音を多用した音使いが特徴的です。自ら「funk machine」と名づけた62年製のプレベを愛用していました。
ジェームス・ジェマーソン

ウィリー・ウィークス(Willie Weeks 1947~)

ブラックミュージックのバイブルとなっているダニー・ハサウェイ(Donny hathaway)の名盤ライブアルバム「LIVE」の演奏が特に知られてるベーシストです。この中でも「what’s going on(マービン・ゲイのカバーで、オリジナルのベースは前述のジェームス・ジェマーソン)」と「voices inside(everything is everything)」の2曲は特に有名ですね。他にもエリック・クラプトンのワールドツアーへの参加、Doobie brothersでの活動で知られています。

ピノ・パラディーノ(Pino Palladino 1957~)

Simon&Garfunkel、The Who、ジョン・メイヤー(John mayer)、ディアンジェロ(D’angelo)など、ジャンルの壁を飛び越えて様々なアーティストから信頼されているベーシスト/スタジオミュージシャンです。かつてはフレットレスのスティングレイがトレードマークでしたが、近年ではシグネイチャーモデルである赤いプレシジョンベースがトレードマークになっています。

スティング(1951~)

ポリスのボーカリスト兼ベーシスト。という説明はもはや不要な世界的なスーパーアーティストですね。自ら作る様々なジャンルのテイストの入った楽曲に、間を生かしたスタジオミュージシャンも真っ青のハイセンスなベースライン、しかも歌いながらです。テレキャスター・ベースと呼ばれる55年製の初期モデルのプレベを愛用しています。
スティング

スティーブ・ハリス(1956~)

アイアンメイデンのベーシスト。指を伸ばしたまま弦に叩きつけるようにような、独特なフォームの2フィンガー奏法をします。この奏法によりアタック感の強いパーカッシブなサウンドを得ています。


いかがでしょう?ジャズベとプレベの違いについて理解していただけたでしょうか?
優等生的なジャズベと個性派のプレベ、どちらも魅力的なベースです。
よかったら、みなさんの楽器選びに少しでも参考にしてみてくださいね。

ベースの売れ筋を…